2022年07月29日

雇用関連統計22年6月-企業の人手不足感の高さを背景に、有効求人倍率の回復が鮮明に

経済研究部 経済調査部長 斎藤 太郎

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1.失業率は前月から横ばいの2.6%

完全失業率と就業者の推移 総務省が7月29日に公表した労働力調査によると、22年6月の完全失業率は前月から横ばいの2.6%(QUICK集計・事前予想:2.5%、当社予想も2.5%)となった。

労働力人口が前月から12万人の増加となる中、就業者も前月から12万人増加したため、失業者は前月から横ばいの180万人(いずれも季節調整値)となった。
産業別・就業者数の推移/雇用形態別雇用者数
就業者数は前年差21万人増(5月:同17万人増)と3ヵ月連続で増加した。産業別には、宿泊・飲食サービスが前年差▲5万人減(5月:同▲3万人減)と2ヵ月連続の減少となったほか、製造業(5月:同▲9万人減→6月:同▲18万人減)、卸売・小売(5月:前年差▲39万人減→6月:同▲39万人減)も減少が続いたが、医療・福祉が前年差30万人増(5月:同46万人増)と大幅増加が続いたとか、生活関連サービス・娯楽が前年差3万人増(5月:同▲2万人減)と13ヵ月ぶりに増加に転じた。

雇用者数(役員を除く)は前年に比べ13万人増(5月:同45万人増)と4ヵ月連続で増加した。雇用形態別にみると、正規の職員・従業員数が前年差▲5万人減(5月:同39万人増)と4ヵ月ぶりに減少したが、非正規の職員・従業員数が前年差18万人増(5月:同5万人増)と5ヵ月連続で増加した。6月は前年同月と比べ、正規が減少、非正規が増加したが、コロナ禍前の19年同月と比べると、正規の職員・従業員が53万人増となっているのに対し、非正規の職員・従業員は▲48万人減となっている。

2.飲食店の休業率が大きく低下

主な産業別休業率 休業者数は157万人となり、前年に比べて▲27万人の減少(5月:同▲50万人減)となった。休業率(休業者/就業者)を産業別にみると、まん延防止等重点措置の終了を受けて、飲食店は2月の9.5%から6月には1.8%まで大きく低下し、娯楽業も2月の5.3%から6月には4.0%まで低下した。一方、宿泊業は2月の6.1%から5月に2.0%まで低下した後、6月は4.2%へと上昇した(休業率は原数値)。

3.有効求人倍率の改善が続く

有効求人倍率の推移 厚生労働省が7月29日に公表した一般職業紹介状況によると、22年6月の有効求人倍率は前月から0.03ポイント上昇の1.27倍(QUICK集計・事前予想:1.25倍、当社予想は1.26倍)と、5ヵ月連続で上昇した。有効求人数が前月比1.7%の高い伸びとなり、有効求職者数の伸び(同0.0%)を上回った。

有効求人倍率の先行指標である新規求人倍率は前月から0.03ポイント低下の2.23倍となった。新規求人数が前月比▲1.7%と4ヵ月ぶりに減少し、新規求職申込件数の減少幅(同▲0.2%)を上回った。
 
失業率は横ばい圏の動きが続いているが、労働市場の需給関係を反映する有効求人倍率は、企業の人手不足感の高さを背景に、急ピッチで回復している。供給制約の影響で製造業の生産活動は停滞しているが、まん延防止等重点措置の終了を受けて、外食、旅行などを中心に個人消費は回復している。

7月に入ってから新型コロナウイルスの感染が急拡大しているが、今のところ政府は特別な行動制限を課していない。行動制限のない状態が維持されれば、個人消費、雇用情勢の改善傾向は維持されるだろう。
 
 

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斎藤 太郎 (さいとう たろう)

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴
  • ・ 1992年:日本生命保険相互会社
    ・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
    ・ 2019年8月より現職

    ・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2018年~ 統計委員会専門委員

(2022年07月29日「経済・金融フラッシュ」)

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