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新型コロナ 社会的な終息に向かう? ー楽観バイアスでコロナ禍への順化が進んでいるが…
基礎研REPORT(冊子版)11月号[vol.296]

保険研究部 主席研究員 兼 気候変動リサーチセンター チーフ気候変動アナリスト 兼 ヘルスケアリサーチセンター 主席研究員 篠原 拓也
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◇「楽観バイアス」とコロナへの順化
昨年の最初の緊急事態宣言のときには、誰もが未経験の事態に直面したことで、社会全体で自粛に努める動きがみられた。しかし、宣言が何度も繰り返されるうちに、人々に「馴れ」が生じて、その実効性は薄れていった。これは、生物学の「順化」という現象に相当する。異なる環境に移された生物が、しだいに馴れて、その環境に適応した性質を持つようになることを指す。人々はコロナ禍に順化してきたといえるだろう。
◇ 終息のシナリオは2通り考えられる
昨年5月にニューヨークタイムズ紙で報じられた内容によると、アメリカの歴史学者はパンデミックの終わり方には2通りあると述べている。
1つは「医学的な終息」で、罹患率や死亡率が大きく低下して、まさに感染が終息する。もう1つは「社会的な終息」で、感染状況は変わらないまま、人々の病気に対する恐怖心が薄れてくることで終わるというものだ。社会的な終息は、病気を抑え込むかわりに、人々が疲弊して、病気とともに生きるようになることで、パンデミックが終わるというものだ。
◇ ペストの終息の詳細はよくわからない
ペストは、鼠類に付いた蚤(のみ)が、人にペスト菌を媒介して感染する。6世紀、14世紀(「中世の大流行」)、そして19世紀末~20世紀のパンデミックと、3度の世界的な大流行があった。特に、中世の大流行は1331年に中国で始まり、1347~1353年の間に、当時1億人といわれるヨーロッパの人口のうち、2000~3000万人が死亡したと推定されている。実は、ペストはどのようにして終息したのか、明らかではない。
寒さにより病気を媒介する蚤が死滅したため。ペスト菌が宿主をクマネズミからドブネズミに変えたことで人間との距離が離れたため。感染者が出た村を焼き払うなどの、感染拡大防止策が奏功したため─ ─など、さまざまな説が出されている。これらに加えて、社会的な終息という面もあったのかもしれない。
◇ スペインかぜは社会的な終息
◇ 新型コロナは社会的な終息に向かう?
ただ、根本的なところで、人々の意識はあまり変わっていないかもしれない。感染拡大防止のためのインフラや技術を高めても、人々の楽観バイアスが、その効果を下げてしまう可能性が残る。コロナ禍が、医学的な終息に至るのか、それとも社会的な終息に向かうのか――人々の気の持ちようしだいといえそうだ。
(2021年11月09日「基礎研マンスリー」)
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保険研究部 主席研究員 兼 気候変動リサーチセンター チーフ気候変動アナリスト 兼 ヘルスケアリサーチセンター 主席研究員
篠原 拓也 (しのはら たくや)
研究・専門分野
保険商品・計理、共済計理人・コンサルティング業務
03-3512-1823
- 【職歴】
1992年 日本生命保険相互会社入社
2014年 ニッセイ基礎研究所へ
【加入団体等】
・日本アクチュアリー会 正会員
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