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- 商業施設売上高の長期予測-少子高齢化・EC市場拡大・コロナ禍による消費行動の変容が商業施設売上高に及ぼす影響
2022年06月07日
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1―商業施設は少子高齢化が逆風に
少子高齢化は「単身世帯の増加」と「世帯の高齢化」をもたらす。
単身世帯の増加は、商業施設の売上を下支えする要因となる。品目別に見ても、単身世帯の支出は二人以上の世帯をほとんどの品目で上回り、特に食料や被服・靴、外食、観覧・入場料等、交際費を押し上げる要因になる。
これに対して、世帯の高齢化は、商業施設の売上の減少要因となる。品目別に見ると、食料、被服・靴、外食、旅行サービスなど、多くの品目が高齢化により支出が減少し、医薬品関連、理美容サービスなど一部の品目では増加する。
単身世帯の増加は、商業施設の売上を下支えする要因となる。品目別に見ても、単身世帯の支出は二人以上の世帯をほとんどの品目で上回り、特に食料や被服・靴、外食、観覧・入場料等、交際費を押し上げる要因になる。
これに対して、世帯の高齢化は、商業施設の売上の減少要因となる。品目別に見ると、食料、被服・靴、外食、旅行サービスなど、多くの品目が高齢化により支出が減少し、医薬品関連、理美容サービスなど一部の品目では増加する。
2―EC市場拡大も商業施設を下押し
また、年齢別に見ると、高年層におけるEC支出額の伸び率は、コロナ前を上回っている。食料品や高年層は、もともとEC化率が低かったが、コロナ禍においてEC利用の普及が進んだことで、今後、EC拡大ペースが速まるかもしれない。
3― コロナ禍を契機としたコト消費からモノ消費へのシフト
まず、年齢毎に見た各世帯の可処分所得と消費性向、品目別消費割合は将来時点で一定と仮定した。年齢毎の可処分所得に、消費性向と品目別消費割合を乗じることで、年齢毎の品目別支出が求まる。この年齢毎の品目別支出に、国立社会保障・人口問題研究所による年齢毎世帯数の将来推計を乗じることで、日本全体の物販・外食・サービス支出を求めた。これは日本の商業施設の潜在的な売上規模を示す。そして、日本全体の物販・外食・サービス支出からECによる購入を除いたものを、日本全体の商業施設売上高として推計した。
また、コロナ禍による消費行動の変容が感染収束後も定着するかは、不確実性が大きい。そのため、消費チャネルにおける「ECシフトの加速」と消費構造における「コト消費からのモノ消費へのシフト」について、「コロナ前回帰シナリオ」と2021年のウィズコロナの状態が定着する「ニューノーマルシナリオ」の、2つのシナリオを設定した。
ポストコロナにおける消費行動は依然不透明ではあるものの、恐らくこれらのシナリオの間に落ち着くことが予想される。
なお、本稿では可処分所得が将来にわたり一定と仮定している。そのため、可処分所得が増加した場合、商業施設売上高は上振れることになる。逆に可処分所得が減少すれば、商業施設売上高は予想より下振れることになる。
試算した結果、商業施設売上高は(2019年=100)、2030年に「87.5~94.3」、2040年に「77.3~85.8」となった[図表8]。年率では、2030年に▲0.3% ~▲1.5%、2040 年に▲0.4%~▲1.3%となる。年率▲1%前後であれば、商業施設の運営力などで対応する余地もありそうだ。
しかし、ここで重要なのは商業施設売上高への下押し圧力が、今後20年にわたって緩やかに続くことである。少子高齢化とEC市場拡大は長期的かつ不可逆的な変化であり、商業施設にとって「緩やかに進む危機」だと言える。
また、コロナ禍による消費行動の変容が感染収束後も定着するかは、不確実性が大きい。そのため、消費チャネルにおける「ECシフトの加速」と消費構造における「コト消費からのモノ消費へのシフト」について、「コロナ前回帰シナリオ」と2021年のウィズコロナの状態が定着する「ニューノーマルシナリオ」の、2つのシナリオを設定した。
ポストコロナにおける消費行動は依然不透明ではあるものの、恐らくこれらのシナリオの間に落ち着くことが予想される。
なお、本稿では可処分所得が将来にわたり一定と仮定している。そのため、可処分所得が増加した場合、商業施設売上高は上振れることになる。逆に可処分所得が減少すれば、商業施設売上高は予想より下振れることになる。
試算した結果、商業施設売上高は(2019年=100)、2030年に「87.5~94.3」、2040年に「77.3~85.8」となった[図表8]。年率では、2030年に▲0.3% ~▲1.5%、2040 年に▲0.4%~▲1.3%となる。年率▲1%前後であれば、商業施設の運営力などで対応する余地もありそうだ。
しかし、ここで重要なのは商業施設売上高への下押し圧力が、今後20年にわたって緩やかに続くことである。少子高齢化とEC市場拡大は長期的かつ不可逆的な変化であり、商業施設にとって「緩やかに進む危機」だと言える。
(2022年06月07日「基礎研マンスリー」)

03-3512-1778
経歴
- 【職歴】 2006年4月 住友信託銀行(現 三井住友信託銀行) 2013年10月 国際石油開発帝石(現 INPEX) 2015年9月 ニッセイ基礎研究所 2019年1月 ラサール不動産投資顧問 2020年5月 ニッセイ基礎研究所 2022年7月より現職 【加入団体等】 ・一般社団法人不動産証券化協会認定マスター ・日本証券アナリスト協会検定会員
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