コラム
2021年12月28日

中古マンション、新築・中古戸建市場の動向-相対的に安価な中古マンションや戸建の購入者が増加

金融研究部 准主任研究員   渡邊 布味子

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1. はじめに

住宅の価格の相対的な高さを図る指標の一つに年収倍率(住宅の購入価格を購入者の年収で割った値)がある。住宅金融支援機構によると、住宅の年収倍率は長期的に上昇を続けており、2020年度の住宅の種類別では、土地付注文住宅7.4倍、新築マンション7.0倍の年収倍率が高い(図表1)。

厚生労働省が公表する毎月勤労統計調査によると、現金給与総額指数(2015年平均=100)は、コロナ禍前の2019年でも102.1と大きな伸びはなく、コロナ禍後の2021年1から9月の平均は96.2と大きく低下している。首都圏新築マンションについては以前に述べた1ように、価格はさらに高くなっている。相対的に高額な注文住宅や新築マンションの購入をやめ、相対的に安価な中古マンションや中古戸建を検討している人も多いだろうが、これらの住宅の価格動向はどうだろうか、確認してみたい。
図表1 年収倍率(住宅の種類別、全国)

2. 全国的な動向

国土交通省の不動産価格指数(マンション、2010年=100)は、2021年8月に北海道地方225、東北地方220、南関東圏163、名古屋圏166、京阪神圏172、九州・沖縄地方218となった2(図表2)。この指数は新築と中古の区分はないが、マンション市場全体として、ここ10年の間に大きく上昇してきたことを示している。

一方、不動産価格指数(戸建住宅、2010年=100)は、2021年8月は北海道地方131、東北地方116、南関東圏108、名古屋圏111、京阪神圏111、九州・沖縄地方105となった(図表3)。戸建も上昇傾向ではあるが、上昇幅はマンションに比べて小さく、戸建は相対的に割安になっている。
図表2 不動産価格指数(マンション)/図表3 不動産価格指数(戸建住宅)
 
2 不動産価格指数(マンション、戸建)の各エリア :南関東圏(東京都、埼玉県、千葉県、神奈川県)、京阪神圏(大阪府、京都府、兵庫県)名古屋圏(愛知県、岐阜県、三重県)

3. 首都圏、近畿圏、中部圏の中古マンション

中古マンションの価格と販売動向を見てみたい。2021年11月の中古マンションの成約価格は、首都圏(東日本レインズ)が3,897万円(2019年同月比+9.8%)、近畿圏(近畿レインズ)が2,626万円(同+13.8%)、中部圏(中部レインズ)2,141万円(同+9.7%)となった3(図表4)。

また、2021年1月から11月の累計成約戸数は、首都圏が3.7万戸(2019年同期比+4.6%)、近畿圏が1.6万戸(同▲0.6%)、中部圏が0.6万戸(同▲1.3%)となっている。一方で、2021年11月の在庫戸数は首都圏が3.5万戸(2020年1月比▲25.7%)、近畿圏が1.5万戸(同▲14.0%)、中部圏が0.6万戸(同▲9.4%)となった(図表5)。

中古住宅は、居住者が転居しなければ売却できず、供給量が限られる。首都圏、近畿圏、中部圏ともに中古マンションの価格はコロナ禍以前よりも上昇し、成約戸数も増加しているが、特に首都圏では在庫数が大きく減少している。強い住宅需要を背景に、新築マンションに比べて相対的に安価となった中古マンションが数多く購入されていると考えられる。
図表4 中古マンションの価格/図表5 中古マンションの在庫戸数
 
3 レインズの各エリア :首都圏(東京都、埼玉県、千葉県、神奈川県)、近畿圏(大阪府、兵庫県、京都府、滋賀県、奈良県、和歌山県)中部圏(愛知県、岐阜県、三重県、静岡県、福井県、石川県、富山県)

4. 首都圏、近畿圏、中部圏の戸建

戸建の動向も見てみよう。2021年11月の新築戸建の平均価格は、東京カンテイによると首都圏が4,016万円(2019年同月比+4.4%)、近畿圏が3,301万円(同+3.6%)、中部圏が3,241万円(同+5.5%)となった4。新築マンションの価格高騰から相対的に魅力が増した新築戸建てへの需要が強くなっていると見られる。

2021年11月の中古戸建の成約価格は、首都圏(東日本レインズ)が3,579万円(2019年同月比+15.9%)、近畿圏(近畿レインズ)が2,233万円(同+7.8%)、中部圏(中部レインズ)2,154万円(同+8.4 %)となった(図表6)。

また、中古戸建の成約戸数の2021年1月から11月の累計は、首都圏が1.4万戸(2019年同期比+18.6%)、近畿圏が1.0万戸(同+2.8%)、また中部圏が0.4万戸(同+3.0%)と、特に首都圏で増加している。一方で、2021年11月の在庫戸数は首都圏が1.3万戸(2020年1月比▲43.0%)、近畿圏が1.2万戸(同▲22.9%)、中部圏が0.8万戸(同▲21.5%)となった(図表7)。

中古戸建も供給が限定的であり、特に首都圏では供給量が少ない。中古戸建の価格が上昇し、成約戸数が増加し、在庫の減少割合も中古マンションより大きいことから、需要がかなり高まっているとみられる。
図表6 中古戸建の成約価格/図表7 中古戸建の在庫戸数
 
4 東京カンテイの各エリア:首都圏(東京都、埼玉県、千葉県、神奈川県)、近畿圏(大阪府、兵庫県、京都府、滋賀県、奈良県、和歌山県)、中部圏(愛知県、岐阜県、三重県、静岡県)

5. まとめ

マンションと戸建のいずれが良いかは、使い勝手、必要な費用、管理の方法、耐用年数などが異なり、一概には言えない。しかし、現在の住宅市場では新築マンション価格が高騰しており、相対的に安価となった新築戸建や中古マンション・戸建のニーズも増えているようだ。尚、中古市場では、マンションも戸建ても在庫が減少し、市場からは手ごろで状態の良い物件が減少していると推定される。住宅価格は毎年3月が最も価格が高まる時期であるが、特に人口の集中する都市部では、今後も引き続き供給量の減少と需要増による一層の価格上昇が懸念される。

一方で、新築住宅用地の高騰から中古住宅を大手住宅業者が積極的に取り扱う事例が出てきている。コロナ禍前は日本で取引される住宅は8割が新築で、中古住宅の人気はさほどなく、成約までは期間を要する傾向があったが、大手が出てくることで中古住宅が売買しやすい状況になっていくのではないだろうか。
 
 

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金融研究部   准主任研究員

渡邊 布味子 (わたなべ ふみこ)

研究・専門分野
不動産市場、不動産投資

(2021年12月28日「研究員の眼」)

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