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株式としてみたJ-REIT投資。その資産特性を考える~「高配当利回り」、「安定配当」、「低β」の特性に着目したJ-REIT投資~
金融研究部 不動産調査室長 岩佐 浩人
1――J-REITの個人投資主数は伸び悩み。金額ベースの保有比率は7年間で▲2.5%低下
しかし、J-REITを保有する個人(以下、個人投資主)の数は伸び悩んでいる。日本取引所グループの「REIT投資主情報調査(2022年2月)」によると、個人投資主数(延べ人数)1は前年比▲2.8万人減少の84.8万人、金額ベースの保有比率は前年比▲0.6%低下の7.2%となった(図表―1)。直近7年間の推移をみると、個人投資主数は市場拡大にあわせて1.6倍(年率+7%)に増加したものの足もとで頭打ちとなり、保有比率はこの間▲2.5%低下(9.7%→7.2%)した。
その普及に向けたアプローチ先の1つに、1,400万人3を超える個人株主が考えられる。実際、J-REITと株式は取引方法や情報開示の面で共通点が多く(図表―2)、今ある証券口座を利用できるためJ-REIT投資のハードルは極めて低い。仮に、個人株主の20人に1人(約70万人)が新たにJ-REITの投資主になれば、その数は倍増する見込みである。
そこで、本稿では、株式としてみたJ-REITの資産特性を確認し、個人株主にとってのJ-REIT投資の意義について考えたい。
1 各REITの投資主数を単純に合算した「延べ人数」ベース。したがって、1人当たりの平均保有銘柄数が2社の場合、実際の投資主数は42.4万人、4社の場合、実際の投資主数は21.2万人となる。
2 「2021年度株式分布状況調査」(日本取引所グループ、2022年7月7日)、「暗号資産取引についての年間報告2020年度」(日本暗号資産取引業協会、令和3年11月19日)
3 日本経済新聞(2022年7月8日、朝刊)
2――海外投資家は株式ポートにREITを組み入れ。GPIFは日本株の枠内でJ-REIT投資を開始
一方、日本株の代表的指数である東証株価指数(TOPIX)や日経平均株価にはJ-REITが採用されておらず、株式として位置付けられていない状況にある。しかし、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)は国内株のベンチマーク多様化の一環としてJ-REITを含む株式指数を採用し、2014年より国内株ポートフォリオの枠内でJ-REIT投資を開始した。現在、GPIFによるJ-REIT保有額は約1,782億円で、国内株ポートフォリオに占める割合は0.4%である(3月末時点)。もちろん、時価総額対比でみたJ-REITのウェイトは2.3%で(図表―3)、この比率からすればGPIFの投資額はまだまだ小さい規模だと言える。しかし、GPIFが投資実績を重ねることで、国内でもJ-REITを株式として扱うことへの抵抗感は和らぎつつある。
4 J-REIT市場における海外法人等の保有比率は25.1%である。(2022年2月末時点)
3――株式としてみたJ-REIT投資。J-REITは、「高配当利回り」・「安定配当」・「低β」の特性
まず、J-REITの特性として、「高い配当利回り」が挙げられる。過去19年間5のJ-REITの平均配当利回りは4.2%で、国内株と比べて常に高い水準で推移し、両者の利回り格差は平均2.4%である(図表―4)。また、TOPIX33業種と比較しても、J-REITは最も高い「石油・石炭製品(2.9%)」を1.3%上回り、頭1つ抜けた水準にある(図表―5)。3月末時点の配当利回りは3.7%、国内株との利回り格差は1.6%で、現在の水準は過去平均と比べてやや低いものの、配当利回りの高さは引き続きJ-REIT投資の魅力の1つであろう。
5 期間は、東証REIT指数の算出が開始された2003年3月末から2022年3月末とした。
6 利益超過分配(減価償却費の一部を資本の払い戻しとして分配)やこれまでの内部留保の取り崩しなどを実施するJ-REITが増加し、2021年度の配当性向は100%を超える。
7 内部留保を事業に再投資することで期待される成長のこと。「サスティナブル成長率=ROE×内部留保率」となる。
(2022年08月31日「基礎研レポート」)
03-3512-1858
- 【職歴】
1993年 日本生命保険相互会社入社
2005年 ニッセイ基礎研究所
2019年4月より現職
【加入団体等】
・一般社団法人不動産証券化協会認定マスター
・日本証券アナリスト協会検定会員
岩佐 浩人のレポート
日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
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