2022年06月15日

在宅勤務や時差通勤の増加は同居家族にどのような影響を与えたか~1/3で家計に影響。1/4で「団らん時間が増加」も、1割で「家庭内がぎくしゃく」

保険研究部 主任研究員・ヘルスケアリサーチセンター兼任 村松 容子

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1――56.3%が働き方に変化があった家族と同居していた

第8回新型コロナによる暮らしの変化に関する調査」によると、全体の56.3%(1,456人)が、コロナ禍で在宅勤務の実施や時差通勤など、働き方に変化があった家族と同居していた。14.9%は働き方に変化があった同居家族がおらず、10.5%は働いている同居家族がいなかった。また、18.2%は同居家族がいなかった(図表1)。したがって、働いている同居家族がいる人だけでみると、その8割で家族の働き方に変化があった。
図表1 同居家族の働き方の変化

2――61.7%が、働き方に変化があった同居家族の影響を受けていた

2――61.7%が、働き方に変化があった同居家族の影響を受けていた

1|25%強で「家事負担が増えた」「食費や光熱費、通信費等が高くなった」「団らんの時間が増えた」
働き方に変化があった家族と同居していた1,456人に対して、同居家族の働き方が変化したことによる影響を尋ねたところ、全体で「特に影響はない」が38.3%で、残る61.7%はなんらかの影響を受けていた。

図表2は、受けた影響を複数回答で聞いた結果を、「家事負担」「家計」「コミュニケーション」「時間やスペース」の4つに分類して示したものである。全体で、もっとも高かったのは「家事負担が増えた」で26.5%、次いで「在宅時間が増えたことで食費や光熱費、通信費等が高くなった」と「家族団らんの時間が増えた」が25.7%で続いた。コロナ禍では、家族の在宅時間が増えたことによると考えられる。
図表2 同居家族の働き方の変化にともなう影響(働き方に変化があった同居家族がいる人:n=1,456)
家事負担に関する影響では、「負担が増えた(26.5%)」が「軽減した(1.9%)」を大きく上回った2。家計に関する影響では「食費や光熱費、通信費等が高くなった」が25.7%で、「交通費や衣服にかける費用、職場における交際費が減った」は18.4%だった。このいずれかに当てはまった33.7%が外出機会の減少・在宅時間の増加で家計に影響があったと考えられた3。コミュニケーションに関する影響では、「家族団らんの時間が増えた」が25.7%だった一方で、「家族で言い争うなど家庭内がぎくしゃくすることが増えた」も10.0%だった。時間やスペースに関する影響では、「自由にくつろぐ時間やスペースが減った」「生活のリズムが乱れた」「家が手狭になった」が1割前後だった。
 
2 家庭内で家事分担を割り振りなおした場合は、「負担が増えた」「軽減した」の両方を回答する可能性があるが、今回の調査では両方回答した人はほとんどおらず、トータルでの増減を回答していると考えられる。
3 10.4%が「食費や光熱費、通信費等が高くなった」と「交通費や衣服にかける費用、職場における交際費が減った」の両方に当てはまっていた。
2|家族の類型によって受けた影響には差がある
働き方の変化にともなう影響は、家族の構成によって変わると考えられることから、本人と配偶者の働き方に着目して、それぞれの家族を「共働き世帯」「専業主婦世帯」「配偶者なし・本人有職/無職」「その他」に類型化した。「配偶者なし」には、離死別を含めた。

図表3に、同居家族の働き方の変化にともなう影響を、性別、家族の類型別、および子の有無別に示した。「その他世帯」には、夫婦ともに無職で、親や子どもと同居する人が含まれる4。また、専業主は、今回の対象者では人数が少なかったので、「その他」に分類した。子の有無については、子どもに割く時間が長いと考えられる「第1子が高校生以下」で、子どもと同居している人を「子育て世帯」とした。子どもがいない人や、子どもと同居していない人、第1子が高校卒業以上である人は「子育て世帯以外」とした。図表3で、専業主婦世帯の男性が専業主婦世帯の女性と比べて人数が少ないのは、専業主婦世帯の男性の場合は、本人以外は働いていないケースが多く、「働き方に変化があった同居家族がいる」と回答した人が少なかったからである。
 
4 本調査では、本人と配偶者については就労状況を尋ねているが、同居するその他の家族の就労状況は尋ねていないため、配偶者以外は同居する家族の誰が働いているのかは不明である。
(1) 女性の方が男性より同居家族の働き方の変化による影響を受けていた。
男性全体と女性全体を比較すると、「特に影響はない」は、男性で46.9%だったのに対し、女性は29.8%と低く、女性の方が家族の働き方による影響を受けていた。今回の調査で、男性は就労者の7割近くが正規雇用だったのに対し、女性は4割弱だったことから、女性の方が同居する家族に影響がない範囲で働いていた人が多かったことが推測でき、コロナ禍によって働き方に変化があったとしても同居家族への影響が小さかった可能性が考えられる。
(2) 家事負担は、子育て世帯で特に増加。女性の方が家計への影響を感じていた。
まず、家事負担と家計に関する影響についてみる。

「家事負担が増えた」を男女で比較すると、「家事負担が増えた」はすべての家族の類型で女性が男性を上回った。また、男女とも子育て世帯が子育て世帯以外より高かった。男女それぞれについて家族の類型でみると、女性では、子育て・専業主婦世帯の53.9%で負担が増えており、子育て・共働き世帯の44.9%を10ポイント程度上回った。一方、男性でも、子育て世帯が子育て世帯以外を上回っていたが、3割弱にとどまった。また、男性では、妻が有職・無職による大きな差はなかった。

「その他」の男女、および子育て・共働き世帯の男性では、「家事負担が軽減した」が、他類型と比べて相対的に高くなっており、普段、外で働いていた同居家族の在宅期間が増えたことで、家事をしてもらえるようになった可能性が考えられた。

家計について男女を比較すると、「在宅時間が増えたことで食費や光熱費、通信費等が高くなった」と「交通費や衣服にかける費用、職場における交際費が減った」は女性が男性を上回る類型が多かった。家族の類型別にみると、「在宅時間が増えたことで食費や光熱費、通信費等が高くなった」が高い類型は「交通費や衣服にかける費用、職場における交際費が減った」も高い傾向があり、外出機会の減少や在宅時間の増加でプラスの面もマイナスの面もあったようだ。
 
(3) 子育て世帯では「家族団らんの時間が増えた」一方で、「子どもが自由に遊べる時間やスペースが減った」も。配偶者がいない無職者で「家庭内がぎくしゃくすることが増えた」。子育て・共働き世帯の女性では「家が手狭になった」が特徴。
次に、コミュニケーションと時間やスペースに関する影響についてみると、男女とも子育て世帯で、「家族団らんの時間が増えた」が3割程度以上と高かった。また、15%程度が「子どもが自由に遊べる時間やスペースが減った」と回答していた。

「自由にくつろげる時間やスペースが減った」は、子育て・専業主婦世帯の女性や配偶者がいない無職の女性で高かった。いずれも、本人は無職であり仕事による外出がなく、コロナ禍前は、家族を仕事や学校等に送り出した後、自分のペースで過ごすことができていたと思われるが、コロナ禍では、家族の在宅時間が増えただけでなく、有職者と比べて外出の機会が少なく、気分転換の場も少なかったことが考えられる。配偶者がいない無職の女性では、「自由にくつろげる時間やスペースが減った」だけでなく、「家族で言い争うなど家庭内がぎくしゃくすることが増えた」も高くなっていた。また、女性ほど顕著ではないものの、配偶者がいない無職の男性でも、「自由にくつろげる時間やスペースが減った」と「家族で言い争うなど家庭内がぎくしゃくすることが増えた」が全体と比べて高い傾向があった。ここに分類されているのは、働いている親や兄弟と同居している学生等や、働いている子と同居している高齢の親だと思われ、親子間で言い合うこと等が増えたのかもしれない。

「生活のリズムが乱れた」は、子育て以外・専業主婦世帯の女性と、「その他」の男女で高かった。コロナ禍前は、家族を仕事に送り出すことで生活のリズムをつかんでいた人が、そういった機会が減ったことによる影響が表れたものと考えられる。

「家が手狭になった」は、子育て・共働き世帯の女性で高かった。「自由にくつろげる時間やスペースが減った」については、子育て・専業主婦世帯の女性や配偶者がいない無職の男女が全体と比べて高かったが、子育て・共働き世帯の女性ほど「家が手狭になった」とは感じていなかった。
図表3 同居家族の働き方の変化にともなう影響(働き方に変化があった同居家族がいる n=1456)

3――柔軟な働き方が継続するとすれば

3――柔軟な働き方が継続するとすれば、家庭内の問題にも目を向けていく必要

以上のとおり、今回の調査では、56.3%が働き方に変化があった家族と同居していた。また、働き方に変化があった家族と同居していた人の61.7%が、そのことによる影響を受けていた。受けた影響で最も高かったのは、「家事負担が増えた」で26.5%、次いで「在宅時間が増えたことで食費や光熱費、通信費等が高くなった」と「家族団らんの時間が増えた」が25.7%で続いた。

家族の類型によって受けた影響には差があった。 家事負担は、子育て世帯で特に増加しており、男性よりも女性で負担が増えた割合が高かった。また、子育て世帯では男女とも「家族団らんの時間が増えた」一方で、「子どもが自由に遊べる時間やスペースが減った」も高かった。子育て・共働き世帯の女性は、「家が手狭になった」が高かった。配偶者がいない無職(特に女性)で「自由にくつろげる時間やスペースが減った」と「家族で言い争うなど家庭内がぎくしゃくすることが増えた」が高くなっていた。また、子育て以外・専業主婦世帯の女性やその他世帯の男女では、「働き方が変化した家族の影響で、生活のリズムが乱れた」が高く、これまで家族を仕事に送り出すことで生活のリズムをつかんでいたものと推測できる。子育て以外・共働き世帯、配偶者がいない有職者、専業主婦世帯の男性は、相対的に影響が少なかったようだ。

新型コロナウイルスの流行が収束した後も、柔軟な働き方を継続・促進するとすれば、こういった家庭内の課題も解消していくことが求められる。もちろん、コロナ禍では、子どもも休校やイレギュラーな登校、リモート授業になったほか、大人を含めて習い事やイベントも通常どおり行われず、自由に友達と出歩けにくく、それぞれが窮屈な思いをする時期があった。そのため、コロナ禍収束後は、今回の結果ほどはくつろぐスペースや時間が自宅内に限られたという回答が高くない可能性があるが、家事負担の増加や生活リズムの乱れなどは引き続き課題となるだろう。

今回、家族の働き方と子どもの有無に着目して類型化して全容を紹介したが、今後、子育て世帯における各種影響が、子どもの年齢によってどのように異なっているのか、配偶者がいない無職者の負担、自由にくつろげるスペースや家の手狭感と転居意向の関係など、各類型の影響に特化した分析が必要になるだろう。

(2022年06月15日「基礎研レポート」)

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保険研究部   主任研究員・ヘルスケアリサーチセンター兼任

村松 容子 (むらまつ ようこ)

研究・専門分野
健康・医療、生保市場調査

経歴
  • 【職歴】
     2003年 ニッセイ基礎研究所入社

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