- シンクタンクならニッセイ基礎研究所 >
- 不動産 >
- 不動産市場・不動産市況 >
- 3PL事業者が求める物流機能と物流不動産市場への影響(2)~3PL事業者の拠点特性と社会的な課題を踏まえた3PL事業者の今後の取り組み
3PL事業者が求める物流機能と物流不動産市場への影響(2)~3PL事業者の拠点特性と社会的な課題を踏まえた3PL事業者の今後の取り組み

金融研究部 主任研究員 吉田 資
文字サイズ
- 小
- 中
- 大
「フィジカルインターネット」の実現に向けた取り組みでは、物流施設の自動化やトラック等の輸送手段の共有化が進むことになる。先行研究17によれば、3PL事業者がこれまで強みとしてきた物流オペレーション業務(物流センター業務や配送業務)は、今後コモディティ化(一般化)する可能性が指摘されている。
また、最近では、物流施設の供給者である不動産会社が、テナント企業に対して物流機器のレンタルや導入支援など、物流オペレーションサービスを充実させ、3PL事業者のビジネス領域に参入する動きもみられる18。
今後、3PL事業者には、物流オペーション業務の提供だけではなく、顧客の企業競争力向上に寄与する物流戦略の提案が一層求められるだろう。経済産業省「物流市場における競争環境や労働環境等に関する調査」によると、「3PLに対する荷主の課題認識」(アンケート調査)に関して、「プロを有してない」(25%)、「提案・コンサルの提供が出来ていない」(23%)との回答もあり、3PL事業者の専門性に対し懐疑的な意見を有していると指摘している。荷主企業からの期待に応える物流戦略の提案力強化が喫緊の課題となるだろう。
しかし、日本の3PL事業者の料金形態は、「トランザクション方式」(取扱個数×単価)や「コスト+フィー方式」(実費+手数料)が多く、物流戦略の提供による成果が料金に反映されていない。今後は、「ゲインシェアリング方式」や、「ベンチマーク方式」を採用するなど、物流戦略提案の成果で利益を追求する必要がある(図表-13)。
17 みずほ銀行産業調査部「フィジカルインターネットによる物流の変化」Mizuho Short Industry Focus 2020年10月6日
18 日経不動産マーケット情報「首都圏の需給悪化は限定的、中長期的課題への準備を」日経BP社2022年4月号
19 船井総研ロジ株式会社ロジスティクスコンサルティング部(2021)「物流改革大全」
5. 3PL事業者が物流不動産市場に与える影響
物流施設の自動化を推進する際、物流施設には、複数の自動化機器(自動搬送機やピッキングロボット等)を導入可能な一定以上の床荷重・天井高・面積を有していることが求められる。また、運転自動化に対応するためには、自動運転トラックがスムーズに運行できる一定規模以上の接車バースや、高速道路ICに直結したランプウェイ等が必要となるだろう。また、Co2排出量削減等に取組む際には、LED照明や断熱等の省エネ設備が重要視されると考えられる。
上記のような設備・仕様は、最近の大規模物流施設の建築仕様を合致していることから、3PL事業者は、大規模物流施設の需要を引き続き牽引すると考えられる(図表-14)。
ただし、3PL事業者には、単なる物流オペーション業務の提供ではなく、企業競争力の強化に寄与する物流戦略の提案が一層求められている。社会潮流の変化に即した戦略の提案ができない3PL事業者は、物流業界での存在感が低下する可能性がある。
大規模物流施設市場の見通しをたてる上で、引き続き3PL事業者の動向に注視する必要があると思われる。
(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
(2022年04月08日「不動産投資レポート」)
このレポートの関連カテゴリ

03-3512-1861
- 【職歴】
2007年 住信基礎研究所(現 三井住友トラスト基礎研究所)
2018年 ニッセイ基礎研究所
【加入団体等】
一般社団法人不動産証券化協会資格教育小委員会分科会委員(2020年度~)
吉田 資のレポート
日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
---|---|---|---|
2025/04/17 | 「新築マンション価格指数」でみる東京23区のマンション市場動向【2024年】~都心は価格上昇が加速。一方、下期にかけて南西部は伸び率鈍化、北部と東部は下落に転じる。 | 吉田 資 | 不動産投資レポート |
2025/04/08 | 良好な景況感が継続。先行きも楽観的な見方が強まる。-第21回不動産市況アンケート結果 | 吉田 資 | 基礎研マンスリー |
2025/03/31 | 「横浜オフィス市場」の現況と見通し(2025年) | 吉田 資 | 不動産投資レポート |
2025/03/25 | 「大阪オフィス市場」の現況と見通し(2025年) | 吉田 資 | 不動産投資レポート |
新着記事
-
2025年04月21日
日本国債市場は市場機能を回復したか-金融正常化における価格発見機能の構造変化 -
2025年04月21日
「都道府県人口減の未来図」-2024年都道府県20代人口流出率ランキング -
2025年04月18日
ECB政策理事会-トランプ関税を受け6会合連続の利下げ決定 -
2025年04月18日
トランプ関税発の円高は止まるか?~マーケット・カルテ5月号 -
2025年04月18日
トランプ関税へのアプローチ-日EUの相違点・共通点
レポート紹介
-
研究領域
-
経済
-
金融・為替
-
資産運用・資産形成
-
年金
-
社会保障制度
-
保険
-
不動産
-
経営・ビジネス
-
暮らし
-
ジェロントロジー(高齢社会総合研究)
-
医療・介護・健康・ヘルスケア
-
政策提言
-
-
注目テーマ・キーワード
-
統計・指標・重要イベント
-
媒体
- アクセスランキング
お知らせ
-
2025年04月02日
News Release
-
2024年11月27日
News Release
-
2024年07月01日
News Release
【3PL事業者が求める物流機能と物流不動産市場への影響(2)~3PL事業者の拠点特性と社会的な課題を踏まえた3PL事業者の今後の取り組み】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。
3PL事業者が求める物流機能と物流不動産市場への影響(2)~3PL事業者の拠点特性と社会的な課題を踏まえた3PL事業者の今後の取り組みのレポート Topへ