2022年08月31日

株式としてみたJ-REIT投資。その資産特性を考える~「高配当利回り」、「安定配当」、「低β」の特性に着目したJ-REIT投資~

金融研究部 不動産調査室長 岩佐 浩人

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株式としてみたJ-REITの価格変動。TOIX33業種との比較で、「値」・「β値」が低い
次に、株式としてみたJ-REITの価格変動の特性を確認する。図表―9「左グラフ」は、横軸がTOPIXの月次リターン、縦軸がJ-REITの月次リターンで、両者の関係性(R²値、β値)を表わしている。「R²(決定係数)」は0から1の値をとり、1に近いほど回帰式の説明力が高く、株式市場との連動性が高いことを示す。また、「β値」は回帰式の傾きのことで、「β値」が大きい(小さい)ほど、株式市場に対する感応度が高い(低い)傾向にあることを示す。これによると、J-REITの「R²値」は0.31で、リターンの約3割が株式市場のリターンで説明されることになる。また、「β値」は0.59で、J-REITは株式市場の値動きに対する感応度が低い、「低β株」の特性を確認できる。同様に、図表―9「右グラフ」は、TOPIXと「不動産」のリターンの関係性を表わしている。これによると、「不動産」の「R²値」は0.66で、株式市場との連動性がJ-REITより高いことが分かる。また、「β値」は1.34で、「不動産」は株式市場の値動きに対する感応度が高い、「高β株」の特性を確認できる。このように、J-REITと「不動産」は業種としては同じグループに属するものの、価格変動の特性は大きく異なるようだ。
図表-9 J-REITと不動産の「R²値」と「β値」
また、TOPIX33業種との比較では、J-REITの「R²値」は「電気・ガス」・「空運」に次いで3番目に低く、「β値」については「電気・ガス」に次いで2番目に低い水準にある(図表―10、11)。したがって、株式としてみたJ-REITの値動きは、株式市場との連動性や感応度が低い「電気・ガス」などの、いわゆる「公共株」に近い特性があると言える。

一般に、株式市場の下落を予想する局面では、株式のウェイトを維持しつつ、「低β株」への投資を増やすことで株式ポートのディフェンシブ性を高める運用戦略(低β戦略)が考えらえる。「低β株」の投資先候補にJ-REITを加えることで、運用戦略の選択肢が広がることになりそうだ。
図表-10 業種別の「R²値」(TOPIX33業種+J-REIT)/図表-11 業種別の「β値」(TOPIX33業種+J-REIT)

4――おわりに

4――おわりに

本稿では、株式としてみたJ-REITの資産特性を確認し、個人株主にとってのJ-REIT投資の意義について考察した。「高配当利回り」・「安定配当」・「低β」の特性を持つJ-REITへの投資を通じて、インカム収入の拡大や安定性向上、運用戦略の広がりが期待できそうだ。

ただし、株式ポートにおけるJ-REIT比率の拡大には注意を払いたい。J-REITは「配当成長力」の面で株式に見劣るため、J-REITへの過剰投資は株式ポートの成長期待を損ない、本来のリスク・リターン特性から、かい離してしまう恐れがある。したがって、J-REIT投資を拡大する場合は、国内株の枠ではなく、独立したアセットクラス、もしくは不動産として位置付けることが望ましいと思われる。今後とも、長期の資産形成やリタイア後のインカム収入確保に適したJ-REIT投資が、個人投資家の間でさらに普及することを期待したい。
 
 

(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。

(2022年08月31日「基礎研レポート」)

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金融研究部   不動産調査室長

岩佐 浩人 (いわさ ひろと)

研究・専門分野
不動産市場・投資分析

経歴
  • 【職歴】
     1993年 日本生命保険相互会社入社
     2005年 ニッセイ基礎研究所
     2019年4月より現職

    【加入団体等】
     ・一般社団法人不動産証券化協会認定マスター
     ・日本証券アナリスト協会検定会員

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