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株式としてみたJ-REIT投資。その資産特性を考える~「高配当利回り」、「安定配当」、「低β」の特性に着目したJ-REIT投資~

金融研究部 不動産調査室長 岩佐 浩人
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次に、株式としてみたJ-REITの価格変動の特性を確認する。図表―9「左グラフ」は、横軸がTOPIXの月次リターン、縦軸がJ-REITの月次リターンで、両者の関係性(R²値、β値)を表わしている。「R²(決定係数)」は0から1の値をとり、1に近いほど回帰式の説明力が高く、株式市場との連動性が高いことを示す。また、「β値」は回帰式の傾きのことで、「β値」が大きい(小さい)ほど、株式市場に対する感応度が高い(低い)傾向にあることを示す。これによると、J-REITの「R²値」は0.31で、リターンの約3割が株式市場のリターンで説明されることになる。また、「β値」は0.59で、J-REITは株式市場の値動きに対する感応度が低い、「低β株」の特性を確認できる。同様に、図表―9「右グラフ」は、TOPIXと「不動産」のリターンの関係性を表わしている。これによると、「不動産」の「R²値」は0.66で、株式市場との連動性がJ-REITより高いことが分かる。また、「β値」は1.34で、「不動産」は株式市場の値動きに対する感応度が高い、「高β株」の特性を確認できる。このように、J-REITと「不動産」は業種としては同じグループに属するものの、価格変動の特性は大きく異なるようだ。
一般に、株式市場の下落を予想する局面では、株式のウェイトを維持しつつ、「低β株」への投資を増やすことで株式ポートのディフェンシブ性を高める運用戦略(低β戦略)が考えらえる。「低β株」の投資先候補にJ-REITを加えることで、運用戦略の選択肢が広がることになりそうだ。
4――おわりに
ただし、株式ポートにおけるJ-REIT比率の拡大には注意を払いたい。J-REITは「配当成長力」の面で株式に見劣るため、J-REITへの過剰投資は株式ポートの成長期待を損ない、本来のリスク・リターン特性から、かい離してしまう恐れがある。したがって、J-REIT投資を拡大する場合は、国内株の枠ではなく、独立したアセットクラス、もしくは不動産として位置付けることが望ましいと思われる。今後とも、長期の資産形成やリタイア後のインカム収入確保に適したJ-REIT投資が、個人投資家の間でさらに普及することを期待したい。
(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
(2022年08月31日「基礎研レポート」)

03-3512-1858
- 【職歴】
1993年 日本生命保険相互会社入社
2005年 ニッセイ基礎研究所
2019年4月より現職
【加入団体等】
・一般社団法人不動産証券化協会認定マスター
・日本証券アナリスト協会検定会員
岩佐 浩人のレポート
日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
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