2022年03月29日

雇用関連統計22年2月-まん延防止等重点措置の影響で、対面型サービス業の休業率がさらに上昇

経済研究部 経済調査部長 斎藤 太郎

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1.失業率は前月から0.1ポイント低下の2.7%

総務省が3月29日に公表した労働力調査によると、22年2月の完全失業率は前月から0.1ポイント低下の2.7%(QUICK集計・事前予想:2.8%、当社予想は2.9%)となった。労働力人口が前月から3万人の増加となる中、就業者は前月と変わらず、失業者は前月から▲3万人減の188万人(いずれも季節調整値)となった。

失業者の内訳を求職理由別(季節調整値)にみると、雇用契約の満了や事業の都合といった非自発的離職による者の割合が31.9%(1月:30.9%)と3ヵ月連続で上昇した。失業率は横ばい圏で推移しているが、失業の中身は深刻化している。
完全失業率と就業者の推移/求職理由別失業者割合
就業者数は前年差▲35万人減(1月:同▲32万人減)と5ヵ月連続で減少した。産業別には、製造業は前年差3万人増(1月:同4万人増)と2ヵ月連続で増加したが、まん延防止等重点措置の影響で、卸売・小売が前年差▲46万人減(1月:同▲19万人減)と減少幅が拡大したほか、生活関連サービス・娯楽が前年差▲7万人減(1月:同▲6万人減)と9ヵ月連続で減少した。宿泊・飲食サービスは前年差10万人増(1月:同3万人増)と2ヵ月連続で増加したが、コロナ前の19年2月と比べると▲41万人の大幅減少となっている。

雇用者数(役員を除く)は前年に比べ▲2万人減(1月:同▲28万人減)と2ヵ月連続の減少となった。雇用形態別にみると、非正規の職員・従業員数は前年差10万人増(1月:同0万人)となったが、正規の職員・従業員数が前年差▲12万人減(1月:同▲27万人減)と2ヵ月連続で減少した。
産業別・就業者数の推移/雇用形態別雇用者数

2.対面型サービス業の休業率がさらに上昇

主な産業別休業率 休業者数は242万人となり、前年に比べて12万人の増加(1月:同4万人増)となった。休業率(休業者/就業者)を産業別にみると、飲食店(12月:2.2%→1月:6.5%→2月:9.5%)、宿泊業(12月:1.9%→1月:6.0%→2月:6.1%)、娯楽業(12月:2.8%→1月:4.1%→2月:5.3%)がいずれも2ヵ月連続で上昇した(休業率は原数値)。

1月に続き2月も多くの地域でまん延防止等重点措置が継続していたことが対面型サービス業の休業率の上昇につながったとみられる。

3.有効求人倍率の改善が続く

有効求人倍率の推移 厚生労働省が3月29日に公表した一般職業紹介状況によると、22年2月の有効求人倍率は前月から0.01ポイント上昇の1.21倍(QUICK集計・事前予想:1.20倍、当社予想も1.20倍)となった。有効求人数が前月比▲0.2%と1年2ヵ月ぶりに減少したが、有効求職者数が同▲1.4%とそれ以上に減少したことが求人倍率の改善につながった。

有効求人倍率の先行指標である新規求人倍率は前月から0.05ポイント上昇の2.21倍となった。新規求職申込件数が前月比▲7.2%の大幅減少となり、新規求人数(同▲4.8%)の減少幅を上回った。

求人数は増加傾向が続いており、人手不足感の高さを背景に企業の採用意欲は引き続き高いが、非自発的離職による失業者の増加、対面型サービス業の休業率上昇など、まん延防止等重点措置の影響が労働市場に表れている。まん延防止等重点措置は3/21で終了したため、景気は持ち直しに向かうことが見込まれる。ただし、雇用情勢は景気に遅れて動く傾向があるため、しばらく厳しい状態が続くことが予想される。
 
 

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斎藤 太郎 (さいとう たろう)

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴
  • ・ 1992年:日本生命保険相互会社
    ・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
    ・ 2019年8月より現職

    ・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2018年~ 統計委員会専門委員

(2022年03月29日「経済・金融フラッシュ」)

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