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- 強気が続く不動産売買市場、ただし一部投資家は消極姿勢に変化か
2021年04月05日
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2020年の不動産市場は、コロナ禍により多大な影響を受けた。ホテルの収益性は、2021年内に元の水準へ戻るのは難しくなっており、都市型商業施設の売上は、巣ごもりによる消費抑制などにより、アパレルや化粧品を中心に停滞している。収益の補填や事業の行き詰まりから、やむなく不動産を売却したとみられる案件も散見される。
他方、2019年までの不動産価格の天井感から価格の下落を期待する投資家もいる。しかし、期待に反し、現在の不動産の価格水準は大きくは低下していない。2020年の不動産売買市場は、前半は取引の先延ばしなどで減速したが、後半に相次いで取引が成立し、売買総額は約5兆円(前年比▲6%、図表1)、取得物件数は前年比▲8%程度となった。過去の推移から今後1割程度の増加の可能性もあり、不動産売買市場の勢いは衰えてはいない。
他方、2019年までの不動産価格の天井感から価格の下落を期待する投資家もいる。しかし、期待に反し、現在の不動産の価格水準は大きくは低下していない。2020年の不動産売買市場は、前半は取引の先延ばしなどで減速したが、後半に相次いで取引が成立し、売買総額は約5兆円(前年比▲6%、図表1)、取得物件数は前年比▲8%程度となった。過去の推移から今後1割程度の増加の可能性もあり、不動産売買市場の勢いは衰えてはいない。
実は、売買市場全体で賃貸住宅を取得する動きが強まっており、売買総額に賃貸住宅が占める割合は20%(前年は12%)、全体の取得物件数に賃貸住宅が占める割合は43%(前年は27%)となった。賃貸住宅はホテルや商業施設に比べて大きな収益の獲得を狙うことは難しいが、長期的に収益が安定している。賃貸住宅取得の増加は、投資家の投資スタンスが保守的になっているとみることができる。
投資家別に見てみると、売買市場をけん引したのは外資(取得総額全体比35%、前年27%、図表2)で、ブラックストーン、シンガポール政府投資公社、ヌビーン不動産などであるが、多くの投資家が賃貸住宅を積極的に取得している。通常、賃貸住宅は、物流施設、オフィス、商業施設よりも規模が小さいため、多くの投資家が多額の取得目標に対し、棟数を増やして取得したとみられ、取得物件数が大幅に増加している。
外資に次いで、J-REIT(取得総額全体比33%、前年36%)の取得割合も依然大きい(図表2)。J-REITは他の投資家と同じく購入も売却もするが、買い越しの傾向がある。2011年~2019年までは積極的な物件取得で大きく買い越しを続け、高水準に安定した市場の下で多くの物件がJ-REITに長期に保有されるに至った。ただし、2020年は物件取得が小幅な売り越しに転じた。J-REITによる購入よりも、運営母体の不動産会社による購入が多かったとみられる。また、2020年3月に日銀のJ-REITの年間買い入れ額は900億円から1,800億円に引き上げられ、2020年の日銀のJ-REIT買い入れ額は計70回、1,147億円と、2019年の44回、528億円から倍増し、投資口価格が政府に買い支えられている状況である。J-REITの勢いは昨年に比べてやや弱まっているといえよう。
また、築年別でみると、築22年以上の不動産の取得物件数は34%(前年は41%)に減少した一方で、築3年以内の不動産の取引物件数の割合が21%(前年は16%)に増加している(図表3)。築年の古い不動産はリスクが高い分、収益性が高くなる傾向があるが、市場の減速や崩壊の際には、築浅の物件に比べて価格が大きく下落し、回復も遅くなることが多い。2020年の不動産の取引物件数を見ると、依然として築22年以上の不動産の割合が最も多く、投資家は依然として保有時の利回りを重視していると考えられる。しかし、2020年に取得された不動産の築年数が短期化したことは、市場の減速や崩壊を警戒してリスクテイクに消極的となった投資家が増加していることを示すと思われる。
投資家別に見てみると、売買市場をけん引したのは外資(取得総額全体比35%、前年27%、図表2)で、ブラックストーン、シンガポール政府投資公社、ヌビーン不動産などであるが、多くの投資家が賃貸住宅を積極的に取得している。通常、賃貸住宅は、物流施設、オフィス、商業施設よりも規模が小さいため、多くの投資家が多額の取得目標に対し、棟数を増やして取得したとみられ、取得物件数が大幅に増加している。
外資に次いで、J-REIT(取得総額全体比33%、前年36%)の取得割合も依然大きい(図表2)。J-REITは他の投資家と同じく購入も売却もするが、買い越しの傾向がある。2011年~2019年までは積極的な物件取得で大きく買い越しを続け、高水準に安定した市場の下で多くの物件がJ-REITに長期に保有されるに至った。ただし、2020年は物件取得が小幅な売り越しに転じた。J-REITによる購入よりも、運営母体の不動産会社による購入が多かったとみられる。また、2020年3月に日銀のJ-REITの年間買い入れ額は900億円から1,800億円に引き上げられ、2020年の日銀のJ-REIT買い入れ額は計70回、1,147億円と、2019年の44回、528億円から倍増し、投資口価格が政府に買い支えられている状況である。J-REITの勢いは昨年に比べてやや弱まっているといえよう。
また、築年別でみると、築22年以上の不動産の取得物件数は34%(前年は41%)に減少した一方で、築3年以内の不動産の取引物件数の割合が21%(前年は16%)に増加している(図表3)。築年の古い不動産はリスクが高い分、収益性が高くなる傾向があるが、市場の減速や崩壊の際には、築浅の物件に比べて価格が大きく下落し、回復も遅くなることが多い。2020年の不動産の取引物件数を見ると、依然として築22年以上の不動産の割合が最も多く、投資家は依然として保有時の利回りを重視していると考えられる。しかし、2020年に取得された不動産の築年数が短期化したことは、市場の減速や崩壊を警戒してリスクテイクに消極的となった投資家が増加していることを示すと思われる。
一方で、開発用地の売買額が全体に占める割合は13%(前年は11%)とわずかに増加している。開発用地は建物建築等の追加投資が必要で、建築期間中の市場変動リスクにさらされるが、開発計画通りに成功すれば建築済みの土地建物を取引するよりも大きな利益を得ることができる場合が多い。開発による将来の収益獲得のために、積極的な投資を行う投資家も市場に多く存在すると見られる。なお、不動産投資は、開発も売買も、結果が分かるまでに数年以上が必要であることが多い。コロナ収束後には、コロナ禍時の投資姿勢が消極的であったか、積極的であったかで、将来的に投資家の利益水準に差が生じてくると思われる。
(2021年04月05日「ニッセイ年金ストラテジー」)
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経歴
- 【職歴】
2000年 東海銀行(現三菱UFJ銀行)入行
2006年 総合不動産会社に入社
2018年5月より現職
・不動産鑑定士
・宅地建物取引士
・不動産証券化協会認定マスター
・日本証券アナリスト協会検定会員
・2022年、2023年 兵庫県都市計画審議会専門委員
渡邊 布味子のレポート
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