- シンクタンクならニッセイ基礎研究所 >
- 不動産 >
- REIT(リート) >
- 今年上期のJリート市場は▲4.8%下落。14年ぶりの行政処分勧告も~スポンサー取引における忠実義務違反は、市場に迷い込んだネズミか、それともゾウか?
今年上期のJリート市場は▲4.8%下落。14年ぶりの行政処分勧告も~スポンサー取引における忠実義務違反は、市場に迷い込んだネズミか、それともゾウか?
金融研究部 不動産調査室長 岩佐 浩人
このレポートの関連カテゴリ
勧告の理由は、スポンサーからの物件取得に際して、鑑定評価額がスポンサーの売却希望価格を上回るよう、鑑定評価会社に働きかけを行ったこと等3である(図表2)。同様の事例は、ファンドバブルと呼ばれた2008年にも起きており、Jリートに関連する行政処分勧告は14年ぶりのことである。もし事実であれば、運用を外部に委託するJリート制度(外部運用制度)の根幹を揺るがす不適切な取引であり、前回時の深い反省と再発防止に向けた内部管理態勢強化のもと、信認回復と規律向上に取り組んできた市場関係者並びに投資家を冒涜する背信行為だと言えよう。
米国では、「部屋の中のゾウ(Elephant in the room)」という慣用句がある。「事の重大性に気付いているにも関わらず、あえて触れようとしない問題」の例えだそうだ。今回の事案が市場に迷い込んだ1匹のネズミの仕業ならば、部屋から追い払えば問題ない。しかし、部屋の中のゾウであるならば、Jリート市場が抱える潜在的な利益相反問題について、あらためてしっかりと向き合わなければならない。
Jリート市場の創設から20年以上が経過し、運用資産額が24兆円を超えて成熟期を迎えつつあるなか、現在の外部運用制度や鑑定評価の位置づけなどについて、いま一度オープンに議論をしても良い時期かもしれない。
1 6月末時点の分配金利回りは3.7%、10年国債利回りに対するイールドスプレッドは3.5%である。
2 配当込みの東証REIT指数は▲3.0%となった。
3 あわせて、最も高い概算額を提示した鑑定評価会社への鑑定報酬が、他の鑑定評価会社と比べて最安値になるよう交渉し、鑑定報酬が最安値であることを理由に鑑定評価の依頼先として選定した。
(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
(2022年07月05日「研究員の眼」)
このレポートの関連カテゴリ
03-3512-1858
- 【職歴】
1993年 日本生命保険相互会社入社
2005年 ニッセイ基礎研究所
2019年4月より現職
【加入団体等】
・一般社団法人不動産証券化協会認定マスター
・日本証券アナリスト協会検定会員
岩佐 浩人のレポート
日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
---|---|---|---|
2025/01/24 | Jリート市場回復の処方箋 | 岩佐 浩人 | 研究員の眼 |
2024/12/04 | Jリートの不動産運用で問われる「インフレ対応力」 | 岩佐 浩人 | ニッセイ年金ストラテジー |
2024/10/07 | J-REIT市場動向(2024年9月末)~オフィスセクターに光差すも、バリュエーションは依然として割安な水準~ | 岩佐 浩人 | 研究員の眼 |
2024/07/04 | 今年上期のJリート市場は▲4.6%下落。金利動向を睨んで投資家は様子見姿勢を継続~金融政策正常化に伴う金利上昇の影響は第2幕へ | 岩佐 浩人 | 研究員の眼 |
公式SNSアカウント
新着レポートを随時お届け!日々の情報収集にぜひご活用ください。
新着記事
-
2025年01月24日
トランプ2.0とユーロ-ユーロ制度のバージョンアップも課題に -
2025年01月24日
地方創生2.0とサステナビリティ~地方創生SDGs推進に向けて重要度が高まる「データ利活用」 -
2025年01月24日
保険・年金基金の金融安定性(欧州2024.12)-EIOPAの報告書の紹介 -
2025年01月24日
Jリート市場回復の処方箋 -
2025年01月24日
第三者委員会とは-内部調査委員会との相違
レポート紹介
-
研究領域
-
経済
-
金融・為替
-
資産運用・資産形成
-
年金
-
社会保障制度
-
保険
-
不動産
-
経営・ビジネス
-
暮らし
-
ジェロントロジー(高齢社会総合研究)
-
医療・介護・健康・ヘルスケア
-
政策提言
-
-
注目テーマ・キーワード
-
統計・指標・重要イベント
-
媒体
- アクセスランキング
お知らせ
-
2024年11月27日
News Release
-
2024年07月01日
News Release
-
2024年04月02日
News Release
【今年上期のJリート市場は▲4.8%下落。14年ぶりの行政処分勧告も~スポンサー取引における忠実義務違反は、市場に迷い込んだネズミか、それともゾウか?】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。
今年上期のJリート市場は▲4.8%下落。14年ぶりの行政処分勧告も~スポンサー取引における忠実義務違反は、市場に迷い込んだネズミか、それともゾウか?のレポート Topへ