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- 英国金融政策(8月MPC)-利上げ幅を0.50%に拡大、1.75%へ
1.結果の概要:6会合連続での利上げを決定
【金融政策決定内容】
・政策金利を1.75%に引き上げ(0.50%の利上げ、8対1で1人は1.50%への引き上げを支持)
【議事要旨等(趣旨)】
・GDP成長率見通しは、22年3.5%、23年▲1.5%、24年▲0.25%(下方修正)
・CPI上昇率は22年13%、23年5.5%、24年1.5%(7-9月期前年比、22-23年を上方修正)
・金融政策への含意を評価するにあたっては、複数シナリオのうちの1つだけを重視しない
・英国債売却は適切であると9月会合で確認されることを前提に、9月会合直後に開始する
・英国債売却期間中に売却と独立して政策金利を決定し、短期市場金利を制御するために、新規に短期レポ(STR:Short Term Repo)を立ち上げる
2.金融政策の評価:今回は0.50%ポイントの利上げ幅に拡大
今回の利上げ幅の拡大は、前回の声明文で「さらなる引き上げの幅、スピード、時期は委員会の経済見通しとインフレ圧力の評価を反映する」とされ、経済環境・データ次第であることを強調されていたことから、足もとのインフレ圧力の増加を受けた引き締め姿勢の強化と理解することができる(なお、今回の声明文では「さらなる引き上げの幅、スピード、時期」が、「さらなる変更の幅、スピード、時期」に微調整されている)。
今回の会合では同時に金融政策報告書(MPR)が公表され、経済見通しも示された。ベースラインの見通しではCPI上昇率が上方修正され、ピークが約13%(22年10-12月期)に引き上げられるとともに、成長率は23年および24年にマイナスになると想定されている。声明文でも「現時点で今年の10-12月期から景気後退(recession)に突入すると予想される」と景気後退入りの予想が明記された。合わせて、MPCはこれまでの声明文において金融政策によって「生産量の望ましくない変動を最小限に抑える」と明記していたが、この記載が削除され、今回は「やむを得ない生産量の変動を生じさせるだろう」と変更された。インフレ圧力の増加が続くなかで、成長をある程度犠牲にしても、物価の安定を重視する姿勢を明確化したものと見られる。
英国では市場の想定する中立金利(約2%)近くまで政策金利が引き上げられたことになるが、インフレ率の高止まりが続き、景気後退入りも見込まれるなかで、今後も中銀の積極利上げの姿勢が続くのかが注目される。
3.金融政策の方針
- MPCは、金融政策を2%のインフレ目標として設定し、経済成長と雇用を支援する
- 委員会は政策金利(バンクレート)を1.75%に引き上げる(8対1で決定1、0.50%ポイントの引き上げ)、1名は0.25%ポイント引き上げ、1.50%にすることを主張した
- 英国や他の欧州でのインフレ圧力は5月のMPR(金融政策報告書)や前回MPC以降、急激に強まっている
- これには5月以降、ロシアの欧州へのガス供給の制限や今後のさらなる制限リスクのために、ほぼ倍増したガスの卸売価格が大きく反映されている
- これは、エネルギーの小売価格に転嫁され、英国の家計の実質所得の落ち込みを助長し、短期的にはさらにCPIインフレ率を上昇させるだろう
- CPIインフレ率は5月の報告書の見通しからさらに上昇すると見込まれ、6月の9.4%から22年10-12月期には13%を超えると見られ、その後、23年の大部分は高止まりし、2年後に2%に向かって低下すると考えられる
- 英国のGDP成長率は減速している
- 直近のガス価格上昇により、英国や他の欧州の経済活動見通しは著しく悪化している
- 英国は、現時点で今年の10-12月期から景気後退(recession)に突入すると予想される
- 家計の実質の税引後所得は22年および23年に急速に落ち込み、消費伸び率はマイナスに転じると見られる
- 家計のインフレ圧力は予測機関前半にわたって、強い状況が続くと予想される
- 企業は、費用の急上昇を受けて、概して販売価格を大幅に上昇させると見込まれている
- 労働市場は引き続きひっ迫しており、失業率は2-5月で3.8%、求人数は歴史的に高い水準にある
- その結果、最新のエージェント調査とも整合的なように、基調的な名目賃金上昇率は5月の報告書よりも、予測期間前半は高くなると見られる
- それにもかかわらず、インフレ圧力は時間が経過することで解消されると見られる
- 世界的な商品価格のさらなる上昇は想定されておらず、貿易財の物価上昇ももとに戻るとみられ、これらの初期の兆しがすでに見られている可能性がある
- 労働市場は需要の低下につれ、ゆっくりと緩和され、23年から失業率が上昇すると見られる
- そのため、予測機関後半には、経済の弛み(slack)が増加し、ヘッドラインインフレ率の低下により賃金上昇圧力が軽減するため、国内のインフレ圧力は鎮静化すると見られる
- 金融政策もまた長期的なインフレ期待が2%目標で固定されるように機能している
- 現在、MPC見通しを取り巻くリスクは、外部および内部要因で非常に大きい
- 8月MPRのベースライン見通しに関するCPIインフレ率や中期経済活動には、上方、下方のいずれでももっともらしい経路が幅広くある
- その結果、見通しの金融政策への含意を評価するにあたっては、単一の過程や見通しに基づく含意を重視していない
- 8月の報告書はGDP、失業率、インフレ率のいくつかの見通しが含まれている
- ベースラインは、MPCの現在の慣行通りに卸売ガス価格が、6か月後は横ばいになると仮定している
- 代替シナリオとしてエネルギー価格が先物曲線に基づき、予測期間にわたって低下していく過程
- また、国内の価格設定力がベースラインよりも持続する場合も検討している
- これらにはすべて政府が公表した財政措置(5月に公表されたCost of Living Support packageを含む)を前提としている
- これらの見通しは予測期間後半に大きな違いが生じる
- しかしながら、すべてで短期的な高いインフレ率、来年のGDPの下落とその後のインフレ率の低下を示している
- MPCの責務が、英国の金融政策枠組みにおける物価安定の優位(primacy)を反映して、常にインフレ目標の達成であることは明らかである
- この枠組みでは、ショックや混乱の結果、物価が目標から乖離する場合があることを認識する
- 経済はかなり大きなショックを繰り返し経験しており、やむを得ない生産量の変動を生じさせるだろう
- 金融政策により、これらのショックによる調整が発生してもCPIインフレ率が中期的に2%目標に安定して戻るようにする
- 労働市場はひっ迫が続いており、国内の費用と物価上昇圧力は増している
- 外部要因によるインフレ圧力が長期化すれば、より持続的な国内の価格や賃金上昇圧力が生じるリスクがある
- この観点から委員会は、今回の会合で政策金利を0.50%ポイント引き上げ、1.75%とすることを決定した
- MPCは、その責務にもとづき、インフレ率を中期的な2%目標に安定的に戻すために必要な行動を実施するつもりである
- 政策金利経路は事前に設定されてはない
- 委員会は、常に、各会合で政策金利の妥当な水準を検討し、決定する
- 政策金利のさらなる変更の幅(scale)、ペース(pace)、時期(timing)は委員会の経済見通しとインフレ圧力の評価を反映する
- 委員会は特に、インフレ圧力がさらに持続的になる兆候を警戒し、必要があれば、それに応じて強力な行動を実施する
- 22年5月の会合議事要旨において、委員会は中銀スタッフに資産購入策(APF:Asset Purchase Facility)で保有している英国債の売却戦略の取り組みを指示し、8月の会合で最新状況を提供すると約束していた
- この分析に基づいて、委員会は英国債売却について、9月の会合直後(shortly after)に開始することを、経済・市場環境が適切であるとその会合の投票で確認されることを前提に、暫定的に考えている
1 今回反対票を投じたのはテンレイロ委員。前回反対票を投じたのは、ハスケル委員、マン委員、ソーンダース委員で0.25%ポイントの引き上げが決定されるなかで、0.50%ポイントの引き上げを主張した。
(2022年08月05日「経済・金融フラッシュ」)
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03-3512-1818
- 【職歴】
2006年 日本生命保険相互会社入社(資金証券部)
2009年 日本経済研究センターへ派遣
2010年 米国カンファレンスボードへ派遣
2011年 ニッセイ基礎研究所(アジア・新興国経済担当)
2014年 同、米国経済担当
2014年 日本生命保険相互会社(証券管理部)
2020年 ニッセイ基礎研究所
2023年より現職
・SBIR(Small Business Innovation Research)制度に係る内閣府スタートアップ
アドバイザー(2024年4月~)
【加入団体等】
・日本証券アナリスト協会 検定会員
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