2022年05月19日

貿易統計22年4月-ロックダウンの影響で中国向けの輸出が急減

経済研究部 経済調査部長 斎藤 太郎

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1.原油高の影響で貿易赤字(季節調整値)が拡大

財務省が5月19日に公表した貿易統計によると、22年4月の貿易収支は▲8,392億円の赤字となったが、赤字幅は事前の市場予想(QUICK集計:▲11,450億円、当社予想は▲11,192億円)を下回った。輸出(3月:前年比14.7%→4月:同12.5%)、輸入(3月:前年比31.2%→4月:28.2%)ともに前月から伸びが低下したが、輸入の伸びが輸出の伸びを大きく上回ったため、貿易収支は前年に比べ▲10,695億円の悪化となった。なお、ロシア向けの輸出は前年比▲69.3%(3月:同▲32.4%)、輸入は前年比67.3%(3月:同89.2%)となった。

輸出の内訳を数量、価格に分けてみると、輸出数量が前年比▲4.4%(3月:同▲1.4%)、輸出価格が前年比17.7%(3月:同16.3%)、輸入の内訳は、輸入数量が前年比▲9.0%(3月:同0.0%)、輸入価格が前年比40.9%(3月:同31.2%)であった。
貿易収支の推移/貿易収支(季節調整値)の推移
輸出金額の要因分解/輸入金額の要因分解
季節調整済の貿易収支は▲16,189億円と11ヵ月連続の赤字となり、3月の▲10,194億円から赤字幅が拡大した。輸出は前月比1.0%の増加となったが、原油高の影響で輸入が同7.9%の大幅増加となった。
原油価格(ドバイと入着ベース)の推移 4月の通関(入着)ベースの原油価格は1バレル=107.9ドル(当研究所による試算値)となり、3月の91.9ドルから大幅に上昇した。足もとの原油価格(ドバイ)は、110ドル程度で推移しており、通関ベースの原油価格は5月以降も高止まりが見込まれる。輸入価格の上昇を主因として、貿易収支(季節調整値)は当面大幅な赤字が続く可能性が高い。

2.ロックダウンの影響で中国向け輸出が急減

22年4月の輸出数量指数を地域別に見ると、米国向けが前年比8.0%(3月:同11.7%)、EU向けが前年比6.6%(3月:同7.7%)、アジア向けが前年比▲8.2%(3月:同▲7.2%)、うち中国向けが前年比▲22.6%(3月:同▲13.0%)となった。
地域別輸出数量指数(季節調整値)の推移 22年4月の地域別輸出数量指数を季節調整値(当研究所による試算値)でみると、米国向けが前月比3.4%(3月:同10.0%)、EU向けが前月比▲3.8%(3月:同15.9%)、アジア向けが前月比▲0.1%(3月:同▲3.1%)、中国向けが前月比▲10.6%(3月:同▲4.8%)、全体では前月比▲2.8%(3月:同0.5%)となった。

米国向け、EU向けは自動車の減少を一般機械、鉄鋼などの増加がカバーする形で、全体としては好調を維持しているが、ロックダウンの影響で中国向け輸出が急減した。中国のロックダウンは現在も継続しており、5月の輸出は減少幅がさらに拡大する可能性が高い。
自動車生産と自動車輸出の推移 自動車輸出(対世界)は名目では前年比4.8%の増加となったが、台数ベースでは前年比▲11.1%(3月:同▲14.3%)と4ヵ月連続で減少した。季節調整値(当研究所による試算値)では、前月比▲2.4%(3月:同▲1.2%)となり、22年に入ってから弱い動きが続いている。

自動車は、半導体不足や新型コロナウイルス感染拡大による供給制約によって、一部工場の稼働停止が続いてきたが、中国のロックダウンが加わったことで、稼働停止の工場がさらに増えている。鉱工業生産の輸送機械は4月が前月比8.7%、5月が同13.9%の大幅増産計画となっているが、自動車輸出の動向を踏まえれば、実際の生産は計画から大きく下振れる可能性が高い。
 
 

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斎藤 太郎 (さいとう たろう)

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴
  • ・ 1992年:日本生命保険相互会社
    ・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
    ・ 2019年8月より現職

    ・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2018年~ 統計委員会専門委員

(2022年05月19日「経済・金融フラッシュ」)

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