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2022年08月19日
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1.コアCPI上昇率は4ヵ月連続の2%台

食料(生鮮食品を除く)の伸びが高まったことに加え、携帯電話機の値上げがコアCPIを押し上げた。
生鮮食品及びエネルギーを除く総合(コアコアCPI)は前年比1.2%(6月:同1.0%)、生鮮食品が前年比8.3%と高めの伸びが続いていることから、総合は前年比2.6%(6月:同2.4%)と、コアCPIを上回る伸びが続いている。
コアCPIの内訳をみると、電気代(6月:前年比18.0%→7月:同19.6%)、ガス代(6月:前年比17.1%→7月:同18.8%)は前月から伸びを高めたが、ガソリン(6月:前年比12.2%→7月:同8.3%)、灯油(6月:前年比23.4%→7月:同19.6%)の伸びが鈍化したことから、エネルギー価格の上昇率は6月の前年比16.5%から同16.2%へと若干鈍化した。ガソリン、灯油は物価高対策として実施されている燃料油価格激変措置(石油元売り会社への補助金)で価格が抑制されている。

原材料価格の高騰を受けて、食用油(前年比40.3%)、マヨネーズ(同15.3%)、パン(同11.2%)、麺類(同10.7%)などが前年比二桁の高い伸びとなっているほか、菓子類(6月:前年比4.0%→7月:同4.8%)、調理食品(6月:前年比4.3%→7月:同4.7%)なども前月から伸びを高めた。
さらに、一般外食は、食料工業製品に比べて人件費の影響を受けやすいこともあり、相対的に低い伸びが続いていたが、原材料費の大幅上昇を価格転嫁する動きが広がり、3月の前年比1.0%から7月には同3.4%とここにきて上昇ペースが急加速している。
コアCPI上昇率を寄与度分解すると、エネルギーが1.27%(6月:1.27%)、食料(生鮮食品を除く)が0.84%(6月:0.75%)、携帯電話通信料が▲0.38%(6月:同▲0.39%)、その他が0.67%(6月:0.58%)であった。
2.物価上昇品目の割合は7割を超える

食料(生鮮食品を除く)の上昇品目割合は8割近くとなっている(5月:73.7%→6月:77.1%→7月:79.4%)。原材料価格の高騰を販売価格に転嫁する動きはさらに広がっている。
3. コアCPI上昇率は3%近くまで高まる見込み
これまでコアCPIを大きく押し上げてきたのは、原油高に伴うエネルギー価格の大幅上昇だったが、上昇ペース加速の主因は食料品(除く生鮮食品)へと移っている。

一方、原油価格(ドバイ)は、世界経済の減速懸念の高まりなどから、1バレル=90ドル台まで低下したが、燃料油価格激変緩和措置(石油元売り会社への補助金)によってガソリン、灯油価格等が抑制されているため、市況の下落がエネルギー価格の低下に直結しない構造となっている。エネルギー価格は22年3月の前年比20.8%をピークに伸びは鈍化しているが、22年内は前年比で10%台の高い伸びが続くだろう。
コアCPIは、食料品の上昇ペースが一段と加速すること、円安に伴う輸入物価の上昇を受けて、日用品や衣料品など幅広い品目で価格転嫁の動きが広がることから、上昇率の拡大傾向が続く可能性が高い。現時点では、携帯電話通信料の値下げの影響一巡、火災・地震保険料の引き上げが見込まれる22年10月に2.9%まで上昇率が高まると予想している。
(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
(2022年08月19日「経済・金融フラッシュ」)
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03-3512-1836
経歴
- ・ 1992年:日本生命保険相互会社
・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
・ 2019年8月より現職
・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2018年~ 統計委員会専門委員
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