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2022年01月06日
資産配分を決定する際、ポートフォリオ理論を参考にすることが多い。ポートフォリオ理論は、ポートフォリオの期待収益率とリスクだけを考慮する。期待収益率が同じポートフォリオの中で最もリスクが小さいポートフォリオが効率的ポートフォリオで、効率的ポートフォリオの集合体を効率的フロンティアと呼ぶ。効率的フロンティアは、リスク資産のみの場合は上に凸の曲線だが、無リスク資産が存在する場合は無リスク利子率(rf)を切片とする右肩上がりの直線となる。
ポートフォリオ理論が教えてくれるのは、効率的フロンティアだけである。効率的フロンティアの中から、どのポートフォリオを選択するかは、リスク許容度など投資資金の特性や制約条件を参考に決定することになる。「期待収益率の下限」や「リスクの上限」といった明確な制約条件がある場合は選択すべきポートフォリオは一意に決まるが、明確な制約条件があるケースは珍しい。期待収益率の下限として予定利率が考えられるが、予定利率自体に変更の余地があり、リスクは抽象的なので明確な制約条件にはなりにくい。明確な制約条件がない場合、実際のポートフォリオの選択は容易ではない。
理論上は、明確な制約条件がない場合も選択すべきポートフォリオは一意に決まる。期待収益率とリスクが効用(満足感)に与える影響を数式(効用関数)で表現し、効用が最も高いポートフォリオを選択すればよい。リスクが増大しても、それに見合うだけ期待収益率が上昇すれば、効用は等しくなるので、期待収益率とリスクの組み合わせは無限にある。この集合体を無差別曲線と呼び、リスク回避的な投資家の無差別曲線は単調増加かつ下に凸の曲線となる。そして、無差別曲線と効率的フロンティアとの接点が、選択すべきポートフォリオである。
ポートフォリオ理論が教えてくれるのは、効率的フロンティアだけである。効率的フロンティアの中から、どのポートフォリオを選択するかは、リスク許容度など投資資金の特性や制約条件を参考に決定することになる。「期待収益率の下限」や「リスクの上限」といった明確な制約条件がある場合は選択すべきポートフォリオは一意に決まるが、明確な制約条件があるケースは珍しい。期待収益率の下限として予定利率が考えられるが、予定利率自体に変更の余地があり、リスクは抽象的なので明確な制約条件にはなりにくい。明確な制約条件がない場合、実際のポートフォリオの選択は容易ではない。
理論上は、明確な制約条件がない場合も選択すべきポートフォリオは一意に決まる。期待収益率とリスクが効用(満足感)に与える影響を数式(効用関数)で表現し、効用が最も高いポートフォリオを選択すればよい。リスクが増大しても、それに見合うだけ期待収益率が上昇すれば、効用は等しくなるので、期待収益率とリスクの組み合わせは無限にある。この集合体を無差別曲線と呼び、リスク回避的な投資家の無差別曲線は単調増加かつ下に凸の曲線となる。そして、無差別曲線と効率的フロンティアとの接点が、選択すべきポートフォリオである。
しかし、実務上は効用関数の設定に困難が伴う。リスク回避的な効用関数の形式として以下のような関数が多用されるが、普通の投資家はリスク回避度を表す定数λを把握していない。そこで、意思決定者が期待収益率とリスクをイメージしやすいよう加工し、最も満足感の高いポートフォリオを選択する。年金基金等であれば、各々のポートフォリオを選択した場合の定常的な掛金と市場ショック発生した場合の特別掛金といった具体的な数値に落とし込む。
このように苦労して選択したポートフォリオであっても、残念なことに、市場環境が大きく変化すると、見直す必要がある。ここでは、リスク回避度は変わらずに市場環境だけが変化した場合、適正リスク水準がどのように変化するかを確認する(図表2)。効率的フロンティアに与える影響を基準に市場環境変化を3つに分類する。(1)リスク資産のみで実現可能な領域(灰曲線で囲む領域で、以下リスク資産領域と記す)と無リスク利子率が等しく上昇するなど、効率的フロンティアの傾きが変わらない場合(左図)、(2)無リスク利子率のみ上昇するなど効率的フロンティアの傾きが緩やかになる場合(中図)、(3)リスク資産領域のみ上昇するなど効率的フロンティアの傾きが急になる場合(右図)の3つである。
(1)の場合、理論的には適正リスク水準は変化しないが、(2)や(3)のように効率的フロンティアの傾きが変化する場合、適正リスク水準は変化する。効率的フロンティアの傾きの変化は、リスク当たりの期待収益率の変化をもたらすからだ。しかし、(3)の場合、リスクを増やさなくても、リスク資産領域の期待収益率が上昇するので、敢えてリスクを増やす必要はないのではないか。単純にこのように考える人もいるのではないか。
最後に、こう考える原因を考えたい。勿論、モデルを用いた理論では現実を十分表現できていない可能性があるが、明確な制約条件がない中で行ったポートフォリオ選択プロセスが不十分な可能性もある。リスクを具体的な数値に落とし込む際、発生確率5%程度のショックとか、コロナショックと同程度のショックといった具合にショックの程度を設定するが、この設定が意思決定者の考えるショックの程度と乖離していると、最も満足感の高いポートフォリオを選択できない。このようなことを避けるためには、リスクを具体的な数値に落とし込む際には、適切にイメージできるように程度の異なる複数のショックを想定する必要がある。
(効用)=(期待収益率)-λ×(リスク)×(リスク)
このように苦労して選択したポートフォリオであっても、残念なことに、市場環境が大きく変化すると、見直す必要がある。ここでは、リスク回避度は変わらずに市場環境だけが変化した場合、適正リスク水準がどのように変化するかを確認する(図表2)。効率的フロンティアに与える影響を基準に市場環境変化を3つに分類する。(1)リスク資産のみで実現可能な領域(灰曲線で囲む領域で、以下リスク資産領域と記す)と無リスク利子率が等しく上昇するなど、効率的フロンティアの傾きが変わらない場合(左図)、(2)無リスク利子率のみ上昇するなど効率的フロンティアの傾きが緩やかになる場合(中図)、(3)リスク資産領域のみ上昇するなど効率的フロンティアの傾きが急になる場合(右図)の3つである。
(1)の場合、理論的には適正リスク水準は変化しないが、(2)や(3)のように効率的フロンティアの傾きが変化する場合、適正リスク水準は変化する。効率的フロンティアの傾きの変化は、リスク当たりの期待収益率の変化をもたらすからだ。しかし、(3)の場合、リスクを増やさなくても、リスク資産領域の期待収益率が上昇するので、敢えてリスクを増やす必要はないのではないか。単純にこのように考える人もいるのではないか。
最後に、こう考える原因を考えたい。勿論、モデルを用いた理論では現実を十分表現できていない可能性があるが、明確な制約条件がない中で行ったポートフォリオ選択プロセスが不十分な可能性もある。リスクを具体的な数値に落とし込む際、発生確率5%程度のショックとか、コロナショックと同程度のショックといった具合にショックの程度を設定するが、この設定が意思決定者の考えるショックの程度と乖離していると、最も満足感の高いポートフォリオを選択できない。このようなことを避けるためには、リスクを具体的な数値に落とし込む際には、適切にイメージできるように程度の異なる複数のショックを想定する必要がある。
(2022年01月06日「ニッセイ年金ストラテジー」)
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経歴
- 【職歴】
1999年 日本生命保険相互会社入社
2006年 ニッセイ基礎研究所へ
2017年4月より現職
【加入団体等】
・日本証券アナリスト協会検定会員
高岡 和佳子のレポート
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