2022年10月12日

英国雇用関連統計(22年9月)-求人数が減少するなか、失業率がさらに低下

経済研究部 主任研究員 高山 武士

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1.結果の概要:就業者は減少したものの、失業率は3.5%まで低下

10月11日、英国国家統計局(ONS)は雇用関連統計を公表し、結果は以下の通りとなった。

【9月】

失業保険申請件数1前月(152.90万件)から2.55万件増の155.45万件となった(図表1)。
申請件数の雇用者数に対する割合は3.9%となり、前月(同3.9%)から横ばいだった
給与所得者数2前月(2967.0万人)から6.9万人増の2973.9万人となった。
増減数は前月(+3.1万人)から増加し、市場予想3(+3.5万人)も上回った。

【8月(22年6-8月の3か月平均)】
失業率は3.5%で前月(3.6%)から低下、市場予想(3.6%)も下回った(図表1)。
就業者は3275.4万人で3か月前の3286.3万人から10.9万人の減少となった。
増減数は前月(+3.9万人)からマイナスに転じたが、市場予想(▲16.0万人)は上回った。
週平均賃金は、前年同期比6.0%で前月(5.5%)から加速、市場予想(5.9%)も上回った(図表2)。

(図表1)英国の失業保険申請件数、失業率/(図表2)賃金・労働時間の推移
 
1 求職者手当(JSA:Jobseekerʼs Allowance)、国民保険給付(National Insurance credits)を受けている者に加えて、主に失業理由でユニバーサルクレジット(UC)を受給している者の推計数の合算。なお、UCはJSAより幅広い求職手当てであり、失業者数を示す統計としては過大評価している可能性がある。このため、ONSは失業保険等申請件数について公式統計とはしておらず実験統計という位置付けで公表している。ただし、公表日の前月のデータを入手できるため、速報性の高さという利点がある。
2 歳入関税庁(HRMC)の源泉徴収情報を利用した統計。直近データは約85%のデータから推計(22年7月から推計方法変更)。
3 bloomberg集計の中央値。以下の予想値も同様。

2.結果の詳細:求人数の減少傾向が続き、労働参加率はコロナ禍後の最低値を更新

まず、9月のデータとして公表されている求人数および給与所得者数を確認すると、求人数は22年6-8月の平均で124.6万件となり3-5月平均(130.0万件)をピークにした減少傾向が続いている(図表4)。単月の求人数も9月は122.6万件と4月(135.9万件)をピークに5か月連続で減少している3

給与所得者データでは、産業別に見ると9月は製造業、卸・小売業、建設業などが前月比でマイナスとなり、製造業や卸・小売業はコロナ禍前水準と比較しても雇用者数が少ない状況が続いている。一方、9月は事務・支援サービスや医療サービス、居住・飲食サービスの雇用者が大きく増加し、全体でも増加基調が続いている(図表4)。月あたり給与額(中央値)は前年同月比6.3%となり、8月(6.7%)から伸び率がやや低下した。
(図表3)求人数の変化(要因分解)/(図表4)給与取得者データの推移
8月までのデータ(労働力調査)を確認すると、22年6-8月期の失業率は3.5%に低下した。前月比では就業者が増加、失業者が減少する一方で、非労働力人口は増加している。非労働力人口の増加は3期連続で、労働参加率はコロナ禍後最低値の62.9%(5-7月期は63.0%)まで低下した(図表5)。6-8月期の非労働力人口は主に、16-24才と50-64才の年齢層がけん引し、労働市場に参入しない理由としては、コロナ禍前と比較して学生であることや長期の病気を挙げる人が多い。
(図表5)労働参加率の変化(要因分解)/(図表6)英国の名目賃金水準(週あたり賃金)
労働時間については、31.9時間(前年同期差+0.4時間)、フルタイム労働者で36.5時間(同+0.5時間)となり、横ばい推移が続いている(前掲図表2)。週間総労働時間は6-8月期ではコロナ禍前ピーク(19年8-10月)から0.9%低い水準であり、回復が遅いもののコロナ禍後のピークを更新している。賃金は、名目賃金が22年6-8月の前年同期比で6.0%となり再び加速し、実質賃金は▲2.4%と依然としてマイナスだがマイナス幅は縮小している(前掲図表2)。うちボーナスを除く定期賃金の伸び率は名目で5.4%(5-7月期5.2%)と加速しており、ボーナスも増加した(図表6)。
 
3 3か月平均のデータは季節調整値だが、単月データは未季節調整値のため季節性が除去されていない点には留意が必要。
 
 

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経済研究部   主任研究員

高山 武士 (たかやま たけし)

研究・専門分野
欧州経済、世界経済

経歴
  • 【職歴】
     2002年 東京工業大学入学(理学部)
     2006年 日本生命保険相互会社入社(資金証券部)
     2009年 日本経済研究センターへ派遣
     2010年 米国カンファレンスボードへ派遣
     2011年 ニッセイ基礎研究所(アジア・新興国経済担当)
     2014年 同、米国経済担当
     2014年 日本生命保険相互会社(証券管理部)
     2020年 ニッセイ基礎研究所
     2023年より現職

    【加入団体等】
     ・日本証券アナリスト協会 検定会員

(2022年10月12日「経済・金融フラッシュ」)

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