2022年02月01日

雇用関連統計21年12月-対面型サービス業を中心に持ち直すが、22年入り後は足踏みの可能性

経済研究部 経済調査部長 斎藤 太郎

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1.失業率は前月から0.1ポイント低下の2.7%

完全失業率と就業者の推移 総務省が2月1日に公表した労働力調査によると、21年12月の完全失業率は前月から0.1ポイント低下の2.7%(QUICK集計・事前予想:2.8%、当社予想も2.8%)となった。労働力人口が前月から43万人の増加となる中、就業者が前月から49万人増加したため、失業者は前月から▲6万人減の186万人(いずれも季節調整値)となった。
労働力人口は8~10月の3ヵ月で▲99万人減少したが、11、12月の2ヵ月で56万人の増加となった。緊急事態宣言の解除を受けて、一時的に労働市場から退出した人の労働参加が進んだ。
産業別・就業者数の推移/雇用形態別雇用者数
就業者数は前年差▲7万人減(11月:同▲57万人減)と4ヵ月連続で減少したが、減少幅は大きく縮小した。産業別には、緊急事態宣言解除後のサービス消費の回復を受けて、宿泊・飲食サービス(11月:前年差▲19万人→12月:同▲3万人減)、生活関連サービス・娯楽(11月:前年差▲26万人減→12月:同▲9万人減)の減少幅が大きく縮小した。
 
雇用者数(役員を除く)は前年に比べ15万人増(11月:同▲38万人減)と3ヵ月ぶりの増加となった。雇用形態別にみると、正規の職員・従業員数が前年差10万人増(11月:同▲1万人減)と2ヵ月ぶりの増加となったことに加え、非正規の職員・従業員数が前年差4万人増(11月:同▲37万人減)と5ヵ月ぶりの増加となった。ただし、非正規の職員・従業員数をコロナ前の19年12月と比べると▲82万人の大幅減少となっている(11月は前々年差▲99万人減)。

2.対面型サービス業の休業率が低下

主な産業別休業率 休業者数は189万人となり、前年に比べて▲13万人の減少(11月:同▲11万人減)となった。

休業率(休業者/就業者)を産業別にみると、飲食店(11月:3.8%→12月:2.2%)、宿泊業(11月:4.0%→12月:1.9%)、娯楽業(11月:2.9%→12月:2.8%)がいずれも前月から低下した。特に、緊急事態宣言解除後の外食、旅行需要の回復を反映し、飲食店、宿泊業の休業率がコロナ禍では最も低い水準となった(休業率は原数値)。

3.求人数は増加が続く

厚生労働省が12月28日に公表した一般職業紹介状況によると、21年12月の有効求人倍率は前月から0.01ポイント上昇の1.16倍(QUICK集計・事前予想:1.16倍、当社予想も1.16倍)となった。有効求人数が前月比1.8%の増加となり、有効求職者数の伸び(同1.6%)を上回った。
有効求人倍率の推移 有効求人倍率の先行指標である新規求人倍率は前月から0.17ポイント上昇の2.30倍となった。新規求人数が前月比4.5%の高い伸びとなる一方、新規求職申込件数が同▲3.0%の減少となったことが、求人倍率の大幅改善につながった。

有効求人数は6ヵ月連続、新規求人数は5ヵ月連続で増加しており、人手不足感の強さを背景に企業の採用意欲は高まっている。
 
21年9月末の緊急事態宣言解除を受けて、雇用情勢は対面型サービス業を中心に年末にかけて持ち直しの動きとなった。ただし、22年入り後は、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、34都道府県でまん延防止等重点措置が適用されている。年末にかけて回復したサービス消費は再び弱い動きになっているとみられるため、雇用情勢の改善は足踏みとなる可能性が高いだろう。
 
 

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斎藤 太郎 (さいとう たろう)

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴
  • ・ 1992年:日本生命保険相互会社
    ・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
    ・ 2019年8月より現職

    ・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2018年~ 統計委員会専門委員

(2022年02月01日「経済・金融フラッシュ」)

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