2022年08月30日

雇用関連統計22年7月-労働需給の改善が続くが、休業者の増加は懸念材料

経済研究部 経済調査部長 斎藤 太郎

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1.失業率は前月から横ばいの2.6%

完全失業率と就業者の推移 総務省が8月30日に公表した労働力調査によると、22年7月の完全失業率は前月から横ばいの2.6%(QUICK集計・事前予想:2.6%、当社予想も2.6%)となった。

労働力人口が前月から▲4万人の減少となる中、就業者が前月から▲2万人減少し、失業者は前月から▲4万人減の176万人(いずれも季節調整値)となった。
産業別・就業者数の推移/雇用形態別雇用者数
就業者数は前年差▲2万人減(6月:同21万人増)と4ヵ月ぶりに減少した。産業別には、宿泊・飲食サービスが前年差3万人増(6月:同▲5万人減)と3ヵ月ぶりに増加し、生活関連サービス・娯楽が前年差12万人増(6月:同3万人増)と増加幅が拡大したが、製造業(前年差▲17万人減)、卸売・小売(同▲33万人減)の減少が続き、医療・福祉が前年差12万人増(6月:同30万人増)と増加幅が縮小した。

雇用者数(役員を除く)は前年に比べ16万人増(6月:同13万人増)と5ヵ月連続で増加した。雇用形態別にみると、非正規の職員・従業員数が前年差32万人増(6月:同18万人増)と6ヵ月連続で増加したが、正規の職員・従業員数が前年差▲17万人減(6月:同▲5万人減)と2ヵ月連続で減少した。6月に続き、前年同月と比べ正規が減少、非正規が増加したが、コロナ禍前の19年同月と比べると、正規の職員・従業員が65万人増となっているのに対し、非正規の職員・従業員は▲74万人減となっている。

2.医療・福祉の休業率が急上昇

医療・福祉の休業率が急上昇 休業者数は258万人となり、前年に比べて44万人の増加(6月:同▲27万人減)、休業率(休業者/就業者)は6月の2.3%から3.8%へと上昇した。

産業別には、医療・福祉が前年差19万人増の44万人となり、休業率は6月の2.7%から5.0%へと急上昇した(休業率は原数値)。

新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、陽性者及び濃厚接触者となり休業を余儀なくされた医療従事者が急増している可能性がある。

3.有効求人倍率の改善が続く

有効求人倍率の推移 厚生労働省が8月30日に公表した一般職業紹介状況によると、22年7月の有効求人倍率は前月から0.02ポイント上昇の1.29倍(QUICK集計・事前予想:1.27倍、当社予想は1.28倍)と、7ヵ月連続で上昇した。有効求職者数が前月比▲1.2%の減少となる一方、有効求人数が前月比0.8%と5ヵ月連続で増加した。

有効求人倍率の先行指標である新規求人倍率は前月から0.16ポイント上昇の2.40倍となった。新規求人数が前月比▲1.7%と4ヵ月ぶりに減少し、新規求職申込件数が前月比▲3.6%の大幅減少となる一方、新規求人数が同3.1%の大幅増加となった。
 
失業率は横ばい圏の動きが続いているが、労働市場の需給関係を反映する有効求人倍率は、企業の人手不足感の高さを背景に急回復し、新規求人倍率はコロナ禍前の19年12月(2.41倍)以来の高水準となっている。

7月以降、新型コロナウイルスの感染が急拡大しているが、政府が特別な行動制限を実施していないこともあり、雇用情勢の改善傾向は維持されている。ただし、陽性者、濃厚接触者の急増に伴う休業者の増加が人手不足の深刻化につながる可能性には注意が必要だ。
 
 

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斎藤 太郎 (さいとう たろう)

研究・専門分野
日本経済、雇用

(2022年08月30日「経済・金融フラッシュ」)

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