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強気が続く不動産売買市場、ただし一部投資家は消極姿勢に変化か
金融研究部 准主任研究員 渡邊 布味子
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他方、2019年までの不動産価格の天井感から価格の下落を期待する投資家もいる。しかし、期待に反し、現在の不動産の価格水準は大きくは低下していない。2020年の不動産売買市場は、前半は取引の先延ばしなどで減速したが、後半に相次いで取引が成立し、売買総額は約5兆円(前年比▲6%、図表1)、取得物件数は前年比▲8%程度となった。過去の推移から今後1割程度の増加の可能性もあり、不動産売買市場の勢いは衰えてはいない。
投資家別に見てみると、売買市場をけん引したのは外資(取得総額全体比35%、前年27%、図表2)で、ブラックストーン、シンガポール政府投資公社、ヌビーン不動産などであるが、多くの投資家が賃貸住宅を積極的に取得している。通常、賃貸住宅は、物流施設、オフィス、商業施設よりも規模が小さいため、多くの投資家が多額の取得目標に対し、棟数を増やして取得したとみられ、取得物件数が大幅に増加している。
外資に次いで、J-REIT(取得総額全体比33%、前年36%)の取得割合も依然大きい(図表2)。J-REITは他の投資家と同じく購入も売却もするが、買い越しの傾向がある。2011年~2019年までは積極的な物件取得で大きく買い越しを続け、高水準に安定した市場の下で多くの物件がJ-REITに長期に保有されるに至った。ただし、2020年は物件取得が小幅な売り越しに転じた。J-REITによる購入よりも、運営母体の不動産会社による購入が多かったとみられる。また、2020年3月に日銀のJ-REITの年間買い入れ額は900億円から1,800億円に引き上げられ、2020年の日銀のJ-REIT買い入れ額は計70回、1,147億円と、2019年の44回、528億円から倍増し、投資口価格が政府に買い支えられている状況である。J-REITの勢いは昨年に比べてやや弱まっているといえよう。
また、築年別でみると、築22年以上の不動産の取得物件数は34%(前年は41%)に減少した一方で、築3年以内の不動産の取引物件数の割合が21%(前年は16%)に増加している(図表3)。築年の古い不動産はリスクが高い分、収益性が高くなる傾向があるが、市場の減速や崩壊の際には、築浅の物件に比べて価格が大きく下落し、回復も遅くなることが多い。2020年の不動産の取引物件数を見ると、依然として築22年以上の不動産の割合が最も多く、投資家は依然として保有時の利回りを重視していると考えられる。しかし、2020年に取得された不動産の築年数が短期化したことは、市場の減速や崩壊を警戒してリスクテイクに消極的となった投資家が増加していることを示すと思われる。
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(2021年04月05日「ニッセイ年金ストラテジー」)
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