2022年08月03日

改正が進むDC制度の更なる普及拡大に向けて

金融研究部 企業年金調査室長 年金総合リサーチセンター・ジェロントロジー推進室兼任   梅内 俊樹

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長期化する高齢期の所得環境の充実を図ることを目的とする年金制度改正法が2020年に成立した。これに基づき、確定拠出年金(以下、DC)の制度改正が順次、施行されている。主なものとして、まず2020年10月には、中小企業向け制度である「簡易型DC」や「中小事業主掛金納付制度(イデコプラス)」の適用対象が、従業員100人以下から300人以下の企業に拡大されている。
 
今年に入ってからは、4月に企業型DCやイデコの受給開始時期の上限年齢が従来の70歳から75歳に引き上げられたほか、5月にはDCの加入可能年齢が見直され、企業型DCは最大で69歳まで、イデコは最大で64歳まで加入できるように改正されている。
 
そして今後は、2022年10月に企業型DC加入者のイデコ加入要件が緩和され、企業型DC加入者は原則としてイデコに加入できるようになる。更に2024年12月からはDB等の企業型DC以外の制度に加入する者の企業型DCやイデコの拠出限度額が見直され、DB等の加入者の多くにとって企業型DCやイデコの拠出限度額が引き上げられることになる(図表1)。
図表1 民間会社員・公務員のDC拠出限度額にかかわる制度改正
2020年以降の一連の改正を通じて、より長く加入して掛金を積み立て、より長く運用して積立金を増やすことができるようになる。図表1からも一目瞭然であるように、企業型DCやイデコの拠出限度額が一本化されることで分かり難さが緩和され、公平性が確保されやすくなる。時価残高や加入者数がともに着実に増加する確定拠出年金の更なる拡大に資することは間違いなく、人生100年時代に向けた対応は前進することになる。
 
それでもDC制度を巡っては検討すべき課題がいくつか指摘されている。その一つに、企業年金に加入していない民間会社員に対する支援がある。企業年金の実施率は企業規模が小さいほど低いことを勘案すると、特に中小企業あるいは、その会社員向けサポートの重要性は高い。
 
中小企業向けの対応という点では、2020年10月に中小企業向け制度の適用対象が拡大されたことは一定の支援となることは間違いない。しかし、設立手続きを簡素化する「簡易型DC」は普及が進んでおらず、イデコに加入する従業員に企業が掛金を上乗せできる「イデコプラス」についても加入者数は数万人程度に留まっている。中小企業向け制度によってカバーされる範囲は限られそうで、過度な期待はできそうにない。
 
自助努力にかかわる支援という点では、企業年金に加入していない会社員については、イデコの拠出限度額が月額2.3万円と、企業年金に加入する会社員に比べ高めに設定されていることが挙げられる。しかし、以下のような調査を踏まえると支援として十分とは言えない面もある。
 
昨年、金融庁が公表した「リスク性金融商品販売に係る顧客意識調査結果」によれば、投資未経験者が資産運用を行わない理由(複数回答)として最も回答が多かったのは「余裕資金が無いから」の56.7%で、「資産運用の知識がないから」の40.4%や「購入・保有することに不安を感じるから」の26.3%を上回っている。
 
また、金融広報中央委員会の「家計の金融行動に関する世論調査(令和3年)」によれば、2021年時点で金融資産を保有していない単身世帯は全体の3割強存在し、総世帯でも全体の4分の1の世帯が金融資産を保有していない。こうした調査結果は、企業年金に加入していない民間会社員と完全に重なるわけではないが、中小企業の会社員を中心とする実情の一端が示されている可能性は否定できない。
 
岸田政権は「経済財政運営と改革の基本方針2022」の中で、人への投資の一環として「資産所得倍増プラン」を年末に策定する方針を示し、その際に、NISAの拡充やDCの制度改正といった税制優遇制度の見直しのほか、金融リテラシーの向上や資産形成を側面から支援する環境整備に取り組むことを明らかにしている。
 
いずれも「貯蓄から投資」の推進にあたって取り組むべき重要な課題であるが、資産形成の裾野を拡げるという観点からは、更なる環境整備も必要だろう。2017年に全ての国民向けの制度へと生まれ変わったDC制度が、真に広く国民に利用される制度となるように、年金制度の枠を超えた環境整備が期待される。
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金融研究部   企業年金調査室長 年金総合リサーチセンター・ジェロントロジー推進室兼任

梅内 俊樹 (うめうち としき)

研究・専門分野
企業年金、年金運用、リスク管理

(2022年08月03日「ニッセイ年金ストラテジー」)

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