- シンクタンクならニッセイ基礎研究所 >
- 保険 >
- 保険商品 >
- コロナ禍でも成長を持続する少額短期保険業界-大手生損保会社による少額短期保険子会社の設立も相次ぐ
コロナ禍でも成長を持続する少額短期保険業界-大手生損保会社による少額短期保険子会社の設立も相次ぐ
基礎研REPORT(冊子版)4月号[vol.301]
松岡 博司
1―成長を続ける少額短期保険業
その名のごとく、少額の保険金額(病気死亡保険金300万円以下、損害保険金1,000万円以下等)で短期(生保・医療保険1年以内、損保2年以内)の保険契約のみを引き受ける。年間収入保険料の額や資産運用に制約が課される等、業務運営面では一般の保険会社よりも厳しい制約に服するが、最低資本金が小さく、内閣総理大臣(実際は財務局)に登録すれば開業できるなど、開業面の規制は一般の保険会社よりも緩やかである。
業態誕生からおよそ16年、少額短期保険業界は一貫して高い成長を持続し、コロナ禍中にあった2020年度もその増勢は衰えなかった[図表1]。
少額短期保険各社の商品は、小口でシンプルではあるが、多様性に富んでいる。既存の生保会社や損保会社では、市場が小さすぎる、リスクが大きすぎると、二の足を踏むであろう商品が、その機動力やパイオニア精神により開発、販売されている。
2―大手生損保会社による少額短期保険会社の設立または買収
近年の生損保会社による少額短期保険会社設立(買収)の主な目的は、ニーズが多様化・細分化して、生損保会社本体では対応しきれていない顧客層、保障分野が存在する現状に対応し、少額短期保険会社の柔軟さと機動力を活かして、そうした顧客層・保障分野に保障提供することである。デジタル化が進展する中で、デジタル技術を活用した商品・サービスを創り出し、提供することを目指す会社もある。実験的な事業に積極的に取り組めることは、少額短期保険会社を設立(買収)するメリットの1つであろう。
具体的な事例を見ると、たとえば、少額短期保険会社設立の動きの先駆者的な存在である損害保険ジャパングループのMysurance株式会社は、デジタル技術を活用した商品・サービスの提供に積極的に取り組んでいる。
第一生命グループの第一スマート少額短期保険が2021年4月に販売開始した特定感染症保険「コロナminiサポほけん」は、新型コロナ感染者数の状況に応じて、毎月1日にその月の申込時の保険料が確定する「ダイナミックプライシング」という手法を用いている。また保険契約の申込・給付金の請求などの手続きはスマホで完結する。
アフラック生命グループのSUDACHI少額短期保険が2021年2月に販売開始した「SUDACHIのささえる医療保険」は、親会社アフラックの医療保険に加入できなかった顧客を対象としている。
3―おわりに
また金融庁は、2021年9月に発表した「2021年 保険モニタリングレポート」の中で、少額短期保険業界の市場規模の拡大を認めつつ、「当期純利益は対前年同期で減少しており、引き続き赤字業者数が一定程度存在している」と述べている。業態が安定してきた現在においてこそ、こうした健全性等の観点からのフォローも行っていきたいと考える。
松岡 博司
研究・専門分野
(2022年04月07日「基礎研マンスリー」)
公式SNSアカウント
新着レポートを随時お届け!日々の情報収集にぜひご活用ください。
新着記事
-
2024年04月19日
年金将来見通しの経済前提は、内閣府3シナリオにゼロ成長を追加-2024年夏に公表される将来見通しへの影響 -
2024年04月19日
パワーカップル世帯の動向-2023年で40万世帯、10年で2倍へ増加、子育て世帯が6割 -
2024年04月19日
消費者物価(全国24年3月)-コアCPIは24年度半ばまで2%台後半の伸びが続く見通し -
2024年04月19日
ふるさと納税のデフォルト使途-ふるさと納税の使途は誰が選択しているのか? -
2024年04月18日
サイレントマジョリティ⇒MAGAで熱狂-米国大統領選挙でリベラルの逆サイレントマジョリティはあるか-
レポート紹介
-
研究領域
-
経済
-
金融・為替
-
資産運用・資産形成
-
年金
-
社会保障制度
-
保険
-
不動産
-
経営・ビジネス
-
暮らし
-
ジェロントロジー(高齢社会総合研究)
-
医療・介護・健康・ヘルスケア
-
政策提言
-
-
注目テーマ・キーワード
-
統計・指標・重要イベント
-
媒体
- アクセスランキング
お知らせ
-
2024年04月02日
News Release
-
2024年02月19日
News Release
-
2023年07月03日
News Release
【コロナ禍でも成長を持続する少額短期保険業界-大手生損保会社による少額短期保険子会社の設立も相次ぐ】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。
コロナ禍でも成長を持続する少額短期保険業界-大手生損保会社による少額短期保険子会社の設立も相次ぐのレポート Topへ