2021年11月17日

貿易統計21年10月-自動車の落ち込みを主因として輸出の低迷が続く

経済研究部 経済調査部長 斎藤 太郎

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1.自動車輸出の大幅減少が続く

財務省が11月17日に公表した貿易統計によると、21年10月の貿易収支は▲674億円の赤字となり、事前の市場予想(QUICK集計:▲3,100億円、当社予想は▲1,524億円)を上回る結果となった。輸出の伸びが9月の前年比13.0%から同9.4%へと鈍化する一方、原油高の影響などから輸入の伸びが前年比26.7%(9月:同38.2%)と高止まりしたため、貿易収支は前年に比べ▲9,255億円の悪化となった。供給制約に伴う生産調整の影響で自動車輸出が前年比▲36.7%(9月:同▲40.3%)の大幅減少となったことが輸出の伸びを大きく押し下げた。

輸出の内訳を数量、価格に分けてみると、輸出数量が前年比▲2.6%(9月:同3.2%)、輸出価格が前年比12.3%(9月:同9.5%)、輸入の内訳は、輸入数量が前年比▲3.0%(9月:同7.5%)、輸入価格が前年比30.6%(9月:同28.6%)であった。
貿易収支の推移/貿易収支(季節調整値)の推移
輸出金額の要因分解/輸入金額の要因分解
季節調整済の貿易収支は▲4,447億円と6ヵ月連続の赤字となったが、9月の▲6,055億円からは赤字幅が縮小した。輸出が前月比2.7%の増加となり、輸入の伸び(同0.3%)を上回った。
原油価格(ドバイと入着ベース)の推移 10月の通関(入着)ベースの原油価格は1バレル=76.9ドル(当研究所による試算値)となり、9月の73.9ドルから上昇した。足もとの原油価格(ドバイ)は80ドル台前半で推移しており、通関ベースの原油価格は11月には80ドル台に上昇することが見込まれる。原油高に伴う輸入価格の上昇を主因として貿易収支(季節調整値)は当面赤字が続く可能性が高い。

2.全ての地域向けの輸出が低迷

21年10月の輸出数量指数を地域別に見ると、米国向けが前年比▲8.2%(9月:同▲9.9%)、EU向けが前年比5.3%(9月:同15.4%)、アジア向けが前年比▲0.2%(9月:同8.9%)、うち中国向けが前年比▲4.4%(9月:同3.3%)となった。
地域別輸出数量指数(季節調整値)の推移 21年10月の地域別輸出数量指数を季節調整値(当研究所による試算値)でみると、米国向けが前月比7.2%(9月:同▲12.8%)、EU向けが前月比1.6%(9月:同▲4.3%)、アジア向けが前月比▲3.5%(9月:同0.6%)、中国向けが前月比▲5.5%(9月:同1.9%)、全体では前月比0.2%(9月:同▲4.0%)となった。

10月の水準を7-9月期と比較すると、米国向けが▲4.5%、EU向けが▲0.9%、アジア向けが▲4.6%(うち中国向けが▲6.0%)、全体は▲2.7%下回っている。

いずれの地域向けも自動車の落ち込みを主因として弱い動きとなっており、夏場以降は自動車輸出の割合が高い米国向けの落ち込みが特に大きくなっている(20年の自動車輸出の割合は対世界が14.0%、対米国が27.5%)。一方、自動車輸出は前年比では大幅な減少が続いているが、減少ペースの加速には歯止めがかかりつつあり、大手自動車メーカーの生産計画を踏まえれば、年内には底打ちすることが見込まれる。

輸出は引き続き下振れリスクが高いものの、資本財など自動車以外は一定の底堅さを維持していることもあり、現時点では自動車の底打ちが見込まれる年末までに持ち直しに向かうと予想している。
 
 

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斎藤 太郎 (さいとう たろう)

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴
  • ・ 1992年:日本生命保険相互会社
    ・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
    ・ 2019年8月より現職

    ・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2018年~ 統計委員会専門委員

(2021年11月17日「経済・金融フラッシュ」)

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