2022年03月16日

貿易統計22年2月-原油高の影響で貿易赤字(季節調整値)が拡大

経済研究部 経済調査部長 斎藤 太郎

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1.原油高の影響で貿易赤字(季節調整値)が拡大

財務省が3月16日に公表した貿易統計によると、22年2月の貿易収支は▲6,683億円の赤字となり、事前の市場予想(QUICK集計:▲1,125億円、当社予想は▲1,241億円)を下回る結果となった。輸出が前年比19.1%(1月:同9.6%)と前月から伸びを大きく高めたが、原油高の影響などから輸入が前年比34.0%(1月:同39.6%)と輸出を上回る伸びが続いたため、貿易収支は前年に比べ▲8,442億円の悪化となった。

輸出の内訳を数量、価格に分けてみると、輸出数量が前年比2.7%(1月:同▲4.0%)、輸出価格が前年比16.0%(1月:同14.1%)、輸入の内訳は、輸入数量が前年比▲0.9%(1月:同4.8%)、輸入価格が前年比35.2%(1月:同32.3%)であった。
貿易収支の推移/貿易収支(季節調整値)の推移
輸出金額の要因分解/輸入金額の要因分解
季節調整済の貿易収支は▲10,314億円と11ヵ月連続の赤字となり、1月の▲7,769億円から赤字幅が拡大した。輸出が前月比▲0.5%の減少となる一方、原油高の影響で輸入が同2.7%の増加となったことが貿易収支の悪化につながった。
原油価格(ドバイと入着ベース)の推移 2月の通関(入着)ベースの原油価格は1バレル=86.8ドル(当研究所による試算値)となり、1月の79.8ドルから上昇した。原油価格(ドバイ)は、ロシアのウクライナ侵攻を受けて、一時130ドル台まで上昇した後、90ドル台まで下落している。通関ベースの原油価格は3月に90ドル台後半まで上昇した後、4月には100ドルを超えることが見込まれる。輸入価格の上昇を主因として、貿易収支(季節調整値)は当面赤字が続く可能性が高い。

2.自動車輸出の低迷が続く

22年2月の輸出数量指数を地域別に見ると、米国向けが前年比5.0%(1月:同▲1.1%)、EU向けが前年比2.1%(1月:同9.8%)、アジア向けが前年比6.1%(1月:同▲10.5%)、うち中国向けが前年比▲8.5%(1月:同▲18.2%)となった。
地域別輸出数量指数(季節調整値)の推移 22年2月の地域別輸出数量指数を季節調整値(当研究所による試算値)でみると、米国向けが前月比5.2%(1月:同▲9.6%)、EU向けが前月比▲7.0%(1月:同6.9%)、アジア向けが前月比3.1%(12月:同▲1.6%)、中国向けが前月比1.6%(1月:同2.2%)、全体では前月比0.0%(1月:同0.7%)となった。

22年1、2月の平均を21年10-12月期と比較すると、米国向けは▲1.7%低いが、EU向けが1.2%、アジア向けが0.7%、中国向けが3.9%、全体では0.7%高くなっている。EU向け、アジア向けは底堅さを維持しているが、供給制約の影響で低迷が続く自動車輸出の割合が高い米国向けが弱い動きとなっている。
自動車生産と自動車輸出の推移 自動車輸出(対世界)は名目では前年比8.3%の増加となったが、台数ベースでは前年比▲5.5%(1月:同▲11.7%)と2ヵ月連続で減少した。季節調整値(当研究所による試算値)では、前月比0.5%と2ヵ月ぶりの増加となったが、1月に同▲5.8%と大きく落ち込んだ後としては戻りが弱い。

新型コロナウイルス感染拡大に伴う部品供給不足によって、工場の操業停止が相次いでおり、このことが自動車輸出の低迷につながっている。鉱工業生産の輸送機械は2月が前月比12.3%、3月が同13.1%の大幅増産計画となっているが、自動車輸出の動向を踏まえれば、実際の生産は計画から大きく下振れる可能性が高い。
 
 

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斎藤 太郎 (さいとう たろう)

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴
  • ・ 1992年:日本生命保険相互会社
    ・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
    ・ 2019年8月より現職

    ・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2018年~ 統計委員会専門委員

(2022年03月16日「経済・金融フラッシュ」)

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