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- CBDCの公共性と民業圧迫-民間ビジネスに及ぶ影響の考察
2022年05月16日
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■要旨
中央銀行デジタル通貨(以降、CBDC)をめぐる議論は、1年あまりの間にかなり進展している。中国では、デジタル人民元が北京オリンピックでお披露目され、欧州では、デジタルユーロの準備プロジェクトが正式に決まり、米国では、デジタルドル(USCBDC)に関する報告書が公表された。日本でも、日本銀行(以下、日銀)による実証実験の結果が、2022年4月に公表されたばかりだ。
今回、日銀が公表した報告書は、2021年4月から行われた概念実証の成果であり、3段階で予定される実験の1段階目(フェーズ1)にあたる。実験では、コンピュータ上に仮想的な実験環境を構築し、3つの設計パターンにおける、CBDCの中核をなす基本機能(発行・送金・還収など)に関する技術的な検証が行われた。日銀は報告書の中で、CBDCの発行に関する判断を示さなかったが、CBDCの周辺機能(オフライン決済機能・金額制限・付利など)について検証する、フェーズ2の実験を2022年4月に開始している。実験期間は、来年2023年3月までの1年間。それが終われば、必要に応じて消費者や企業などが実地に参加する、パイロット試験に移行する計画である。
さらに日銀は、実証実験と並行して、制度設計面の検討も進めている。CBDCの導入では、機能面やシステム面における技術的な課題だけでなく、プライバシーの確保や利用者情報の取扱いといった制度面の課題も問題になる。現在、その詳細を詰める作業が行われている。ただ、制度面の設計は、技術面と同じく、様々なトレードオフに直面するため、バランスを取ることが難しい作業でもある。
本稿では、そのような制度設計における、公共性と民業圧迫のトレードオフに着目し、公共性が優先された場合の民間ビジネスへの影響について考察する。
■目次
1――はじめに
2――公共性と民業圧迫のトレードオフ
1|手数料という難題
2|手数料ゼロの可能性
3――民間ビジネスへの影響
1|事業コストの増加
2|競争環境の変化
3|業界再編と事業モデルの変化
4|新たなビジネス領域の創出
4――民業圧迫を最小化する仕組み
5――おわりに
中央銀行デジタル通貨(以降、CBDC)をめぐる議論は、1年あまりの間にかなり進展している。中国では、デジタル人民元が北京オリンピックでお披露目され、欧州では、デジタルユーロの準備プロジェクトが正式に決まり、米国では、デジタルドル(USCBDC)に関する報告書が公表された。日本でも、日本銀行(以下、日銀)による実証実験の結果が、2022年4月に公表されたばかりだ。
今回、日銀が公表した報告書は、2021年4月から行われた概念実証の成果であり、3段階で予定される実験の1段階目(フェーズ1)にあたる。実験では、コンピュータ上に仮想的な実験環境を構築し、3つの設計パターンにおける、CBDCの中核をなす基本機能(発行・送金・還収など)に関する技術的な検証が行われた。日銀は報告書の中で、CBDCの発行に関する判断を示さなかったが、CBDCの周辺機能(オフライン決済機能・金額制限・付利など)について検証する、フェーズ2の実験を2022年4月に開始している。実験期間は、来年2023年3月までの1年間。それが終われば、必要に応じて消費者や企業などが実地に参加する、パイロット試験に移行する計画である。
さらに日銀は、実証実験と並行して、制度設計面の検討も進めている。CBDCの導入では、機能面やシステム面における技術的な課題だけでなく、プライバシーの確保や利用者情報の取扱いといった制度面の課題も問題になる。現在、その詳細を詰める作業が行われている。ただ、制度面の設計は、技術面と同じく、様々なトレードオフに直面するため、バランスを取ることが難しい作業でもある。
本稿では、そのような制度設計における、公共性と民業圧迫のトレードオフに着目し、公共性が優先された場合の民間ビジネスへの影響について考察する。
■目次
1――はじめに
2――公共性と民業圧迫のトレードオフ
1|手数料という難題
2|手数料ゼロの可能性
3――民間ビジネスへの影響
1|事業コストの増加
2|競争環境の変化
3|業界再編と事業モデルの変化
4|新たなビジネス領域の創出
4――民業圧迫を最小化する仕組み
5――おわりに
(2022年05月16日「基礎研レター」)
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経歴
- 【職歴】
2011年 日本生命保険相互会社入社
2017年 日本経済研究センター派遣
2018年 ニッセイ基礎研究所へ
2021年より現職
【加入団体等】
・日本証券アナリスト協会検定会員
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