2022年07月29日

鉱工業生産22年6月-供給制約の影響で3四半期ぶりの減産

経済研究部 経済調査部長 斎藤 太郎

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1.4-6月期は3四半期ぶりの減産

経済産業省が7月29日に公表した鉱工業指数によると、22年6月の鉱工業生産指数は前月比8.9%(5月:同▲7.5%)と3ヵ月ぶりに上昇し、事前の市場予想(QUICK集計:前月比3.8%、当社予想は同7.2%)を大きく上回る結果となった。出荷指数は前月比4.6%と3ヵ月ぶりの上昇、在庫指数は前月比2.1%と4ヵ月ぶりの上昇となった。

6月の生産を業種別に見ると、半導体等の部品不足や中国のロックダウンの影響で5月に前月比▲8.3%と大きく落ち込んだ自動車が同14.0%と急回復したほか、電気・情報通信機械(前月比11.0%)、電子部品・デバイス(同11.4%)も前月比で二桁の高い伸びとなった。

22年4-6月期の生産は前期比▲2.8%(1-3月期:同0.8%)と3四半期ぶりの減産となった。業種別には、半導体不足や新型コロナウイルス感染拡大による供給制約に、中国のロックダウンが加わったことで、稼働停止の工場がさらに増えた自動車が前期比▲1.4%(1-3月期:同1.7%)と3四半期ぶりの減産となったほか、自動車産業の影響を受けやすい鉄鋼が前期比▲3.3%(1-3月期:同▲3.7%)と3四半期連続の減産となった。また、内外の設備投資需要の強さを背景に好調が続いてきた生産用機械は、部品調達難の影響などから前期比▲1.4%と7四半期ぶりにマイナスとなった。
鉱工業生産・出荷・在庫指数の推移/鉱工業生産の業種別寄与度
財別の出荷動向を見ると、設備投資のうち機械投資の一致指標である資本財出荷指数(除く輸送機械)は22年1-3月期の前期比0.0%の後、4-6月期は同0.9%となった。また、建設投資の一致指標である建設財出荷指数は22年1-3月期の前期比▲0.1%の後、4-6月期は同3.8%となった。

GDP統計の設備投資は、21年10-12月期が前期比0.1%、22年1-3月期が同▲0.7%と低迷が続いている。部品不足などの供給制約が設備投資を抑制しているが、高水準の企業収益を背景に基調としては持ち直しの動きが続いていると判断される。22年4-6月期の設備投資は2四半期ぶりに増加する可能性が高い。
財別の出荷動向 消費財出荷指数は22年1-3月期の前期比▲1.0%の後、4-6月期は同▲1.9%となった。非耐久消費財は前期比0.8%(1-3月期:同▲0.4%)と2四半期ぶりに上昇したが、耐久消費財が同▲6.4%(1-3月期:同1.1%)と大きく落ち込んだ。

GDP統計の民間消費は22年1-3月期に前期比0.1%の低い伸びにとどまった。供給制約の影響で自動車販売は低迷しているが、まん延防止等重点措置の終了を受けて、外食、宿泊などの対面型サービスが回復しているため、4-6月期の民間消費は伸びを大きく高める可能性が高い。

2.先行きの持ち直しは緩やかにとどまる公算

製造工業生産予測指数は、22年7月が前月比3.8%、8月が同6.0%となった。生産計画の修正状況を示す実現率(6月)、予測修正率(7月)はそれぞれ▲2.2%、▲1.0%であった。実現率、予測修正率ともにマイナスとなったが、中国のロックダウンの影響で大きく下振れした5、6月に比べるとマイナス幅は大きく縮小した。

予測指数を業種別にみると、22年入り後低迷が続く輸送機械は、7月が前月比12.9%、8月が同7.1%の大幅増産計画となっているが、実際の生産は大きく下振れる可能性が高い。自動車は、半導体不足や新型コロナウイルス感染拡大による供給制約によって、一部工場の稼働停止が続いている。
最近の実現率、予測修正率の推移/輸送機械の生産、在庫動向
中国のロックダウンは6月に解除されていること、まん延防止等重点措置の解除を受けて国内需要は個人消費を中心に回復していることを考慮すれば、先行きの生産は持ち直しに向かうことが予想される。ただし、供給制約が完全に解消されるまでには時間を要すること、米国経済の減速傾向が続くことなどから、そのペースは当面緩やかにとどまる可能性が高い。
 
 

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経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎 (さいとう たろう)

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴
  • ・ 1992年:日本生命保険相互会社
    ・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
    ・ 2019年8月より現職

    ・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2018年~ 統計委員会専門委員

(2022年07月29日「経済・金融フラッシュ」)

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