コラム
2021年07月06日

新型コロナ 接種スピードの鈍化-やがて訪れるスピードダウンにどう備えるか

保険研究部 主席研究員・ヘルスケアリサーチセンター兼任   篠原 拓也

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新型コロナは、ワクチン接種の進む欧米と、接種が滞る南米、東南アジア、アフリカとで、感染動向が二分されつつある。アメリカやイギリスでは、感染防止策を徐々に緩和する動きが見られる一方、インドネシアやマレーシアでは感染者や死亡者が収まらず、ロックダウン(都市封鎖)を実施している。

世界では、死亡者数で、アメリカが60万人、ブラジルが52万人、インドが40万人に達している。感染者数では、アメリカが3337万人、インドが3058万人、ブラジルが1874万人を超えている。

これまでに、世界全体で感染者数は1億8356万151人、死亡者数は397万8581人。日本の感染者数は80万6834人、死亡者数は1万4848人(横浜港に停留したクルーズ船を含まない)に達している。(7月5日17:54現在(CEST)/世界保健機関(WHO)の“WHO COVID-19 Dashboard”より)

日本では、6月21日に東京、大阪などに発令されていた緊急事態宣言が解除された(沖縄は継続中)。ただ、インド型などの変異ウイルスの拡大が進んでおり、一部の地域では感染再拡大(リバウンド)がみられるなど、拡大の収束が見通せない状況が続いている。

そんななか、日本でも、感染収束の切り札ともいえるワクチン接種が、ようやく進んできた。はたして、接種はこのまま順調に進むのだろうか。今回は、昨年12月に接種を開始したアメリカとイギリスの状況を参考に、ワクチン接種の今後の推移について考えてみる。

◇ 日本の接種はスロースタート

まず、日本の状況を確認しておこう。日本では2月17日に医療従事者向け、4月12日に高齢者向けの接種が始まった。しかし、接種はなかなか進まず、オックスフォード大学の研究者らが運営する「アワー・ワールド・イン・データ」によると、5月6日時点で、接種率(少なくとも1回接種を受けた人の割合)は2.4%で、経済協力開発機構(OECD)加盟38カ国中最下位だった。

日本で接種がなかなか進まなかった理由として、日本メーカーによるワクチン開発ができていない。国内の臨床試験が進まず、海外メーカーのワクチン承認に時間がかかった。当初、国際的なワクチン獲得競争で劣後し、輸入量が限られていた――などの点が指摘されている。

日本は4月からワクチンの輸入量が増え、5月10日には自治体へのワクチン配布を増やして高齢者向け接種を本格化し、同24日には東京、大阪の大規模接種センターで接種をスタートした。さらに、歯科医師などによる接種を可能とし、5月下旬から歯科医師による接種を始めた。6月下旬には、大学や職域での接種もスタートした。

しかし、ワクチンの供給が不足し、7月には、一時的に接種にブレーキがかかる事態となっている。

そうしたさまざまな経緯もあり、接種開始から19週後の6月29日時点で接種率は23.6%に上昇した。しかし、同じく開始から19週後の他国の接種率をみると、アメリカは41.8%、イギリスは48.7%、フランスは26.6%、ドイツは32.1%だった。日本は、これらの国に比べてスロースタートだったといえる。
図. 欧米主要国と日本の接種率の推移

◇ アメリカでは、4月下旬以降、接種のスピードが鈍化

接種で先行するアメリカとイギリスの状況はどうだろうか。

アメリカは、7月4日時点で接種率が54%を超えている。2回の接種を完了した人の割合は47%に達した。特に、3月下旬から4月上旬にかけて、猛烈な勢いで接種を進めた。4月には、1日の接種回数が最多の462万回にのぼる日もあった。

ただし、接種率が40%台に入った4月下旬以降、接種のスピードは鈍化している。各州では、接種を受けた人に大リーグの観戦チケットを配布したり、高額当せん金の宝くじを実施したりするなど、あの手この手で接種率の引き上げを図っている。

◇ イギリスでは、3月末ごろから、接種率が伸び悩み

イギリスは、7月3日時点で接種率が60%に達している。1月下旬から3月まで、ハイペースで接種を進めた。特に、3月15~21日の1週間だけで、国民の5.2%に接種を行った。

だが、接種率が40%台後半となった3月末頃から、やはり伸び悩んでいる。また、深刻だった感染状況を受けて、1回目の接種を優先したため、2回の接種を完了した人の割合は低かった。その引き上げに向けて、国を挙げた接種推進キャンペーンを展開した結果、7月3日時点で49%を超えている。

◇ 接種スピードの鈍化にどう備えるか

両国に共通するのは、接種開始から数カ月経過して接種率が40%台に入ってから、接種のスピードが鈍化した点だ。その理由として、希望者への接種が一巡して様子見の人の接種が進まなくなっている。感染状況が最悪期を脱して人々の危機感が薄れつつある――といったことなどが考えられる。

日本は、まだ2回の接種を完了した人の割合が7月4日時点で13.8%に過ぎず、接種ペースを加速させていく局面だ。いずれ訪れる接種スピードの鈍化に備えて、ワクチン接種の効果や副反応の発生状況について、国民に丁寧に説明していくことが欠かせないだろう。
 
新型コロナウイルスについては、人口の一定割合以上の人が免疫を持つことにより、社会全体で感染が防ぎやすくなる「集団免疫」の効果について、まだ十分わかっていない部分もある。ただ、接種で先行するイギリスやアメリカでは、重症化する患者が減るなど、一定の効果がみられているようだ。

これから接種の機会が訪れる日本の現役世代にとっては、いよいよ、ワクチン接種のメリットとデメリットをしっかりと考えて、打つべきかどうかを判断する時が到来した、といえるだろう。
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保険研究部   主席研究員・ヘルスケアリサーチセンター兼任

篠原 拓也 (しのはら たくや)

研究・専門分野
保険商品・計理、共済計理人・コンサルティング業務

(2021年07月06日「研究員の眼」)

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