- シンクタンクならニッセイ基礎研究所 >
- 不動産 >
- 不動産市場・不動産市況 >
- 首都圏新築マンションの動向-発売戸数は2019年の水準を回復、エリア別では供給・価格動向に相違
2021年11月09日
文字サイズ
- 小
- 中
- 大
■要旨
2020年前半の新築マンション市場では、多くの人が購入を見送ったが、2020年後半以降の発売戸数は徐々に回復し、最近では在宅勤務の広がりから自宅の居住環境や作業環境が重視されるなど、マンション需要は大きく回復した。首都圏の初月契約率は、2021年1月以降68%から76%で推移しており、現在は好調といって良く、価格も上昇傾向である。
しかし、エリア別の動向には違いが生じている。2019年の水準を回復していないエリアでは、コロナ禍に関係なく、元々2019年末から減速傾向が強かったと思われる。平均発売価格の上昇幅が大きいエリアでは、供給面からの一時的な価格上昇ではなくエリア全体の価格水準が上方修正されている可能性が高い。また、「東京23区」と「千葉県その他」はコロナ禍によるスペース拡大等の需要増を受けて物件取得競争による価格上昇があったとみられるが、2021年半ばでは落ち着いている模様だ。「東京23区」では既にかなり高水準の価格となっており、そのエリアで購入希望ではあるものの、収入面で購入できなくなり、需要が低迷してきている可能性がある。
エリア別の動向に差が生じた原因の一つに、コロナ禍の世帯年収への影響が考えられる。コロナ禍下では、世帯年収(2020年)が低いほど、世帯生活の程度がコロナ禍前より「低下した」と回答している。2020年の年収は、特に時間外手当とボーナスの減少が大きく、借入可能額の減少を通じて価格水準が4000万円半ばのエリアの価格を停滞させていると推定される。また、2021年の時間外手当やボーナスは2019年の水準には戻っておらず、今年の価格動向が下落となっているエリアについては、来年も価格と売行きが停滞する可能性があるのではないだろうか。
とはいえ、新築マンションの価格の大きな下落は、バブル崩壊のあった1990年から1995年ごろなど限られた期間でしか起こっておらず、今後も大きな価格下落は考えにくい。今後も新築マンションは、マンション販売業者が供給量を減らして価格を維持していく可能性が高い。従って、全体的な傾向としては、首都圏新築マンションの価格は、当面は引き続き緩やかに価格上昇が続き、高い水準が維持されていくと思われる。まずは、マンション需要が一旦落ち着くと予想される2022年4月以降の動向に注目したい。
■目次
1. 首都圏新築マンションの発売戸数(供給量の推移)
2. 2021年上半期の首都圏新築マンションの売買動向は好調であった
3. 首都圏新築マンションのエリア別の動向には違いが生じてきている
(1) 発売戸数の動向
(2) 価格動向
4. なぜエリアによって差が生じたのか
(1) ターゲット層の世帯年収の減少している
(2) エリアの特徴によって、ニーズの変化から受ける影響の大きさは違う
5. 当面は供給調整により価格上昇が続く見込みか
2020年前半の新築マンション市場では、多くの人が購入を見送ったが、2020年後半以降の発売戸数は徐々に回復し、最近では在宅勤務の広がりから自宅の居住環境や作業環境が重視されるなど、マンション需要は大きく回復した。首都圏の初月契約率は、2021年1月以降68%から76%で推移しており、現在は好調といって良く、価格も上昇傾向である。
しかし、エリア別の動向には違いが生じている。2019年の水準を回復していないエリアでは、コロナ禍に関係なく、元々2019年末から減速傾向が強かったと思われる。平均発売価格の上昇幅が大きいエリアでは、供給面からの一時的な価格上昇ではなくエリア全体の価格水準が上方修正されている可能性が高い。また、「東京23区」と「千葉県その他」はコロナ禍によるスペース拡大等の需要増を受けて物件取得競争による価格上昇があったとみられるが、2021年半ばでは落ち着いている模様だ。「東京23区」では既にかなり高水準の価格となっており、そのエリアで購入希望ではあるものの、収入面で購入できなくなり、需要が低迷してきている可能性がある。
エリア別の動向に差が生じた原因の一つに、コロナ禍の世帯年収への影響が考えられる。コロナ禍下では、世帯年収(2020年)が低いほど、世帯生活の程度がコロナ禍前より「低下した」と回答している。2020年の年収は、特に時間外手当とボーナスの減少が大きく、借入可能額の減少を通じて価格水準が4000万円半ばのエリアの価格を停滞させていると推定される。また、2021年の時間外手当やボーナスは2019年の水準には戻っておらず、今年の価格動向が下落となっているエリアについては、来年も価格と売行きが停滞する可能性があるのではないだろうか。
とはいえ、新築マンションの価格の大きな下落は、バブル崩壊のあった1990年から1995年ごろなど限られた期間でしか起こっておらず、今後も大きな価格下落は考えにくい。今後も新築マンションは、マンション販売業者が供給量を減らして価格を維持していく可能性が高い。従って、全体的な傾向としては、首都圏新築マンションの価格は、当面は引き続き緩やかに価格上昇が続き、高い水準が維持されていくと思われる。まずは、マンション需要が一旦落ち着くと予想される2022年4月以降の動向に注目したい。
■目次
1. 首都圏新築マンションの発売戸数(供給量の推移)
2. 2021年上半期の首都圏新築マンションの売買動向は好調であった
3. 首都圏新築マンションのエリア別の動向には違いが生じてきている
(1) 発売戸数の動向
(2) 価格動向
4. なぜエリアによって差が生じたのか
(1) ターゲット層の世帯年収の減少している
(2) エリアの特徴によって、ニーズの変化から受ける影響の大きさは違う
5. 当面は供給調整により価格上昇が続く見込みか
(2021年11月09日「不動産投資レポート」)
このレポートの関連カテゴリ
03-3512-1853
経歴
- 【職歴】
2000年 東海銀行(現三菱UFJ銀行)入行
2006年 総合不動産会社に入社
2018年5月より現職
・不動産鑑定士
・宅地建物取引士
・不動産証券化協会認定マスター
・日本証券アナリスト協会検定会員
・2022年、2023年 兵庫県都市計画審議会専門委員
渡邊 布味子のレポート
| 日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
|---|---|---|---|
| 2025/09/25 | 「持ち家か、賃貸か」。法的視点から「住まい」を考える(5)~「所有権」の制限:「共有」は原則、共有者全員の同意が必要 | 渡邊 布味子 | 研究員の眼 |
| 2025/09/18 | 不動産投資市場動向(2025年上期)~日本市場の取引額は高水準を維持。グローバル市場は回復基調を辿るも依然低調 | 渡邊 布味子 | 不動産投資レポート |
| 2025/08/25 | 「持ち家か、賃貸か」。法的視点から「住まい」を考える(4)~「所有権」の制限:「公法上の制限」は公共の福祉のため~ | 渡邊 布味子 | 研究員の眼 |
| 2025/08/12 | 東京オフィス市場は賃料上昇継続。宿泊需要は伸び率が鈍化-不動産クォータリー・レビュー2025年第2四半期 | 渡邊 布味子 | 不動産投資レポート |
新着記事
-
2025年11月04日
今週のレポート・コラムまとめ【10/28-10/31発行分】 -
2025年10月31日
交流を広げるだけでは届かない-関係人口・二地域居住に求められる「心の安全・安心」と今後の道筋 -
2025年10月31日
ECB政策理事会-3会合連続となる全会一致の据え置き決定 -
2025年10月31日
2025年7-9月期の実質GDP~前期比▲0.7%(年率▲2.7%)を予測~ -
2025年10月31日
保険型投資商品の特徴を理解すること(欧州)-欧州保険協会の解説文書
お知らせ
-
2025年07月01日
News Release
-
2025年06月06日
News Release
-
2025年04月02日
News Release
【首都圏新築マンションの動向-発売戸数は2019年の水準を回復、エリア別では供給・価格動向に相違】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。
首都圏新築マンションの動向-発売戸数は2019年の水準を回復、エリア別では供給・価格動向に相違のレポート Topへ










