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ベトナム保険市場(2020年版)
保険研究部 常務取締役 研究理事 兼 ヘルスケアリサーチセンター長・ジェロントロジー推進室研究理事兼任 松澤 登
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1――はじめに
名目GDP総額は2712億ドル、一人当たり名目GDPが2779ドルで、東南アジアでベトナムの7割程度の人口を持つタイの約半分程度である。
新型コロナ前の実質GDP成長率の伸びは、ここのところ6~7%台を継続的に記録し、堅調な成長を続けてきていた。ただ、2020年に新型コロナ禍による影響はベトナムにも及び、名目GDP成長率は2.91%と減少した。しかし、他のアセアン諸国が軒並みマイナス成長に落ち込む中では健闘をしたといえる。
ベトナム経済は農林水産業中心から工業およびサービス業へと重心を移してきており、ベトナム統計総局の資料によれば、農林水産業は全産業のうちのシェアが14.85%で2016年比マイナス1.47%ポイントである一方、工業・建設業のシェアが33.72%で2016年比プラス1%ポイント、サービス業は41.63%で2016年比プラス0.71%ポイントとなっている。新型コロナ禍にもかかわらず、輸出入は好調を続け、輸出額は2827億ドルで前年比7.0%増となり、輸入額は2627億ドルで、同じく3.7%増となり、輸出入額の合計は5453億ドルとなった。
失業率は全体として2.48%と、継続して低下傾向にあった昨年の2.17%より上昇した。なお、新型コロナの影響についてであるが、ベトナムでは感染第一波を受け2020年3月31日に厳格な全社会隔離措置を導入した。また、2020年7月下旬から第二波を受けたが、その影響は限定的とされていた。
本稿ではベトナム財務省保険監督部が発行した2020ベトナム保険市場年次レポート2のデータを元にベトナム生命保険市場について解説を行う。以降の数字、図表は同レポートよりの引用である。なお、直近のデータとして2021年10月までの保険販売状況が公表されているので、「おわりに」で簡単に紹介したい。
1 各種数値は世界銀行推計、外務省HPで異なるが、ここではベトナム統計総局の数値を利用。https://www.gso.gov.vn/en/data-and-statistics/2021/07/statistical-yearbook-of-2020/
2 「The Annual Report of Vietnam Insurance Market 2020」ベトナム財務省HP参照。
2――保険市場の概況
保険市場の改革により、1994年に民間保険会社の設立が許容され、1995年には生命保険の販売が再開された。また、1996年には外資系保険会社とベトナム国内社の合弁会社の設立が、1999年には外資系保険会社の100%子会社設立が認められるようになった。これを受け、1999年にPrudentialとManulifeが参入し、以降、外資の参入の本格化が進んだ。2020年末の生命保険会社数は18社である。
市場規模としては、収入生命保険料が年間129兆2910億ドン(6465億円(2021年末円ドン為替レート1円=200ドンで計算、以下同じ))である。ベトナムにおける生命保険の市場浸透率(Insurance Penetration、対GDP保険料収入)は上昇し続けており、2.08%(2018年1.77%)となった。
3――新契約の状況
新契約について、主契約に係る収入保険料は37兆0670億ドン(1853億円)で対前年20.43%増となった。付保保険金額は1356兆1730億ドン(6兆7808億円)で対前年13.47%増となった。個人保険の平均付保保険金額は4億1980万ドン(210万円)となっている。団体保険の平均付保保険金額は一団体当たり502億ドン(2億5100万円)で、加入者一人当たりに直すと1億020万ドン(51万円)となっている。
新契約の会社別マーケットシェア(新規収入保険料ベース)であるが、大きく順位変動した2019年とは異なり、順位はほぼ変動していない。収入保険料ベースで順に、Manulife (19.71%)、Bao Viet Life(15.09%)、Prudential(14.06%)、Dai-ichi(第一生命ベトナム、12.53%)、AIA(10.58%)、MB Ageas(4.90%)、Generali (4.83%)となった(図表1)。
新契約を見ると、2018年にシェアトップを獲得したManulifeが前年比2%ポイント増と順調にシェアを伸ばしたかわりに、二位のBao Viet Life以下の会社はそれぞれシェアを落とした。
3 ユニットリンク保険とユニバーサル保険とをまとめて投資連動型保険として分類している。
4――保有契約の状況
保有契約について、上述の通り、収入保険料が年間129兆2910億ドン(6465億円)で、前年比21.04%増となった。また、付保保険金額は3789兆0660億ドン(18兆9453億円)で前年比37.03%増となった。
保有契約の収入保険料ベースの会社別マーケットシェアであるが、新規契約シェアの変動が小さかった関係で、保有契約シェアはそれぞれ変動したものの、順位の交代はなかった。
まず、老舗であるBao Viet Life(21.69%)は2ポイント以上シェアを落としたものの首位を維持した。また、Prudential(20.82%)がシェアを落としつつも2位を維持した。Manulife(15.48%)は好調な新契約もあってシェアを上げたが3位にとどまった。以下、Dai-ich(12.08%)、AIA(11.14%)、Chubb (3.22%)、Generali(2.92%)と続く(図表3)。
5――販売チャネル
エージェントについては、個人エージェントが増加した一方で、法人代理店および法人代理店に属するエージェント数は減少した。結果として、個人エージェント(営業職員等)と、法人に属するエージェントを足した数は895,438名に達し、対前年2.87%増となった(図表5)。
6――おわりに
第5波は11月頃から拡大し、最近では一日の感染者数は一週間平均で1万9千人台に達している。経済への悪影響は避けられないと思われる。
ただ、ベトナム財務省の公表資料によれば、2021年の最初の10カ月における生命保険契約の収入保険料は前年同時期に比べ、21.8%増の123兆5920億ドン(6180億円)となったとのことであり、引き続き好調を持続している。
ベトナムの売れ筋商品は投資型商品なので、新型コロナによる疾病・死亡に対するニーズが増えたとは考えにくい。失業率がそれほど悪化しているわけではないことを考え合わせると、むしろ貯蓄・投資ニーズが引き続き強いと考えるべきと思われる。
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(2022年01月17日「保険・年金フォーカス」)
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