2022年08月15日

英国GDP(2022年4-6月期)-前期比でマイナス成長に転じる

経済研究部 主任研究員 高山 武士

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1.結果の概要:前期比でマイナス成長に

8月12日、英国国家統計局(ONS)はGDPの一次速報値(first quarterly estimate)および月次GDPを公表し、結果は以下の通りとなった。
 

【2022年4-6月期実質GDP、季節調整値)】
前期比は▲0.1%、予想1(▲0.2%)より上振れたが、前期(0.8%)からマイナス成長に転じた(図表1)
前年同期比は2.9%、予想(2.8%)より上振れたが、前期(8.7%)から減速した

【月次実質GDP(4-6月)】
前月比は4月▲0.2%、5月0.4%、6月▲0.6%となり、6月のマイナス幅が大きかった

(図表1)英国の実質GDP成長率(需要項目別寄与度)/(図表2)欧米主要国のGDP水準(コロナ禍前との比較)
 
1 bloomberg集計の中央値。以下の予想も同様。

2.結果の詳細:実質消費がコロナ禍水準を回復しない状況でマイナス成長に

英国の22年4-6月期の実質成長率は前期比▲0.1%(年率換算▲0.3%)となり、21年1-3月期以来となるマイナス成長を記録した。ただし、実質GDPの水準はコロナ禍前(19年10-12月)と比べて0.6%と、依然としてコロナ禍前の水準を上回っている。ユーロ圏主要国と比較すると、イタリアやフランスより回復は遅れているが、コロナ禍前水準に届いていないドイツ、スペインよりは回復が進んでいるという位置にある(図表2)。
(図表3)英国の月次GDPの推移 月次GDPでコロナ禍後の動きを追うと(図表3)、21年後半から一進一帯の動きが続いている(前月比では21年12月▲0.2%→22年1月0.6%→2月▲0.0%→3月0.1%→4月▲0.2%→5月0.4%→6月▲0.6%)。ただし、コロナ対応としての検査体制を段階的に縮小していることが成長率を押し下げており、この影響を除くと22年6月は21年12月以来の前月比マイナスとなる(検査除きの成長率は21年12月▲0.9%→22年1月0.8%→2月0.7%→3月0.5%→4月0.4%→5月0.6%→6月▲0.5%)2
部門ごとの月次GDPの水準を見ると、コロナ禍前(19年12月)と比較して、6月時点で農林水産部門が▲6.2%、生産部門(鉱工業)が▲0.8%、建設部門が2.0%、サービス部門が0.8%であり、農林水産部門と生産部門の回復が遅い。特にONSは生産部門において原材料価格の上昇が生産に影響を及ぼしている可能性を指摘している。

なお、より細かい産業別にコロナ禍からの回復状況を確認すると、大きく影響を受けていた業種(住居・飲食、芸術・娯楽業)などがコロナ禍前の水準まで回復していることが分かる(図表4)。
(図表4)業種別のGDP前期比伸び率とコロナ禍前水準
(図表5)英国のGDPとデフレータ伸び率 次に成長率を需要項目別に確認すると、4-6月期は個人消費が前期比▲0.1%(4-6月期0.5%)、政府消費が同▲2.9%(▲1.3%)、投資が同0.6%(3.8%)、輸出が同2.4%(▲4.4%)、輸入が同▲1.5%(10.4%)となった。純輸出の前期比寄与度は1.08%ポイント(▲4.20%ポイント)だった。コロナ禍前比では、個人消費が▲0.7%、政府消費が4.0%、投資が2.4%、輸出が▲17.5%、輸入が1.9%となり、個人消費は高インフレを受け、コロナ禍前の水準を回復しない状況で前期比伸び率がマイナスとなっている。

4-6月期の名目GDPは前期比1.1%(4-6月期は3.2%)、前年同期比9.1%(11.8%)、デフレータは前期比1.1%(3.2%)、前年同期比6.0%(2.8%)となり、前年同期比で見たデフレータの伸びが目立つ(図表5)。
 
2 ただし、プラチナ・ジュビリー(エリザベス女王の在位70周年)の記念式典と銀行休日の変更で5月の営業日が1日多く、6月の営業日が2日短くなっている(そして季節調整ではこの銀行休日が考慮されていない)点についてONSは注意喚起している。
 
 

(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
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経済研究部   主任研究員

高山 武士 (たかやま たけし)

研究・専門分野
欧州経済、世界経済

経歴
  • 【職歴】
     2002年 東京工業大学入学(理学部)
     2006年 日本生命保険相互会社入社(資金証券部)
     2009年 日本経済研究センターへ派遣
     2010年 米国カンファレンスボードへ派遣
     2011年 ニッセイ基礎研究所(アジア・新興国経済担当)
     2014年 同、米国経済担当
     2014年 日本生命保険相互会社(証券管理部)
     2020年 ニッセイ基礎研究所
     2023年より現職

    【加入団体等】
     ・日本証券アナリスト協会 検定会員

(2022年08月15日「経済・金融フラッシュ」)

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