2022年06月01日

法人企業統計22年1-3月期-収益環境が厳しさを増すなかでも、増益を確保

経済研究部 経済調査部長   斎藤 太郎

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1.5四半期連続の増益

経常利益の推移 財務省が6月1日に公表した法人企業統計によると、22年1-3月期の全産業(金融業、保険業を除く、以下同じ)の経常利益は前年比13.7%(10-12月期:同24.7%)と5四半期連続で増加した。製造業が前年比18.4%(10-12月期:同22.1%)、非製造業が前年比10.9%(10-12月期:同26.4%)と前期から伸びは鈍化したものの、前年比で二桁の伸びを維持した。
製造業は、輸出減速の影響で売上高の伸びが10-12月期の前年比9.2%から同9.0%へと若干鈍化したが、売上高経常利益率が21年1-3月期の7.8%から8.5%へと改善したことが収益の押し上げ要因となった。売上高経常利益率を要因分解すると、円安、原油高の影響で変動費が9.7%の高い伸びとなり、利益率を押し下げたが、人件費が前年比4.0%と売上高の伸びを大きく下回ったため、売上高人件費率が改善した。

非製造業は、売上高の伸びが前年比4.3%から同7.5%へと大きく高まったことに加え、売上高経常利益率が21年1-3月期の5.3%から5.4%へと改善したことが収益の押し上げ要因となった。製造業と同様に、変動費が8.2%の高い伸びとなり、変動費要因がマイナスとなったが、売上高人件費率が改善した。
売上高経常利益率の要因分解(製造業)/売上高経常利益率の要因分解(非製造業)

2.製造業の経常利益(季節調整値)は過去最高水準に近づく

経常利益を業種別に見ると、製造業は、供給制約の影響が残る輸送用機械が前年比▲11.7%(10-12月期:同▲24.7%)と2四半期連続で減少し、好調が続いていたはん用機械(同▲19.3%)、生産用機械(同▲14.0%)も減少に転じたが、鉄鋼(同90.7%)、情報通信機械(同97.2%)、化学(同54.5%)が高い伸びとなった。

非製造業は、電気業が2四半期連続の赤字(▲2,393億円)、▲建設業(前年比▲14.7%)は3四半期連続の減益となったが、卸売・小売業(同36.0%)、物品賃貸業(同40.9%)の高い伸びがそれをカバーした。

21年10-12月期は、コロナ禍で赤字が続いていた宿泊業が8四半期ぶり、生活関連サービス業が7四半期ぶりの黒字となったが、22年1-3月期はまん延防止等重点措置の影響で需要が落ち込んだことから、再び赤字に転じた。
経常利益(季節調整値)の推移 季節調整済の経常利益は前期比0.2%(10-12月期:同17.4%)と2四半期連続で増加した。非製造業は前期比▲3.4%(10-12月期:同21.8%)と2四半期ぶりの減少となったが、製造業が前期比5.9%(10-12月期:同11.0%)と2四半期連続で増加した。

22年1-3月期の経常利益(季節調整値)は23.1兆円と、コロナ前(19年10-12月期)の水準を24.0%上回っている。直近のピーク(18年4-6月期の23.8兆円)に比べれば▲3.1%低いが、製造業の経常利益は9.39兆円となり、過去最高水準(18年4-6月期の9.44兆円)に近づいた。
 
22年1-3月期は、原油高に伴うコスト増、まん延防止等重点措置による行動制限の強化などのマイナス要因はあったものの、企業収益は堅調を維持した。4-6月期はまん延防止等重点措置の解除に伴う個人消費の回復が期待できる一方、資源・穀物価格のさらなる高騰や中国のロックダウンを受けた輸出、生産の減少が収益の下押し要因となる。現時点では、先行きも企業収益の改善傾向は維持されると予想しているが、当面は下振れリスクの高い状態が続くだろう。

3.設備投資は回復するが、企業の慎重姿勢は変わらず

設備投資(ソフトウェアを含む)の推移 設備投資(ソフトウェアを含む)は前年比3.0%(10-12月期:同4.3%)と4四半期連続で増加したが、伸び率は前期から鈍化した。

製造業(10-12月期:前年比5.1%→1-3月期:同5.9%)は伸びを高めたが、非製造業(10-12月期:前年比3.8%→1-3月期:同1.6%)が減速した。

季節調整済の設備投資(ソフトウェアを含む)は前期比0.3%(10-12月期:同3.1%)と2四半期連続で増加した。非製造業(10-12月期:前期比3.2%→1-3月期:同▲0.3%)は小幅ながら減少に転じたが、製造業(10-12月期:前期比2.9%→1-3月期:同1.7%)が2四半期連続で増加した。
設備投資とキャッシュフローの関係 設備投資は増加が続いているが、企業収益に比べると回復ペースはきわめて鈍い。21年度の経常利益は前年比36.8%の高い伸びとなったが、設備投資は同3.4%の低い伸びにとどまった。

企業の設備投資意欲を示す「設備投資/キャッシュフロー比率」は50%台前半と過去最低水準にある。コロナ禍が長期化する中で、原材料価格の高騰やウクライナ情勢の深刻化などの悪材料が重なったこともあり、企業は慎重姿勢を一段と強めている。

4.1-3月期・GDP2次速報は1次速報とほぼ変わらず

本日の法人企業統計の結果等を受けて、6/8公表予定の22年1-3月期GDP2次速報では、実質GDPが前期比▲0.3%(前期比年率▲1.1%)となり、1次速報の前期比▲0.2%(前期比年率▲1.0%)とほぼ変わらないだろう。設備投資、公的固定資本形成の下方修正を、民間消費、民間在庫変動の上方修正がほぼ相殺する形となることが見込まれる。

設備投資は1次速報の前期比0.5%から同0.1%へと下方修正されると予想する。

設備投資の需要側推計に用いられる法人企業統計の設備投資(ソフトウェアを除く)は前年比5.0%(10-12月期:同5.5%)と4四半期連続で増加した。法人企業統計ではサンプル替えや四半期毎の回答企業の差によって断層が生じるが、当研究所でこの影響を調整したところ前年比ゼロ%台の増加となった。また、金融保険業の設備投資(ソフトウェアを除く)は前年比▲12.1%(10-12月期:同▲14.8%)の大幅減少となった。1次速報段階では、設備投資の需要側推計値は前年比4.1%となっていた。本日の法人企業統計の結果は設備投資の下方修正要因と考えられる。
2022年1-3月期GDP2次速報の予測 また、民間在庫変動は1次速報で仮置きとなっていた原材料在庫、仕掛品在庫に法人企業統計の結果が反映され、1次速報の前期比・寄与度0.2%から同0.3%へと上方修正されるだろう。

その他の需要項目では、民間消費は3月のサービス産業動向調査の結果などが反映され、前期比▲0.0%から同0.1%へ上方修正される一方、公的固定資本形成は3月の建設総合統計の結果が反映され、前期比▲3.6%から同▲4.3%へ下方修正されると予想する。
 
 

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経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎 (さいとう たろう)

研究・専門分野
日本経済、雇用

(2022年06月01日「経済・金融フラッシュ」)

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