2022年08月03日

世界的な住宅価格の高騰は今後も続くのか?

金融研究部 主任研究員   佐久間 誠

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コロナ禍は世界の主要先進国で住宅価格の高騰をもたらした。図表1は、コロナ禍の前後2年間における住宅価格の変化率を示している。いずれの国も住宅価格の上昇が加速しており、直近の上昇率は、高い順に、米国(30.8%)>カナダ(25.7%)>ドイツ(21.9%)>英国(17.1%)>フランス(13.9%)>日本(8.7%)>イタリア(5.7%)となっている。こうした価格高騰の要因として、(1)金融緩和、(2)在宅勤務の拡大、(3)インフレが挙げられるが、世界情勢が不安定化するなか、これら3つの要因にも変化が生じている。
図表1:主要先進国の住宅価格変化率
まず、(1)金融緩和について、コロナ禍を受けて各先進国の中央銀行が大規模緩和を進めた結果、金利低下と過剰流動性が住宅価格を押し上げてきた。しかし、2022年に入り、欧米の中央銀行は金融引き締めに転じている。米国では、3月に25bp、5月に50bp、6月に75bpの利上げを実施し、7月以降も大幅な利上げが予想されている。住宅ローン金利(30年固定)は2021年12月の3.1%から6月には5.8%まで上昇した。そして、2022年5月の中古住宅販売件数が前月比で4カ月連続減少し、約2年ぶりの低水準となるなど販売鈍化の兆しもみられる。英国とカナダも政策金利の引き上げを既に開始し、欧州中央銀行も追随する方針を発表するなか、金融緩和の終焉により住宅価格がピークアウトする可能性がある。
 
次に、(2)在宅勤務の拡大について、住環境の改善や広い居住空間へのニーズが住宅価格を押し上げてきた。米国の研究では、住宅価格の上昇(2019年12月~2021年11月に+23.8%)のうち、半分以上が在宅勤務へのシフトに伴う需要増加によると分析している1。しかし、米国では新型コロナウイルスのパンデミックからエンデミックへの移行が進む。米国の飛行機旅客者数(7/13時点)はコロナ禍前の2019年対比で▲13%、レストラン予約者数は▲5%と、コロナ禍で急減した旅行や外食需要はコロナ前の水準近くまで回復している(図表2)。また、オフィス出社率についても感染拡大前比▲56%と緩やかではあるが上昇している(7/13の週)。今後は、オフィスと在宅勤務を組み合わせたハイブリッドな働き方が主流になるとの見方が一般的であり、在宅勤務の拡大による住宅需要増加は一巡した可能性がある。
 
一方、(3)インフレについては、コスト転嫁による住宅価格への上昇圧力が続く見通しだ。コロナ禍ではサプライチェーンの混乱による供給制約が広がり原材料価格が上昇した。例えば、木材先物価格はコロナ禍前の4倍超に高騰し、日本でもいわゆる「ウッドショック」として話題になった。その後、供給制約が解消に向かい原材料価格も落ち着きつつあったが、ロシアによるウクライナ侵攻以降、原油など資源価格が急騰し再びインフレの勢いが増している。また、人件費の上昇圧力も根強い。「The Great Resignation(大離職時代)」と呼ばれるように、米国などではコロナ禍で従業員の退職が増加し、人手不足が深刻化している。企業は、従業員のつなぎ止めや新規採用のため賃金を引き上げており人件費が増加している。インフレの沈静化には時間を要する見込みであり、インフレが住宅価格を下支えする可能性がある。
 
2022年に入り、先進国を中心に各国で経済正常化が進むなか、中央銀行の金融引き締めやウクライナ侵攻など、住宅市場を取り巻く環境は大きく変化している。住宅価格の過熱感も指摘されるなか、住宅市場の先行きを注視する必要がありそうだ。
図表2:米国のレストラン予約数と飛行機旅客者数、オフィス出社率の推移
 
1 Mondragon, John and Wieland, Johannes, Housing Demand and Remote Work (May 2022). NBER Working Paper No. w30041, Available at SSRN: https://ssrn.com/abstract=411074
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金融研究部   主任研究員

佐久間 誠 (さくま まこと)

研究・専門分野
不動産市場、金融市場、不動産テック

(2022年08月03日「ニッセイ年金ストラテジー」)

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