2022年10月11日

ロシアの物価状況(22年9月)-前月比で4か月ぶりのプラスに

経済研究部 主任研究員 高山 武士

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1.結果の概要:総合指数、コア指数ともに前月比プラスに

10月7日、ロシア連邦統計局は消費者物価指数を公表し、結果は以下の通りとなった。
 

【総合指数(22年9月)】
前年同月比は13.68%、市場予想1(13.59%)より上振れ、前月(14.30%)から低下(図表1)
前月比は0.05%、予想(0.00%)より上振れ、前月(▲0.52%)からプラスに転じた

【コア指数2(22年9月)】
前年同月比は17.11%、予想(17.10%)よりやや上振れ、前月(17.71%)から低下(図表2)
前月比は0.30%、予想(0.30%)と同じで、前月(0.00%)から加速した

(図表1)ロシアの消費者物価上昇率/(図表2)ロシアのインフレ率
 
1 bloomberg集計の中央値。以下の予想値も同様。
2 生鮮食品など季節的要因による影響を受ける品目や管理品目を除いた指数。

2.結果の詳細:前週比では2週連続のプラス

9月のロシアのインフレ率は前年比で13.68%となり8月の14.30%から低下した。

大分類別に見ると、食料品が前年比で4月のピーク(20.48%)から9月には14.20%まで低下、財(非食料品)が3月のピーク(20.34%)から9月には14.94%まで低下している。一方、サービスは3月以降の高止まりが続き、9月は11.01%となり4月のピーク(10.87%)を上回った。

コア指数は前年比で3月18.69%→4月20.37%→5月19.87%→6月19.18%→7月18.40%→8月17.71%→9月17.11と推移しており、4月をピークに減速傾向が続いているものの、減速のスピードはかなり緩やかなものにとどまっている。

前月比では、総合指数が0.05%と小幅にプラスになり5月(0.12%)以来のプラスの伸び率となった(6月▲0.35%、7月▲0.39%、8月▲0.52%)。コア指数は9月には0.30%(6月0.18%、7月▲0.18%、8月0.00%)となり、総合指数よりも高めの伸び率となっている(図表3)。
(図表3)ロシアのインフレ率(前月比)/(図表4)ロシアのインフレ率(前週比)
別途、ロシア連邦統計局が公表している週次のインフレ率(消費者物価上昇率)を見ると、前週比上昇では、5月下旬からゼロもしくはマイナスとなる時期が続いていたが、9月26日は前週比0.08%とプラスに転じた。直近10月3日も前週比0.07%と2週連続のプラスとなっており、前月比でも小幅にプラスであったことも含め物価の下落に歯止めがかかった可能性がある(図表4)。
(図表5)ロシアのインフレ率と家計のインフレ期待 また、ロシア中央銀行が公表する家計のインフレ期待(1年先中央値、実際のインフレ率よりも高めになる傾向がある)は9月には12.5%となった(8月は12.0%)。期待インフレ率は3月(18.3%)をピークに急速に低下したのち、足もとでは12%前後での推移となっている(図表5)。
品目別の上昇率では3(図表6)、9月は前年比で海外旅行サービス(67.65%)、グラニュー糖(38.31%)、洗剤(32.54%)、穀物・豆(26.97%)の上昇率が高い。

前月比では、青果物(▲4.11%)、グラニュー糖(▲3.97%)、旅客サービス(▲3.63%)、健康増進サービス(▲3.59%)の下落率が高い一方、保険サービス(10.03%)、教育サービス(4.46%)卵(3.00)の上昇率が高かった。
(図表6)ロシアの品目別インフレ率
各品目の消費ウエイトも考慮して、全体のインフレ率への寄与を品目別に見ると(図表7・8)、前年比上昇率への寄与が大きい品目は海外旅行サービス(0.7%ポイント)、乳製品(0.6%ポイント)、住居・公益サービス(0.5%ポイント)、家庭サービス(0.5%ポイント)、アルコール飲料(0.4%ポイント)となった。一方、青果物(▲0.2%ポイント)は前年比でもマイナス寄与となった。前月比上昇率の寄与は、保険サービス(約0.05%ポイント)、通信サービス(約0.05%ポイント)、教育サービス(約0.05%ポイント)が物価の押し上げた要因となる一方で、青果物(約▲0.19%ポイント)や旅客サービス(約▲0.07%ポイント)が下落要因となった。
(図表7)ロシアの品目別インフレ率(前年比寄与度、抜粋)
(図表8)ロシアの品目別インフレ率(前月比寄与度、抜粋)
 
3 大分類である食料品、財(非食料品)、サービスをそれぞれ細目別に分類したもの(中分類)のうち、統計局のウェブサイトで公表しているものを記載。
 
 

(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
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経済研究部   主任研究員

高山 武士 (たかやま たけし)

研究・専門分野
欧州経済、世界経済

経歴
  • 【職歴】
     2002年 東京工業大学入学(理学部)
     2006年 日本生命保険相互会社入社(資金証券部)
     2009年 日本経済研究センターへ派遣
     2010年 米国カンファレンスボードへ派遣
     2011年 ニッセイ基礎研究所(アジア・新興国経済担当)
     2014年 同、米国経済担当
     2014年 日本生命保険相互会社(証券管理部)
     2020年 ニッセイ基礎研究所
     2023年より現職

    【加入団体等】
     ・日本証券アナリスト協会 検定会員

(2022年10月11日「経済・金融フラッシュ」)

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