2022年04月22日

商業施設売上高の長期予測(2)-少子高齢化・EC市場拡大・コロナ禍による消費行動の変容が商業施設売上高に及ぼす影響

金融研究部 主任研究員 佐久間 誠

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■要旨
 
  • 本稿では、(1)少子高齢化、(2)EC市場拡大、(3)コロナ禍による消費行動の変容、の3点に注目し、複数のシナリオのもと、2040年までの商業施設売上高を、シミュレーションした。
     
  • 商業施設売上高は、2019年を100とすると、2030年に87.5~94.3、2040年に77.3~85.8となる見通しである。今後、コロナ禍が収束に向かったとしても、少子高齢化とEC市場拡大の影響が本格化することで、下押し圧力が継続もしくは強まっていく。
     
  • 2019年から2040年までの変化を要因分解すると、少子高齢化が▲7.5%、EC市場拡大が▲10.5%~▲6.5%、コロナ禍による影響が▲4.7%~▲0.2%の寄与となる。コロナ禍は商業施設の売上に多大な影響を及ぼしたが、今後20年の長期的な観点では、少子高齢化やEC市場拡大の影響がより重要である。
     
  • ポストコロナの消費者像がどのような姿になるかによって、旅行サービスや外食といったコト消費のほか、モノ消費においても被服・靴や家電などの品目では、売上環境が大きく変化する可能性がある。コロナ禍収束の見通しが立ち難いなか、これらの品目は先行きの不確実性が高いと言える。


■目次

1――商業施設はコロナ禍の不確実性に加え、少子高齢化とEC市場拡大が逆風に
2――少子高齢化の商業施設売上高への影響
  1|将来の人口・世帯数の推移
  2|単身世帯増加による物販・外食・サービス支出への影響
  3|高齢化による物販・外食・サービス支出への影響
3――EC市場拡大による商業施設売上高への影響
  1|EC市場拡大の動向
4――商業施設の売上環境のシミュレーション手法とシナリオ設定
  1|シミュレーション手法
  2|コロナ禍による消費行動の変容に関するシナリオ設定
5――2040年までの商業施設の売上環境のシミュレーション結果
  1|物販・外食・サービス支出の見通し
  2|商業施設売上高の見通し
  3|可処分所得が増加した場合の商業施設売上高の見通し
6――長期的な下押し圧力のなか、運営力強化と投資対象の選別が求められる
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金融研究部   主任研究員

佐久間 誠 (さくま まこと)

研究・専門分野
不動産市場、金融市場、不動産テック

経歴
  • 【職歴】  2006年4月 住友信託銀行(現 三井住友信託銀行)  2013年10月 国際石油開発帝石(現 INPEX)  2015年9月 ニッセイ基礎研究所  2019年1月 ラサール不動産投資顧問  2020年5月 ニッセイ基礎研究所  2022年7月より現職 【加入団体等】  ・一般社団法人不動産証券化協会認定マスター  ・日本証券アナリスト協会検定会員

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