2022年02月28日

鉱工業生産22年1月-供給制約が再び強まり、自動車生産が大きく落ち込む

経済研究部 経済調査部長 斎藤 太郎

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1.供給制約の影響で自動車が再び大きく落ち込む

経済産業省が2月28日に公表した鉱工業指数によると、22年1月の鉱工業生産指数は前月比▲1.3%(12月:同▲1.0%)と2ヵ月連続で低下し、事前の市場予想(QUICK集計:前月比▲0.7%、当社予想は同0.7%)を下回る結果となった。出荷指数は前月比▲1.8%と4ヵ月ぶりの低下、在庫指数は前月比▲1.8%と5ヵ月ぶりの低下となった。
鉱工業生産・出荷・在庫指数の推移 1月の生産を業種別に見ると、デジタル関連需要の強さを背景に電子部品・デバイスは前月比10.4%の高い伸びとなり、内外の設備投資需要の強さを反映し、生産用機械(前月比4.9%)、汎用・業務用機械(同3.5%)も増加したが、自動車が前月比▲17.2%の大幅減少となったことが、全体を大きく押し下げた。

自動車は、供給制約の緩和に伴い21年末にかけて持ち直していたが、新型コロナウイルス感染拡大に伴う部品供給不足によって、一部の工場が稼働停止に追い込まれたことから、再び大きく落ち込んだ。
財別の出荷動向を見ると、設備投資のうち機械投資の一致指標である資本財出荷指数(除く輸送機械)は21年10-12月期の前期比▲4.2%の後、22年1月は前月比6.7%となった。また、建設投資の一致指標である建設財出荷指数は21年10-12月期の前期比▲3.4%の後、22年1月は前月比2.4%となった。
財別の出荷動向 21年10-12月期のGDP統計の設備投資は前期比0.4%と2四半期ぶりに増加したが、7-9月期に同▲2.4%と大きく落ち込んだ後としては低い伸びにとどまった。部品不足などの供給制約の影響が残っていることが設備投資を抑制しているが、高水準の企業収益を背景に基調としては持ち直しの動きが続いている。22年1-3月期の設備投資は前期から伸びを高める可能性が高い。

消費財出荷指数は21年10-12月期の前期比6.1%の後、22年1月は前月比▲6.2%となった。自動車の落ち込みを主因として耐久消費財が前月比▲12.5%の大幅低下となった(非耐久消費財は同0.5%)。

GDP統計の民間消費は、緊急事態宣言の解除を受けて21年10-12月期に前期比2.7%の高い伸びとなったが、22年に入ってから状況は一変している。21年末にかけて急回復した外食、旅行などの対面型サービス消費が22年入り後は弱い動きとなっていることに加え、財消費も自動車を中心に低調となっている。22年1-3月期の民間消費は減少に転じる可能性が高い。

2.生産は下振れリスクの高い状態が続く

製造工業生産予測指数は、22年2月が前月比5.7%、3月が同0.1%となった。生産計画の修正状況を示す実現率(1月)、予測修正率(2月)はそれぞれ▲6.7%、▲3.5%であった。自動車の実現率が▲16.6%、予測修正率が▲11.3%となっており、前月の計画から大きく下振れた。

予測指数を業種別にみると、1月に前月比▲15.6%の大幅減少となった輸送機械は、2月が前月比12.3%、3月が同13.1%の大幅増産計画となっている。ただし、2、3月の予測指数は2/10時点で調査されている。その後、一部の自動車メーカーから生産計画の下方修正が公表されており、実際の生産は大きく下振れる可能性が高い。
最近の実現率、予測修正率の推移/輸送機械の生産、在庫動向
22年1月の生産指数を2、3月の予測指数で先延ばしすると、22年1-3月期の生産は前期比4.1%となる。ただし、供給制約に伴う工場の稼働停止によって自動車の生産計画が下方修正される可能性が高いこと、まん延防止等重点措置の影響で個人消費が弱い動きになっていることを踏まえれば、実際の生産は大きく下振れることが見込まれる。現時点では、22年1-3月期の生産は前期比1%台の増加を予想しているが、当面は下振れリスクの高い状態が続くだろう。
 
 

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経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎 (さいとう たろう)

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴
  • ・ 1992年:日本生命保険相互会社
    ・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
    ・ 2019年8月より現職

    ・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2018年~ 統計委員会専門委員

(2022年02月28日「経済・金融フラッシュ」)

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