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日銀の金融政策正常化時にとるべき国内債券のアクティブ戦略
金融研究部 金融調査室長・年金総合リサーチセンター兼任 福本 勇樹
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物価目標の達成が実現され、日本銀行が金融政策の正常化に転じた場合、バランスシートの縮小の他、マイナス金利政策、イールドカーブコントロール(YCC)を解除することになる。現状、マイナス金利政策とYCCの組み合わせによって、無担保コールレート(オーバーナイト物)と長期金利の長短金利差は0.2%程度になっている。最終的にマイナス金利政策の解除による短期金利の利上げを想定に入れると、逆イールドを避け、徐々に長短金利差を拡大しながら全ての金融政策を解除するという難しいかじ取りが求められる。さらに、マイナス金利政策の3層構造(基礎残高、マクロ加算残高、政策金利残高)は、気候変動対応オペで金融機関に対するインセンティブ付けにも活用されるなど、他の政策とも密接に関連している。これらを総合的に考えると、物価目標の達成によって同時に全ての金融政策が解除されるのではなく、少なくともYCCとマイナス金利政策はタイムラグをもって解除されることになるだろう。
この場合、短期金利の変動は抑制されつつも長期金利や超長期金利が上昇し、国債のイールドカーブがスティープ化するシナリオが想定される。そもそも、主な債券アクティブ戦略としては、デュレーション調整、年限構成比の調整、債券種別の調整などが挙げられる。教科書的には、イールドカーブがスティープ化する場合に採用すべき債券アクティブ戦略として、短期金利、長期金利、超長期金利の順で金利上昇幅が大きくなるため、年限構成比の調整を行う戦略では、一般的にバーベル戦略よりもブレット戦略が支持されることになる。
そこで、日本銀行が金融政策を正常化した際に想定される2つのシナリオのもと、NOMURA-BPI(総合)の修正デュレーション(=約9.2:2022年2月末)と近しくなるようにカレント銘柄でバーベル型とブレット型のポートフォリオを構築してパフォーマンス比較を行った。シナリオ1は、長期的に経済成長率や物価上昇率の安定が期待でき、2年国債利回りと10年国債利回りのスプレッドおよび10年国債利回りと30年国債利回りのスプレッドが拡大する場合で、シナリオ2は、経済成長率や物価上昇率の安定は長く継続すると期待できず、2年国債利回りと10年国債利回りのスプレッドは拡大するものの10年国債利回りと30年国債利回りのスプレッドは拡大しない場合である。2022年2月末時点のデータを用いて、それぞれパフォーマンス比較を行ったところ、シナリオ1では教科書通りにブレット戦略のパフォーマンスの方が優れているが、シナリオ2ではバーベル戦略のパフォーマンスの方が優れているという結果になった。参考までに2年国債利回りと10年国債利回りのシナリオを不変としたときに、ブレット戦略とバーベル戦略でパフォーマンスが同等になる30年国債利回りの上昇幅は1.01%程度である。つまり、ブレット戦略が優位性を持つには超長期金利と長期金利のスプレッドが0.21%以上拡大する必要がある。
上記のような年限構成比の調整の他に、債券種別の調整を組み合わせる方法もある。例えば、投資家のリスク許容度に合わせて、あまり金利変動が生じないと想定される短期では、相対的に最終利回りの高い事業債やMBS(不動産担保証券)をオーバーウェイトして超過リターンの獲得を狙いつつ、金利上昇幅が大きくなると想定される長期や超長期では、相対的にコンベキシティの大きい債券をオーバーウェイトして金利上昇に対する債券価格の下落幅を抑制するといった対応策が考えられる。
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(2022年04月05日「ニッセイ年金ストラテジー」)
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