- シンクタンクならニッセイ基礎研究所 >
- 経済 >
- 家計の貯蓄・消費・資産 >
- 世帯属性別にみた物価高の負担と過剰貯蓄
2022年09月07日
文字サイズ
- 小
- 中
- 大
家計が直面する物価上昇率は3%
消費者物価(生鮮食品を除く総合、以下コアCPI)は2022年4月以降、前年比で2%台前半となっているが、家計が実際に直面している「持家の帰属家賃を除く総合」は約3%とそれよりも高い。コアCPIに含まれない生鮮食品が高い伸びとなっていること、コアCPIに含まれるが、実際に支払うことのない持家の帰属家賃の伸びがゼロ%程度と低いことが、両者の差につながっている。
現時点では、2022年度のコアCPIは前年比2.4%、持家の帰属家賃を除く総合は同3.0%と予想している。
現時点では、2022年度のコアCPIは前年比2.4%、持家の帰属家賃を除く総合は同3.0%と予想している。
世帯属性別の物価高負担の試算
世帯属性別の過剰貯蓄の試算
2022年度は物価高による負担増が個人消費の重石となるが、その一方でコロナ禍の度重なる行動制限によって家計には過剰な貯蓄が積み上がっている。2019年と比べた2020、2021年の貯蓄増加額のうち、貯蓄率の上昇によって生じた部分を過剰貯蓄とみなした場合、勤労者世帯の過剰貯蓄は2020年が39.3万円、2021年が30.1万円、合計69.4万円となる。
ただし、物価高の負担と同様に、世帯属性によって過剰貯蓄には差が生じている可能性がある。そこで、世帯属性別の過剰貯蓄を試算すると、無職世帯は64.1万円と勤労者世帯より若干少ない。勤労者世帯では年間収入の高い層の過剰貯蓄が多く、IV階級では100万円を上回っている。物価高負担に対する過剰貯蓄の比率は勤労者世帯・第II階級の5.2倍から第IV階級の10.5倍まで差があるが、いずれの世帯でも2022年度に想定される物価高の負担を過剰貯蓄が上回っている[図表3]。
このことは、貯蓄率の引き下げや積み上がった貯蓄の取り崩しによって、物価高の悪影響を緩和することが可能であることを示している。
ただし、物価高の負担と同様に、世帯属性によって過剰貯蓄には差が生じている可能性がある。そこで、世帯属性別の過剰貯蓄を試算すると、無職世帯は64.1万円と勤労者世帯より若干少ない。勤労者世帯では年間収入の高い層の過剰貯蓄が多く、IV階級では100万円を上回っている。物価高負担に対する過剰貯蓄の比率は勤労者世帯・第II階級の5.2倍から第IV階級の10.5倍まで差があるが、いずれの世帯でも2022年度に想定される物価高の負担を過剰貯蓄が上回っている[図表3]。
このことは、貯蓄率の引き下げや積み上がった貯蓄の取り崩しによって、物価高の悪影響を緩和することが可能であることを示している。
高水準の貯蓄を活かす政策を
2022年7月以降、新型コロナウイルスの新規陽性者数が急増した。厳しい行動制限やワクチン接種などの策を講じても、感染が増加と減少を繰り返すことは、2年半にわたる世界各国の例を見ても明らかであり、感染を完全に封じ込めることはできない。
政府は今のところ、特別な行動制限を課していない。医療提供体制の整備などによって、行動制限のない状態が維持されれば、物価上昇率が高まる中でも、個人消費の回復基調は維持される可能性が高い。高水準の貯蓄を活かす政策が求められる。
政府は今のところ、特別な行動制限を課していない。医療提供体制の整備などによって、行動制限のない状態が維持されれば、物価上昇率が高まる中でも、個人消費の回復基調は維持される可能性が高い。高水準の貯蓄を活かす政策が求められる。
(2022年09月07日「基礎研マンスリー」)
このレポートの関連カテゴリ

03-3512-1836
経歴
- ・ 1992年:日本生命保険相互会社
・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
・ 2019年8月より現職
・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2018年~ 統計委員会専門委員
斎藤 太郎のレポート
日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
---|---|---|---|
2025/06/30 | 鉱工業生産25年5月-4-6月期は2四半期連続減産の可能性が高まる | 斎藤 太郎 | 経済・金融フラッシュ |
2025/06/27 | 雇用関連統計25年5月-新規求人倍率は3年6ヵ月ぶりの低水準も、労働市場全体の需給を反映せず | 斎藤 太郎 | 経済・金融フラッシュ |
2025/06/20 | 消費者物価(全国25年5月)-コアCPIは食料中心に上昇率拡大も、夏場には3%割れへ | 斎藤 太郎 | 経済・金融フラッシュ |
2025/06/18 | トランプ関税による企業収益への影響~輸出数量減少よりも輸出価格引き下げのほうが悪化幅は大きい~ | 斎藤 太郎 | 研究員の眼 |
新着記事
-
2025年07月04日
金融安定性に関するレポート(欧州)-EIOPAの定期報告書の公表 -
2025年07月04日
「持ち家か、賃貸か」。法的視点から「住まい」を考える(1)~持ち家を購入することは、「所有権」を得ること -
2025年07月04日
米雇用統計(25年6月)-非農業部門雇用者数が市場予想を上回ったほか、失業率が上昇予想に反して低下 -
2025年07月03日
ユーロ圏失業率(2025年5月)-失業率はやや上昇したが、依然低位安定 -
2025年07月03日
IAIGsの指定の公表に関する最近の状況(14)-19の国・地域からの60社全てのIAIGsのグループ名が公開された-
レポート紹介
-
研究領域
-
経済
-
金融・為替
-
資産運用・資産形成
-
年金
-
社会保障制度
-
保険
-
不動産
-
経営・ビジネス
-
暮らし
-
ジェロントロジー(高齢社会総合研究)
-
医療・介護・健康・ヘルスケア
-
政策提言
-
-
注目テーマ・キーワード
-
統計・指標・重要イベント
-
媒体
- アクセスランキング
お知らせ
-
2025年07月01日
News Release
-
2025年06月06日
News Release
-
2025年04月02日
News Release
【世帯属性別にみた物価高の負担と過剰貯蓄】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。
世帯属性別にみた物価高の負担と過剰貯蓄のレポート Topへ