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- 法人企業統計22年1-3月期-収益環境が厳しさを増すなかでも、増益を確保
2022年06月01日
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1.5四半期連続の増益
製造業は、輸出減速の影響で売上高の伸びが10-12月期の前年比9.2%から同9.0%へと若干鈍化したが、売上高経常利益率が21年1-3月期の7.8%から8.5%へと改善したことが収益の押し上げ要因となった。売上高経常利益率を要因分解すると、円安、原油高の影響で変動費が9.7%の高い伸びとなり、利益率を押し下げたが、人件費が前年比4.0%と売上高の伸びを大きく下回ったため、売上高人件費率が改善した。
非製造業は、売上高の伸びが前年比4.3%から同7.5%へと大きく高まったことに加え、売上高経常利益率が21年1-3月期の5.3%から5.4%へと改善したことが収益の押し上げ要因となった。製造業と同様に、変動費が8.2%の高い伸びとなり、変動費要因がマイナスとなったが、売上高人件費率が改善した。
非製造業は、売上高の伸びが前年比4.3%から同7.5%へと大きく高まったことに加え、売上高経常利益率が21年1-3月期の5.3%から5.4%へと改善したことが収益の押し上げ要因となった。製造業と同様に、変動費が8.2%の高い伸びとなり、変動費要因がマイナスとなったが、売上高人件費率が改善した。
2.製造業の経常利益(季節調整値)は過去最高水準に近づく
経常利益を業種別に見ると、製造業は、供給制約の影響が残る輸送用機械が前年比▲11.7%(10-12月期:同▲24.7%)と2四半期連続で減少し、好調が続いていたはん用機械(同▲19.3%)、生産用機械(同▲14.0%)も減少に転じたが、鉄鋼(同90.7%)、情報通信機械(同97.2%)、化学(同54.5%)が高い伸びとなった。
非製造業は、電気業が2四半期連続の赤字(▲2,393億円)、▲建設業(前年比▲14.7%)は3四半期連続の減益となったが、卸売・小売業(同36.0%)、物品賃貸業(同40.9%)の高い伸びがそれをカバーした。
21年10-12月期は、コロナ禍で赤字が続いていた宿泊業が8四半期ぶり、生活関連サービス業が7四半期ぶりの黒字となったが、22年1-3月期はまん延防止等重点措置の影響で需要が落ち込んだことから、再び赤字に転じた。
非製造業は、電気業が2四半期連続の赤字(▲2,393億円)、▲建設業(前年比▲14.7%)は3四半期連続の減益となったが、卸売・小売業(同36.0%)、物品賃貸業(同40.9%)の高い伸びがそれをカバーした。
21年10-12月期は、コロナ禍で赤字が続いていた宿泊業が8四半期ぶり、生活関連サービス業が7四半期ぶりの黒字となったが、22年1-3月期はまん延防止等重点措置の影響で需要が落ち込んだことから、再び赤字に転じた。

22年1-3月期の経常利益(季節調整値)は23.1兆円と、コロナ前(19年10-12月期)の水準を24.0%上回っている。直近のピーク(18年4-6月期の23.8兆円)に比べれば▲3.1%低いが、製造業の経常利益は9.39兆円となり、過去最高水準(18年4-6月期の9.44兆円)に近づいた。
22年1-3月期は、原油高に伴うコスト増、まん延防止等重点措置による行動制限の強化などのマイナス要因はあったものの、企業収益は堅調を維持した。4-6月期はまん延防止等重点措置の解除に伴う個人消費の回復が期待できる一方、資源・穀物価格のさらなる高騰や中国のロックダウンを受けた輸出、生産の減少が収益の下押し要因となる。現時点では、先行きも企業収益の改善傾向は維持されると予想しているが、当面は下振れリスクの高い状態が続くだろう。
3.設備投資は回復するが、企業の慎重姿勢は変わらず
4.1-3月期・GDP2次速報は1次速報とほぼ変わらず
本日の法人企業統計の結果等を受けて、6/8公表予定の22年1-3月期GDP2次速報では、実質GDPが前期比▲0.3%(前期比年率▲1.1%)となり、1次速報の前期比▲0.2%(前期比年率▲1.0%)とほぼ変わらないだろう。設備投資、公的固定資本形成の下方修正を、民間消費、民間在庫変動の上方修正がほぼ相殺する形となることが見込まれる。
設備投資は1次速報の前期比0.5%から同0.1%へと下方修正されると予想する。
設備投資の需要側推計に用いられる法人企業統計の設備投資(ソフトウェアを除く)は前年比5.0%(10-12月期:同5.5%)と4四半期連続で増加した。法人企業統計ではサンプル替えや四半期毎の回答企業の差によって断層が生じるが、当研究所でこの影響を調整したところ前年比ゼロ%台の増加となった。また、金融保険業の設備投資(ソフトウェアを除く)は前年比▲12.1%(10-12月期:同▲14.8%)の大幅減少となった。1次速報段階では、設備投資の需要側推計値は前年比4.1%となっていた。本日の法人企業統計の結果は設備投資の下方修正要因と考えられる。
設備投資は1次速報の前期比0.5%から同0.1%へと下方修正されると予想する。
設備投資の需要側推計に用いられる法人企業統計の設備投資(ソフトウェアを除く)は前年比5.0%(10-12月期:同5.5%)と4四半期連続で増加した。法人企業統計ではサンプル替えや四半期毎の回答企業の差によって断層が生じるが、当研究所でこの影響を調整したところ前年比ゼロ%台の増加となった。また、金融保険業の設備投資(ソフトウェアを除く)は前年比▲12.1%(10-12月期:同▲14.8%)の大幅減少となった。1次速報段階では、設備投資の需要側推計値は前年比4.1%となっていた。本日の法人企業統計の結果は設備投資の下方修正要因と考えられる。
(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
(2022年06月01日「経済・金融フラッシュ」)
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03-3512-1836
経歴
- ・ 1992年:日本生命保険相互会社
・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
・ 2019年8月より現職
・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2018年~ 統計委員会専門委員
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