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老後のための資産形成で、いつどのようにリスクを落としたら良いのか?-DC、つみたてNISAの終わり方、ターゲットデート型とは何か

金融研究部 熊 紫云
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1――はじめに
老後のための資産形成では、残された投資期間が長い若い人は積極的にリターンを狙うべきである。外国株式型など中長期的リターンが高いと言われる資産に投資する運用商品(以下、株型商品)を長期保有すると、実際、最終的な運用成果が良い傾向があることについては、以前執筆したレポート2(以下、前レポート)で示した通りである。
どの運用商品にどのぐらい投資するかを決めるのは重要であるが、将来的には、いつどのように運用商品を売却するかも極めて重要である。なぜなら、長期・積立投資の場合、最終的な運用成果が売却タイミングに大きく依存するからである。株型商品は価格変動が激しいが、長期・積立投資の場合、購入が長期に渡って分散されているので、個々の購入タイミングの影響は限定的である。しかし、一度に売却すると、売却タイミングは分散されないので、売却タイミングの影響が極めて大きくなる。
コロナ・ショック以降、外国株式市場は大きく上昇したが、将来も上がり続けるとは限らない。株価が低い時期の売却は避けるべきなので、株価の回復を待って売却するべきだが、回復までに相当な時間がかかるかもしれない。資金的に余裕がなく回復を待っていられない場合は、そのままの低い時価で売却せざるを得ない。退職直前にリーマン・ショックのような誰も予測できない株価暴落が生じると、老後のために長年積み上げてきた資産が大きく毀損し、老後資金計画に支障をきたすかもしれない。
本レポートでは、前レポートで取り上げた単一指数型、バランス型だけでなく、ターゲットデート型も比較対象として加え、過去を遡って投資期間の違いによる投資結果に与える影響について明らかにしたい。投資期間を25年間とし、毎月前月末に2万円ずつ上述の商品を購入し、投資終了時である25年後の月末に全額を売却し、その時価残高をもって、投資結果を評価する。投資期間の違いによって投資終了時の時価残高がどれくらい異なるのかを確認する。
1 https://www.fsa.go.jp/singi/singi_kinyu/tosin/20190603/01.pdf
2 基礎研レポート「確定拠出年金では何に投資したら良いのか?-外国株式型、国内株式型、バランス型、外国債券型と国内債券型でパフォーマンスを比較してみた」https://www.nli-research.co.jp/report/detail/id=70490?site=nli
2――過去のデータから、たった数か月の違いで時価残高が大きく異なることが分かる
過去のデータを遡ってみると、市場インデックス商品への投資の場合、リスクが高い運用商品に投資する方が、投資終了時の時価残高が高い傾向がある(図表1)。しかし、たった数か月の違いで、投資終了時の時価残高が大きく異なるケースもあった。1994年12月末から2019年12月末まで外国株式型へ投資をした場合の投資終了時の時価残高は1,884万円だが、1995年3月末から2020年3月末まで投資をした場合の投資終了時の時価残高は1,432万円と、たったの3か月の違いで452万円も異なる(図表1:黒丸で囲んだ部分)。投資期間はほぼ重複しているので、この差は投資終了時の価格でほぼ説明できる。
投資終了時直前の株価急落による資産が毀損してしまう可能性の低減と高い運用成果を両立させたい場合、どうしたら良いだろうか?投資終了時が近くなったら、投資終了直前の株価急落による資産が毀損してしまうことを避けるため、リスクが高いがリターンが期待できる株型商品からリスクの低い商品に徐々に入れ替えるといった方法が良いように思える。
3――年齢が高くなるにつれ、どうしてリスクを落とさないといけないのか?
一般的に、株価の変動に比べて収入の変動は小さいので、人的資本のリスクは低いと考えられる。年齢に関係なく、金融資産の資産配分を一定に維持すると、若い時は人的資本も含めたリスクが、低すぎるし、年齢が高くなるとリスクが高すぎる(図表3:左)。
年齢に関係なく、人的資本を含めたポートフォリオのリスクを一定に維持するためには、若いうちは金融資産の部分で積極的にリスクをとり、年齢が高くなるにつれ資産配分の調整をして金融資産のリスクを落としていく必要がある(図表3:右)。これにより、年齢に関係なく一定のリスクをとることができる。
4――リスクの落とし方は商品によって運用スタイルが異なる
図表4からわかるように、ターゲットデート型は目標年月時点の資産配分によって大きく二分することができる。A社、B社とC社のようにリスクのある資産を保有する商品(以下、Through型)とD社、E社のように、全てリスクのない短資になっている商品に分類することができる(以下、To型)。
Through型とTo型を問わず、全期間を通してのリスク水準は各社ごとに異なる。A社とD社は株型商品の配分が大きい傾向があるのに対して、B社とC社とE社は株型商品の配分が小さい傾向がみられる。
A社は、目標年月の25年前、株型商品70%を組み入れており、目標年月時点でも、株型商品30%を組み入れる。
D社は、目標年月の25年前は株型商品に74%配分するが、To型のため、目標年月時点においては短資100%である。
B社は、目標年月の25年前でも、株型商品への配分は54%に止まり、目標年月時点においては株型商品への配分が7%と少ない。
C社も同様で、株型商品への配分は目標年月の25年前が53%、目標年月時点が12%である。但し、C社は外国債券への配分が大きい。目標年月の25年前は20%、目標年月時点において7%である。
E社は、目標年月の25年前においては株型商品が65%とやや高いが、To型のため、目標年月時点は短資100%である。
(2022年07月13日「基礎研レポート」)
金融研究部
熊 紫云
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