コラム
2022年09月12日

長生き応援「未来年表」と「Wish List」の薦め

生活研究部 上席研究員・ジェロントロジー推進室兼任 前田 展弘

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筆者が専攻するジェロントロジー(Gerontology)は、“年を重ねることをより前向きに捉えられる社会”にしていくことを目指している。しかしながら、世の中に飛び交う未来に関する情報はどこか「不安」ばかり煽られる内容が多いように思われる。そこで本稿では、少しでも“長生きに価値と希望”を持てることを応援する視点から、次の「未来年表」と「Wish List」を紹介したい。

■長生きすることは「未来」を歩むこと~ポジティブな「未来年表」

「人生100年時代」という言葉がすっかり世の中に浸透してきたなかで、いつまで自分は生きていけるのか、と人生の長さについて思いを巡らせる機会も増えたのではないだろうか。若い人にはあまり該当しないかもしれないが、少なくとも中年以上の年代にとっては、「〇〇年には〇〇のことが実現する」といったニュースを見るたびに、「自分には関係ない、いや何とか見えるかも」と思われなかっただろうか。

このことに関連して「長生きの価値とは何か」を考えたとき、一つの大きな価値は“未来を見れる”ということが挙げられるであろう。子供や孫の成長が見れる、社会の新しい変化を見れる、体験できるということも、長生きしなければ実現できない。実際、昭和から平成、令和にかけて、社会の様相は大きく変化した。これだけ携帯電話やネット社会が普及したことを昭和の当時、想像できたであろうか。良くも悪くもこうした変化を体験できることは“生きている”からこそのことである。そこで「長生きを応援したい」という趣旨から、次のような未来年表を作ってみた。未来に関する予測には様々なことがあるが、ここではよりポジティブな視点に立って筆者が「見たい、知りたい、気になる」という項目(予測)だけを挙げてみたものである(図表1)。

ご覧いただくように、昨年(2021年)の東京、今年(2022年)の北京で盛り上がった「オリンピック、パラリンピック」は今後も世界各地で開催されていく。新幹線も全国各地に拡張していく。リニア中央新幹線の開業も待たれるところである。また人工知能(AI)の発展による技術革新は、これからも大きく暮らしを変えていくことになるのであろう。モノや製品、ロボットと会話して共生する生活が“普通”の暮らしになっていくかもしれない。AI技術によって「言葉(外国語)の壁」も近い将来、取り除かれていくことも期待される。そうなれば、外国での旅行や生活、外国人とのコミュニケーションもよりスムーズになり、あらゆる視界がさらに拡がっていくようになるかもしれない。さらに、宇宙との距離も更に近づいて身近なこととして「宇宙旅行」を体験できる日も訪れるかもしれない。

こうした未来年表も眺めながら、将来(人生)を楽しみに前向きに歩んでいただきたいところである。
図表1:ポジティブな未来年表(2022~2050年)

■「Wish List」で人生100年を彩り豊かに!

長生きを前向きに応援する観点からもう一つ「Wish List」(願いごとリスト)を紹介する。自分がしたいこと“Wish”(願い、希望)を書き出すリスト(ノート)のことである。『最高の人生の見つけ方』(2007年アメリカ、2019年日本)という映画の中で、余命半年を迎えた患者が最期までにやりたいこと(Wish List)を書き出してそれを実現していく姿が描かれている。そのように長い人生をかけて、自分がしたいこと、家族としたいことなど、50でも100でも書き出しながら、一つずつ実現していくような人生はどうだろうか。きっと楽しくなるに違いない。後世に必要なことを伝えるための「エンディングノート」が世の中に浸透してきたように、この「Wish List」も多くの人が作成され、実行されていくことを期待したい。
「Wishリスト」の作成と実行!
 
* 本稿は、前田展弘「長生きすることは『未来』を歩むこと」(みずほ証券「悠々」vol.9、2022年3月)を加筆・一部改編したものである。
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生活研究部   上席研究員・ジェロントロジー推進室兼任

前田 展弘 (まえだ のぶひろ)

研究・専門分野
ジェロントロジー(高齢社会総合研究)、超高齢社会・市場、QOL(Quality of Life)、ライフデザイン

経歴
  • 2004年     :ニッセイ基礎研究所入社

    2006~2008年度 :東京大学ジェロントロジー寄付研究部門 協力研究員

    2009年度~   :東京大学高齢社会総合研究機構 客員研究員
    (2022年度~  :東京大学未来ビジョン研究センター・客員研究員)

    2021年度~   :慶応義塾大学ファイナンシャル・ジェロントロジー研究センター・訪問研究員

    内閣官房「一億総活躍社会(意見交換会)」招聘(2015年度)

    財務省財務総合政策研究所「高齢社会における選択と集中に関する研究会」委員(2013年度)、「企業の投資戦略に関する研究会」招聘(2016年度)

    東京都「東京のグランドデザイン検討委員会」招聘(2015年度)

    神奈川県「かながわ人生100歳時代ネットワーク/生涯現役マルチライフ推進プロジェクト」代表(2017年度~)

    生協総研「2050研究会(2050年未来社会構想)」委員(2013-14、16-18年度)

    全労済協会「2025年の生活保障と日本社会の構想研究会」委員(2014-15年度)

    一般社団法人未来社会共創センター 理事(全体事業統括担当、2020年度~)

    一般社団法人定年後研究所 理事(2018-19年度)

    【資格】 高齢社会エキスパート(総合)※特別認定者、MBA 他

(2022年09月12日「研究員の眼」)

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