2022年05月31日

鉱工業生産22年4月-中国のロックダウンの影響で生産活動が低迷

経済研究部 経済調査部長 斎藤 太郎

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1.自動車生産の低迷が続く

鉱工業生産・出荷・在庫指数の推移 経済産業省が5月31日に公表した鉱工業指数によると、22年4月の鉱工業生産指数は前月比▲1.3%(3月:同0.3%)と3ヵ月ぶりに低下し、事前の市場予想(QUICK集計:前月比▲0.2%、当社予想は同▲0.5%)を下回る結果となった。出荷指数は前月比0.0%の横ばい、在庫指数は前月比▲2.5%と2ヵ月連続の低下となった。

4月の生産を業種別に見ると、電気・情報通信機械(前月比4.7%)、汎用・業務用機械(同3.5%)は大幅に上昇したが、電子部品・デバイスが前月比▲6.6%と大きく落ち込んだほか、半導体等の部品不足や中国のロックダウンの影響で自動車が前月比▲0.6%(3月:同▲6.0%)と2ヵ月連続で低下した。
財別の出荷動向を見ると、設備投資のうち機械投資の一致指標である資本財出荷指数(除く輸送機械)は22年1-3月期の前期比0.0%の後、4月は前月比2.2%となった。また、建設投資の一致指標である建設財出荷指数は22年1-3月期の前期比▲0.1%の後、4月は前月比3.4%となった。
財別の出荷動向 GDP統計の設備投資は、21年7-9月期に前期比▲2.4%と大きく落ち込んだ後、10-12月期が同0.4%、22年1-3月期が同0.5%と低い伸びにとどまっている。部品不足などの供給制約が設備投資を抑制しているが、高水準の企業収益を背景に基調としては持ち直しの動きが続いている。22年4-6月期の設備投資は3四半期連続で増加する可能性が高い。

消費財出荷指数は22年1-3月期の前期比▲1.0%の後、4月は前月比1.4%となった。耐久消費財が前月比0.1%(1-3月期は前期比1.1%)、非耐久消費財が前月比2.8%(1-3月は前期比▲0.4%)となった。

GDP統計の民間消費は22年1-3月期に前期比▲0.0%と低迷したが、まん延防止等重点措置の終了を受けて、4-6月期は外食、宿泊などの対面型サービスを中心に高い伸びとなる可能性が高い。

2.生産の持ち直しは6月以降

製造工業生産予測指数は、22年5月が前月比4.8%、6月が同8.9%となった。生産計画の修正状況を示す実現率(4月)、予測修正率(5月)はそれぞれ▲8.9%、▲3.7%であった。4月の実現率のマイナス幅は、新型コロナウイルス感染拡大に伴う緊急事態宣言が最初に発令された20年4月(▲11.4%)以来の大きさとなった。

予測指数を業種別にみると、21年入り後低迷が続く輸送機械は、5月が前月比8.7%、6月が同10.7%の大幅増産計画となっているが、実際の生産は大きく下振れる可能性が高い。

自動車は、半導体不足や新型コロナウイルス感染拡大による供給制約によって、一部工場の稼働停止が続いてきたが、中国のロックダウンが加わったことで、稼働停止の工場がさらに増えている。
最近の実現率、予測修正率の推移/輸送機械の生産、在庫動向
22年4月の生産指数を5、6月の予測指数で先延ばしすると、22年4-6月期の生産は前期比5.8%の高い伸びとなるが、実際の生産は大きく下振れる公算が大きい。

中国のロックダウンの影響は少なくとも5月まで続くため、5月の生産は4月に続き予測指数を大きく下回る伸びとなるだろう。一方、まん延防止等重点措置の解除を受けて国内需要は個人消費を中心に回復しているため、中国のロックダウンが解除される6月以降、生産は持ち直しに向かうことが見込まれる。
 
 

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経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎 (さいとう たろう)

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴
  • ・ 1992年:日本生命保険相互会社
    ・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
    ・ 2019年8月より現職

    ・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2018年~ 統計委員会専門委員

(2022年05月31日「経済・金融フラッシュ」)

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