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今後5年間の韓国のリーダーになるのは誰だろうか?-李在明、尹錫悦候補の経済政策、不動産政策、労働政策を比較する-

生活研究部 上席研究員・ヘルスケアリサーチセンター・ジェロントロジー推進室兼任 金 明中
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1――最近の支持率は尹錫悦候補がリード
一方、韓国の世論調査会社「エムブレインパブリック」、「ケイスタットリサーチ」、「コリアリサーチ」、「韓国リサーチ」が共同で実施(調査期間は2月14日~16日、調査対象は成人1,012人)し、2月17日に発表した「全国指標調査(NBS:National Barometer Survey)」によると、2月3週目の尹候補の支持率は40%と1週間前の35%から5ポイントも上昇し、李候補の31%を大きく上回った。
2――李在明、尹錫悦候補の主な公約は?
実は、投票日まで15日を切った2月24日現在まで、両候補は多くの公約を発表してきた。両候補が公約とした政策には、どのような差があるのだろうか。今回は、両候補が今まで発表した公約を中心に、経済政策、不動産政策、労働政策について簡単に比較をした。次の二つの表は、李在明、尹錫悦候補のプロフィールと主な政策を比較したものである。
3――李在明、尹錫悦候補の主な経済政策比較
李候補は、基本的に政府の財政支出を拡大し、インフラを構築すると共に先端・基礎科学分野に投資し、未来型人材を育成する計画である。また、経済成長については「555公約」を挙げている。「555公約」とは、大統領任期の5年間で国力を世界第5位にし、一人当たり国民所得を5万ドルにする、そして韓国総合株価指数(KOSPI)を5,000まで引き上げるという経済目標である。
一方、再分配政策としては基本シリーズと言われる「基本所得(ベーシックインカム)」、「基本住宅」、「基本貸出」を実施することを表明している。「基本所得」とは、政府が全国民に一定金額の現金を定期的かつ継続的に支給する制度であり、李候補は増税分を財源に段階的に「基本所得」を支給・拡大したいと考えている。
また、住宅を所有していない人に相対的に安い賃貸料で30年以上居住できる「基本住宅」を供給し、全国民が長期間(10年~20年)にわたり、最大1000万ウォンまで政府から低金利でお金が借りられる「基本貸出」も実施することを明らかにした。増加した政府支出に対する財源は、基本所得炭素税、基本所得目的税、基本所得土地税などの増税により賄う予定だ。
李候補が「基本シリーズ」、「555公約」、「政府の財政支出拡大」等の経済政策を推進する計画であることに比べて、野党「国民の党」の尹候補は、「力強い成長」、温かい福祉、成長と福祉における公正性の確保」を主な内容とする、いわゆる「Yノミクス」に基づいて経済政策を実施する方針だ。
尹候補は、政府の介入よりは市場の役割を重視し、民間中心の経済成長を推進したいと考えている。また、コロナにより増加した国の負債を減らすために、国の財政支出を縮小する等、財政の健全化を追求する考えだが、法人税、付加価値税などの増税策については否定的な立場を示している。さらに、証券取引税や総合不動産税も廃止する方針だ。
進歩・改革系である李候補が財政支出拡大と増税を考えているのに対して、保守系である尹候補は財政支出縮小による財政健全化と減税を推進しようとしている。このような政治路線による財政政策などの違いは歴代政権からも確認できる。
歴代政権における在任期間中の予算増加率をみると、進歩・改革系政権の予算増加率は保守系政権に比べて相対的に高くなっている。例えば、進歩・改革系だった金大中、盧武鉉元大統領の在任期間中の予算増加率はそれぞれ31.6%と117.4%と保守系の李明博、朴槿恵元大統領時代の 20.2%と 13.0%を大きく上回っている。さらに、まだ任期中であるが進歩・改革系の文在寅大統領の予算増加率も39.3%と保守系政権よりも高い。
(2022年02月24日「基礎研レポート」)

生活研究部 上席研究員・ヘルスケアリサーチセンター・ジェロントロジー推進室兼任
金 明中 (きむ みょんじゅん)
研究・専門分野
高齢者雇用、不安定労働、働き方改革、貧困・格差、日韓社会政策比較、日韓経済比較、人的資源管理、基礎統計
03-3512-1825
- プロフィール
【職歴】
独立行政法人労働政策研究・研修機構アシスタント・フェロー、日本経済研究センター研究員を経て、2008年9月ニッセイ基礎研究所へ、2023年7月から現職
・2011年~ 日本女子大学非常勤講師
・2015年~ 日本女子大学現代女性キャリア研究所特任研究員
・2021年~ 横浜市立大学非常勤講師
・2021年~ 専修大学非常勤講師
・2021年~ 日本大学非常勤講師
・2022年~ 亜細亜大学都市創造学部特任准教授
・2022年~ 慶應義塾大学非常勤講師
・2024年~ 関東学院大学非常勤講師
・2019年 労働政策研究会議準備委員会準備委員
東アジア経済経営学会理事
・2021年 第36回韓日経済経営国際学術大会準備委員会準備委員
【加入団体等】
・日本経済学会
・日本労務学会
・社会政策学会
・日本労使関係研究協会
・東アジア経済経営学会
・現代韓国朝鮮学会
・韓国人事管理学会
・博士(慶應義塾大学、商学)
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