2022年08月05日

インドネシア経済:22年4-6月期の成長率は前年同期比+5.44%~5期連続のプラス成長、消費と輸出が堅調に拡大

経済研究部 准主任研究員   斉藤 誠

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インドネシアの2022年4-6月期の実質GDP成長率1は前年同期比(原系列)5.44%増(前期:同5.01%増)と上昇し、市場予想2(同+5.17%)を上回る結果となった。

4-6月期の実質GDPを需要項目別に見ると、消費と輸出の拡大が成長の牽引役となった(図表1)。

民間消費(対家計民間非営利団体含む)は前年同期比5.50%増(前期:同4.37%増)と伸びが加速した。費目別に見ると、輸送・通信(同9.68%増)とホテル・レストラン(同6.61%増)が好調だったほか、食料・飲料(同4.09%増)や住宅設備(同3.31%増)、保健・教育(同4.27%増)も改善した。

政府消費は前年同期比5.24%減(前期:同7.59%減)となり、2四半期連続で減少した。
総固定資本形成は前年同期比3.07%増(前期:同4.09%増)と、伸びが鈍化した。機械・設備(同16.30%増)が5四半期連続の二桁増となったが、建設投資(同0.92%増)が伸び悩んだ。

純輸出は成長率寄与度が+2.14%ポイントとなり、前期の+0.77%ポイントから拡大した。まず財・サービス輸出は前年同期比19.74%増(前期:同16.69%増)と大幅な伸びが続いた。輸出の内訳を見ると、財輸出(同18.03%増)とサービス輸出(同60.02%増)がそれぞれ好調だった。また財・サービス輸入も同12.34%増(前期:同15.87%増)と二桁増となったが、輸出の伸びを下回った。
(図表1)インドネシア実質GDP成長率(需要側)/(図表2)インドネシア 実質GDP成長率(供給側)
供給項目別に見ると、主に第三次産業の拡大が成長の牽引役となった(図表2)。

第三次産業は前年同期比5.71%増(前期:同5.30%増)となり、伸びが加速した。内訳を見ると、運輸・倉庫(同12.88%増)やホテル・レストラン(同9.76%増)、ビジネスサービス(同7.92%増)、情報・通信(同7.14%増)、保健衛生・社会事業(同6.45%増)が堅調に拡大し、また構成割合の大きい卸売・小売(同5.37%増)が底堅い伸びを保った。一方、行政・国防(同1.73%減)と教育サービス(同1.15%減)は減少、金融・不動産(同1.77%増)は伸び悩んだ。

第二次産業は前年同期比3.41%増(前期:同4.82%増)と増勢が鈍化した。内訳を見ると、電気・ガス・水供給業(同8.93%増)と鉱業(同4.01%増)が改善したものの、構成割合の大きい製造業(同4.01%増)と建設業(同1.02%増)の伸び率が低下した。

第一次産業は前年同期比1.37%増(前期:同1.19%増)と小幅に上昇した。
 
1 2022年8月5日、インドネシア統計局(BPS)が2022年4-6月期の国内総生産(GDP)を公表した。
2 Bloomberg調査

4-6月期GDPの評価と先行きのポイント

インドネシア経済は新型コロナウイルスの世界的な感染拡大を背景に2020年に経済が停滞して、実質GDP成長率が前年比▲2.07%と減少したが、昨年4-6月期以降は経済活動の再開や前年同期の落ち込みからの反動増(ベース効果)によりプラス成長が続き、21年の成長率が前年比+3.69%と上昇した。そして今年の成長率は1-3月期が前年同期比5.01%増、今回発表された4-6月期が同5.51%増となり、堅調な伸びが続いている。4-6月期は新型コロナの感染改善に伴う活動制限の緩和による消費の回復や外需の拡大を受けて景気が回復した。

インドネシアでは今年初にオミクロン株到来による第3波が生じて、新規感染者数が2月に一時5万人台を突破したが、その後感染状況は急速に改善、4-6月は平均800人台で推移した(図表3)。このため、政府は新型コロナ対策の活動制限(PPKM)についてジャワ・バリ両島のリスク区分を今年2月には一時「レベル3」(4段階のうち上から2番目に高い)に引き上げていたが、4-6月は「レベル1~2」まで引き下げた。従って、4-6月期は新型コロナの感染状況の改善に伴い人流が回復した。実際に小売・娯楽関連施設への移動量をみると、4-6月平均はコロナ前と比べて13.2%増となり、1-3月平均の同6.4%増から改善した(図表4)。また、このように感染状況が落ち着いたなかでイスラム教の断食月から断食明け大祭にかけた期間(4月上旬~5月上旬)の消費需要が大きく伸長したことも成長率上昇に繋がったとみられる。4-6月期の民間消費は前年同期比5.51%増(前期:同4.34%増)と上昇した。

また輸出は引き続き好調だった。インドネシア政府は国内供給量の確保を目的として4月下旬から1カ月近くの間、食用油・同原料の禁輸措置を実施したことは輸出を下押ししたものの、4-6月期の財輸出(同18.03%増)は二桁成長を保った。資源輸出国のインドネシアにとってコモディティーブームが引き続き輸出の追い風となっている。

インドネシアの足元の新規感染者数は1日5000人程度まで増加するなど感染リスクはやや高まりつつあるが、現在のところ活動制限が厳格化されるほどには感染状況は悪化していない。今後も新型コロナウイルスワクチンの更なる普及などにより、当面は感染が抑制された状況が続くものとみられる。こうして企業・消費者マインドの改善や雇用情勢の改善を通じて内需の回復が続くだろう。しかし、7月の消費者物価上昇率は+4.9%まで上昇するなど今後はインフレの加速が消費者の購買力に悪影響を及ぼす恐れがある。また足元のインフレ率の上昇と国内経済の回復を背景にインドネシア中銀が金融緩和策の縮小に舵を切りつつあるほか、世界的な景気後退リスクなどの逆風も吹き始めている。4-6月期のGDP統計はインドネシア経済のコロナ禍からの回復が確認できる結果となったが、こうした不確実要素が今後の同国経済の回復を妨げるリスクに注意する必要があるだろう。
(図表3)インドネシアの新規感染者数の推移/(図表4)小売・娯楽施設への移動量
 
 

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経済研究部   准主任研究員

斉藤 誠 (さいとう まこと)

研究・専門分野
東南アジア経済、インド経済

(2022年08月05日「経済・金融フラッシュ」)

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