2022年09月01日

法人企業統計22年4-6月期-経常利益(季節調整値)は過去最高水準を更新

経済研究部 経済調査部長 斎藤 太郎

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1.6四半期連続の増益

経常利益の推移 財務省が9月1日に公表した法人企業統計によると、22年4-6月期の全産業(金融業、保険業を除く、以下同じ)の経常利益は前年比17.6%(1-3月期:同13.7%)と6四半期連続で増加し、前期から伸びを高めた。製造業は前年比11.7%(1-3月期:同18.4%)と伸びが鈍化したが、非製造業が前年比21.9%(1-3月期:同10.9%)と伸びが大きく加速した。
売上高経常利益率の要因分解(製造業)/売上高経常利益率の要因分解(非製造業)
製造業は、輸出減速の影響で売上高の伸びが1-3月期の前年比9.0%から同6.1%へと鈍化したが、売上高経常利益率が21年4-6月期の10.7%から11.2%へと改善したことが収益の押し上げ要因となった。売上高経常利益率を要因分解すると、円安、原油高の影響で変動費が9.9%の高い伸びとなり、利益率を大きく押し下げたが、人件費が前年比1.4%と売上高の伸びを大きく下回り、売上高人件費率が改善したことに加え、受取利息等が前年比52.3%の大幅増加となったことから、金融費用要因が利益率を大きく押し上げた。

なお、製造業の営業利益は前年比▲6.6%と7四半期ぶりの減少となった。受取利息等の急増(おそらく受取配当金)は一時的なものと考えられ、本業で稼いだ利益は、原材料価格上昇によるコスト増を主因として悪化したことには注意が必要だ。

非製造業は、売上高は前年比7.6%(1-3月期:前年比7.5%)と前期からほぼ変わらなかったが、売上高経常利益率が21年4-6月期の6.4%から7.2%へと改善したことが収益の押し上げ要因となった。製造業と同様に、変動費が7.9%の高い伸びとなり、変動費要因がマイナスとなったが、人件費要因、金融費用要因が利益率を押し上げた。

2.経常利益(季節調整値)は過去最高水準を更新

経常利益を業種別に見ると、製造業は、供給制約の影響を強く受けている輸送用機械が前年比5.5%(1-3月期:同▲11.7%)と3四半期ぶりに増加した。ただし、営業利益は前年比▲57.1%(1-3月期:同▲31.6%)の大幅減少となっており、収益環境は依然として厳しい。その他の業種では、生産用機械(前年比▲9.0%)、食料品(同▲6.4%)は減少したが、石油・石炭(同101.8%)、鉄鋼(同75.3%)、情報通信機械(同29.8%)等が大幅増益となった。

非製造業は、電気業が3四半期連続の赤字(▲281億円)、建設業(前年比▲18.6%)は4四半期連続の減益となったが、卸売・小売業(同51.5%)、情報通信業(同56.1%)、運輸・郵便業(同258.3%)の高い伸びがそれをカバーした。非製造業の中で、コロナ禍の悪影響を大きく受けている業種についてみると、飲食サービス業、生活関連サービス業は1-3月期の赤字から4-6月期には黒字に転じたが、宿泊業は1-3月期に続き赤字となっている。
経常利益(季節調整値)の推移 季節調整済の経常利益は前期比5.5%(1-3月期:同0.6%)と3四半期連続で増加した。製造業(前期比1.6%)、非製造業(同8.1%)ともに増加した。

22年4-6月期の経常利益(季節調整値)は24.6兆円となり、過去最高だった18年4-6月期の23.7兆円を上回った。非製造業はピーク時(19年1-3月期)の水準を下回っているが、製造業の経常利益が9.6兆円となり、これまでのピーク(18年4-6月期の9.4兆円)を上回った。

22年4-6月期は、中国のロックダウンを受けた輸出の減速、原材料価格上昇に伴うコスト増などから、製造業の収益環境は厳しいものとなった。経常利益は増加が続いたものの、受取利息等の大幅増加により大きく押し上げられているため、割り引いてみる必要がある。一方、非製造業は、まん延防止等重点措置の終了を受けて個人消費を中心に国内需要が回復したことが、収益の改善につながった。

先行きについては、海外経済の減速傾向が鮮明となっていることから、輸出による押し上げは当面期待できないが、緊急事態宣言などの行動制限がなければ、個人消費を中心とした国内需要の増加が収益の改善に寄与することが見込まれる。ただし、金融引き締めに伴う米国経済の急減速、ゼロコロナ政策継続による中国経済の下振れ、ウクライナ情勢の深刻化、冬場の電力不足による経済活動の制限、新型コロナウイルス感染拡大時の政策対応の不確実性、など下振れリスクは大きい。

3.設備投資は回復するが、企業の慎重姿勢は変わらず

設備投資(ソフトウェアを含む)は前年比4.6%(1-3月期:同3.0%)と5四半期連続で増加し、前期から伸びを高めた。非製造業が前年比▲0.0%(1-3月期:同1.6%)と小幅ながら5四半期ぶりに減少したが、製造業が前年比13.7%(1-3月期:同5.9%)と伸びが加速した。

季節調整済の設備投資(ソフトウェアを含む)は前期比3.9%(1-3月期:同▲0.0%)と2四半期ぶりに増加した。製造業(1-3月期:前期比2.5%→4-6月期:同7.6%)が3四半期連続、非製造業(1-3月期:前期比▲1.4%→4-6月期:同1.9%)が2四半期ぶりに増加した。

設備投資は増加が続いているが、企業収益に比べると回復ペースは鈍い。企業の設備投資意欲を示す「設備投資/キャッシュフロー比率」は50%台前半と過去最低水準にある。コロナ禍が長期化する中で、原材料価格の高騰、中国のロックダウンなどの悪材料が重なったこともあり、企業は慎重姿勢を強めている。
設備投資(ソフトウェアを含む)の推移/設備投資とキャッシュフローの関係

4.4-6月期・GDP2次速報は上方修正を予想

本日の法人企業統計の結果等を受けて、9/8公表予定の22年4-6月期GDP2次速報では、実質GDPが前期比0.7%(前期比年率3.0%)となり、1次速報の前期比0.5%(前期比年率2.2%)から上方修正されるだろう。

設備投資は1次速報の前期比1.4%から同2.1%へと上方修正されると予想する。

設備投資の需要側推計に用いられる法人企業統計の設備投資(ソフトウェアを除く)は前年比3.5%(1-3月期:同5.0%)と5四半期連続で増加した。法人企業統計ではサンプル替えや四半期毎の回答企業の差によって断層が生じるが、当研究所でこの影響を調整したところ前年比3%台となり、公表値と同程度の伸びとなった。また、金融保険業の設備投資(ソフトウェアを除く)は前年比▲10.5%(1-3月期:同▲12.1%)と4四半期連続で前年比二桁の大幅減少となった。1次速報段階では、設備投資の需要側推計値は前年比▲1.0%となっていた。本日の法人企業統計の結果は設備投資の上方修正要因と考えられる。

また、民間在庫変動は1次速報で仮置きとなっていた原材料在庫、仕掛品在庫に法人企業統計の結果が反映され、1次速報の前期比・寄与度▲0.4%から同▲0.3%へと上方修正されるだろう。

その他の需要項目では、公的固定資本形成は6月の建設総合統計の結果が反映され、前期比0.9%から同1.7%へ上方修正されると予想する。
2022年4-6月期GDP2次速報の予測
 
 

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経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎 (さいとう たろう)

研究・専門分野
日本経済、雇用

(2022年09月01日「経済・金融フラッシュ」)

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