2022年03月04日

雇用関連統計22年1月-まん延防止等重点措置の影響で、飲食店、宿泊業、娯楽業の休業率が再び上昇

経済研究部 経済調査部長 斎藤 太郎

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1.失業率は前月から0.1ポイント上昇の2.8%

完全失業率と就業者の推移 総務省が3月4日に公表した労働力調査によると、22年1月の完全失業率は前月から0.1ポイント上昇の2.8%(QUICK集計・事前予想:2.7%、当社予想も2.7%)となった。労働力人口が前月から▲17万人の減少となる中、就業者が前月から▲19万人減少したため、失業者は前月から4万人増の191万人(いずれも季節調整値)となった。

労働市場から退出する人が増える中で、就業者が減少することによって失業者が増加しており、内容も悪い。
就業者数は前年差▲32万人減(12月:同▲2万人減)と4ヵ月連続で減少し、減少幅が拡大した。産業別には、製造業は前年差4万人増(12月:同▲1万人減)と3ヵ月ぶりに増加したが、まん延防止等重点措置の影響で、卸売・小売が前年差▲19万人減(12月:同▲4万人減)と減少幅が拡大したほか、生活関連サービス・娯楽が前年差▲6万人減(12月:同▲9万人減)と8ヵ月連続で減少した。宿泊・飲食サービスは前年差3万人増(12月:同▲2万人減)と6ヵ月ぶりに増加したが、コロナ前の19年1月と比べると▲43万人の大幅減少となっている。
産業別・就業者数の推移/雇用形態別雇用者数
雇用者数(役員を除く)は前年に比べ▲28万人減(12月:同19万人増)と2ヵ月連ぶりの減少となった。雇用形態別にみると、非正規の職員・従業員数は前年と同水準(12月:同7万人増)だったが、正規の職員・従業員数が前年差▲27万人減(12月:同12万人増)と19年9月以来、コロナ禍では初めて減少した。

2.対面型サービス業の休業率が再び上昇

主な産業別休業率 休業者数は249万人となり、前年に比べて4万人の増加(12月:同▲14万人減)となった。

休業率(休業者/就業者)を産業別にみると、飲食店(12月:2.2%→1月:6.5%)、宿泊業(12月:1.9%→1月:6.0%)、娯楽業(12月:2.8%→1月:4.1%)がいずれも前月から上昇した(休業率は原数値)。これらの業種は緊急事態宣言の解除を受けて21年末にかけて休業率が大きく低下していたが、22年入り後のまん延防止等重点措置の影響で再び上昇した。

3.求人数は増加が続く

有効求人倍率の推移 厚生労働省が3月4日に公表した一般職業紹介状況によると、21年12月の有効求人倍率は前月から0.03ポイント上昇の1.20倍(QUICK集計・事前予想:1.16倍、当社予想は1.17倍)となった。有効求人数が前月比2.6%の増加となり、有効求職者数の伸び(同0.7%)を上回った。

有効求人倍率の先行指標である新規求人倍率は前月から0.03ポイント低下の2.16倍となった。新規求人数は前月比1.1%の増加となったが、新規求職申込件数が同2.4%と求人数を上回る伸びとなったことが、求人倍率の低下につながった。
 
21年9月末の緊急事態宣言解除を受けて、雇用情勢は対面型サービス業を中心に年末にかけて持ち直しの動きとなったが、22年入り後はまん延防止等重点措置が適用されている。求人数は増加を続けており、人手不足感の高さを背景に企業の採用意欲は引き続き高いが、非労働力化の進展、対面型サービス業の休業率上昇など、まん延防止等重点措置の影響が労働市場に表れている。まん延防止等重点措置は3月まで継続しているため、雇用情勢の改善はしばらく見込めないだろう。
 
 

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斎藤 太郎 (さいとう たろう)

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴
  • ・ 1992年:日本生命保険相互会社
    ・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
    ・ 2019年8月より現職

    ・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2018年~ 統計委員会専門委員

(2022年03月04日「経済・金融フラッシュ」)

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