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2022年01月28日
1――イラン暦とは
イラン暦は、グレゴリオ暦と同じく、「地球が太陽の周りを回る周期(太陽年)を基にして作られた暦」2である、太陽暦である3。そのため、グレゴリオ暦と同じで、基本的に1年は365日であり、うるう年に366日となる4。英語ではSolar Hijri Calendarと呼ばれ、イランに加え、イランと同じくペルシア語が公用語である5アフガニスタンでも正式に用いられている6。イラン暦の新年は、天文学的に決定された春分に始まるため7、イラン暦では、グレゴリオ暦でいうところの3月21日か、3月20日が新年の始まりの日となる8。
2 太陽暦, 天文学辞典(公益社団法人日本天文学会)(https://astro-dic.jp/solar-calendar/, 2022年1月20日アクセス)
3 吉枝 (2011)
4 Heydari-Malayeri (2004)
5 吉枝 (2011)
6 Bikos, K “The Persian Solar Hijri Calendar” (https://www.timeanddate.com/calendar/persian-calendar.html, 2022年1月20日アクセス)
7 Borkowski (1996)
8 天文学的な春分の瞬間が、イラン時間で午前の場合は、その日がイラン暦での新年の1日目となり、午後の場合は、翌日が、イラン暦での新年の1日目となる(Borkowski, 1996)。Borkowski (1996)に掲載された春分の瞬間の時間の表によると、少なくとも2000年から2099年までの間では、イランの現地時間での春分の瞬間が訪れるのは3月19日の午後から3月21日の午前の間であることが確認できる。そのため、イランの新年が始まる日は、3月20日か3月21日と記載したが、春分の瞬間の時間によって、別の日付となる可能性を否定するものではない。
2 太陽暦, 天文学辞典(公益社団法人日本天文学会)(https://astro-dic.jp/solar-calendar/, 2022年1月20日アクセス)
3 吉枝 (2011)
4 Heydari-Malayeri (2004)
5 吉枝 (2011)
6 Bikos, K “The Persian Solar Hijri Calendar” (https://www.timeanddate.com/calendar/persian-calendar.html, 2022年1月20日アクセス)
7 Borkowski (1996)
8 天文学的な春分の瞬間が、イラン時間で午前の場合は、その日がイラン暦での新年の1日目となり、午後の場合は、翌日が、イラン暦での新年の1日目となる(Borkowski, 1996)。Borkowski (1996)に掲載された春分の瞬間の時間の表によると、少なくとも2000年から2099年までの間では、イランの現地時間での春分の瞬間が訪れるのは3月19日の午後から3月21日の午前の間であることが確認できる。そのため、イランの新年が始まる日は、3月20日か3月21日と記載したが、春分の瞬間の時間によって、別の日付となる可能性を否定するものではない。
2――イラン暦とグレゴリオ暦の日付
イラン暦とグレゴリオ暦はどちらも太陽暦で、基本的には1年365日であるのに、イラン暦の新年を迎える日が、グレゴリオ暦でいうところの3月21日の年があったり、3月20日の年があったりするのはどうしてか。それは、うるう年となる年が、グレゴリオ暦とイラン暦でいつも同じではないためである9。新年の日付以外についても、うるう年となるタイミングやうるう年に日付が追加されるタイミングの違いによって、グレゴリオ暦でいうところの日付は変化するので、グレゴリオ暦の日付とイラン暦の日付は必ずしも毎年同じように対になっているわけではない。
9 グレゴリオ暦でのうるう年は、「(1)西暦年号が4で割り切れる年をうるう年とする。(2)(1)の例外として、西暦年号が100で割り切れて400で割り切れない年は平年とする。」((質問3-6)どの年がうるう年になるの?国立天文台(https://www.nao.ac.jp/faq/a0306.html, 2022年1月20日アクセス)と決められている。一方、イラン暦のうるう年は、春分の瞬間の時間によって決まる(Borkowski, 1996)。
9 グレゴリオ暦でのうるう年は、「(1)西暦年号が4で割り切れる年をうるう年とする。(2)(1)の例外として、西暦年号が100で割り切れて400で割り切れない年は平年とする。」((質問3-6)どの年がうるう年になるの?国立天文台(https://www.nao.ac.jp/faq/a0306.html, 2022年1月20日アクセス)と決められている。一方、イラン暦のうるう年は、春分の瞬間の時間によって決まる(Borkowski, 1996)。
3――イラン暦の年
イラン暦ではイスラム教の預言者がメッカからメディナへ拠点を移したヒジュラの年を紀元としており、ヒジュラは、西暦622年である10。つまり、西暦からイラン暦の年数を確認する場合は、その年のイラン暦での新年の日付(3月20日か3月21日)の前日までは、西暦の年数から622を引き、イラン暦での新年の日付以降は、西暦の年数から621を引くと、イラン暦の年が計算できる11。例えば、西暦2022年は、3月21日を迎えるまではイラン暦で1400年、3月21日以降はイラン暦で1401年となる。
10 Borkowski (1996)
11 吉枝 (2011)
10 Borkowski (1996)
11 吉枝 (2011)
4――イラン暦の月の名前
12 Bikos, K “The Persian Solar Hijri Calendar” (https://www.timeanddate.com/calendar/persian-calendar.html, 2022年1月20日アクセス)
5――ペルシア語の曜日
13 吉枝 (2011)
14 加藤 (2006)
15 “Redefining public holidays, weekends: how efficient is that?” Tehran Times, 2018, January 6, https://www.tehrantimes.com/news/420048/Redefining-public-holidays-weekends-how-efficient-is-that, 2022年1月20日アクセス)
6――イランのカレンダー
図1は、本稿の掲載日付であるグレゴリオ暦での西暦2022年1月28日(金)が含まれる、イラン暦の11月(bahman)のカレンダーである。黄色で示された日付がグレゴリオ暦での西暦2022年1月28日にあたる日で、イラン暦では、1400年11月8日である。
イランでは、カレンダーや、電話番号、車のナンバーなどの数字も、ペルシア語の数字で記載されていることが多い。そのため、ペルシア語の数字で記載された一般的なカレンダーの例を紹介する。ペルシア語の数字の0~9は順に、۰ ۱۲۳۴۵۶۷۸۹で表される。ペルシア語の文章は右から左に書かれるが、数字は左から右に書かれる16。例えば、アラビア数字の10は、ペルシア語で۱۰と書かれる。
図1のペルシア語のカレンダーを、日本語に直訳したもの(数字はアラビア数字に変換)が、図2である。日本で一般的に使われているカレンダーでは左から右に日付が進んでいくものが多いが、イランでは、こちらのように、右から左に日付が進んでいくタイプのカレンダーがよく見られる。
イランでは、カレンダーや、電話番号、車のナンバーなどの数字も、ペルシア語の数字で記載されていることが多い。そのため、ペルシア語の数字で記載された一般的なカレンダーの例を紹介する。ペルシア語の数字の0~9は順に、۰ ۱۲۳۴۵۶۷۸۹で表される。ペルシア語の文章は右から左に書かれるが、数字は左から右に書かれる16。例えば、アラビア数字の10は、ペルシア語で۱۰と書かれる。
図1のペルシア語のカレンダーを、日本語に直訳したもの(数字はアラビア数字に変換)が、図2である。日本で一般的に使われているカレンダーでは左から右に日付が進んでいくものが多いが、イランでは、こちらのように、右から左に日付が進んでいくタイプのカレンダーがよく見られる。
16 吉枝 (2011)
7――イランの日常生活の中で見られる日付
8――おわりに
イラン出身の方と話していて、ご自身の母親の誕生日を何月何日「頃」と表現されていて、なぜ「頃」なんだろう、と思ったことがあった。その背景には、本稿で紹介したような、イラン暦とグレゴリオ暦の間の少し複雑な日付の対応関係があったようだ。もし、イランにいる人の誕生日当日にお祝いの連絡をしたい場合は気を付けるようにしたい。ある年にグレゴリオ暦でいうところの12月30日が誕生日だった人の、次の年の誕生日は、グレゴリオ暦でいうところの12月29日かもしれないからである。
参考文献
Bikos, K “The Persian Solar Hijri Calendar” (https://www.timeanddate.com/calendar/persian-calendar.html, 2022年1月20日アクセス)
Borkowski, K.M. (1996) The Persian calendar for 3000 years, Earth, Moon, and Planetsss, 74, No. 3, 223–230(http://www.astro.uni.torun.pl/~kb/Papers/EMP/PersianC-EMP.htm, 2022年1月20日アクセス)
Heydari-Malayeri, M. (2004). "A concise review of the Iranian calendar". Paris Observatory.
(http://aramis.obspm.fr/~heydari/divers/ir-cal-eng.pdf, 2022年1月20日アクセス)
加藤順一 (2006) 『はじめてのイラン国語(ペルシャ語)書き方・読み方』南雲堂フェニックス
中村亮一 (2019.5.13) 「現在の暦年はなぜ冬の1月という時期からスタートするのか?」基礎研レター(https://www.nli-research.co.jp/report/detail/id=61509?pno=1&site=nli, 2022年1月20日アクセス)
吉枝聡子 (2011) 『ペルシア語文法ハンドブック』白水社
03-3512-1882
(2022年01月28日「基礎研レター」)
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