2021年10月07日

不動産投資の観点でみる地方中核都市の特性評価-市場規模と流動性に着目し、都市の特性を分類

基礎研REPORT(冊子版)10月号[vol.295]

金融研究部 主任研究員   吉田 資

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1―はじめに

ニッセイ基礎研究所・価値総合研究所の推計*1によれば、「投資適格不動産*2」のうち、東京以外の地方都市の占める割合はオフィスでは約4分の1、住宅では約4割となっている。投資対象となる収益不動産が地方都市にも多く所在していることを確認できる。最近では、地方都市への投資に特化したファンドも複数組成されるなど、投資家の注目も高まっている。

オフィスや住宅への投資において、収益不動産の集積度の高い東京が中心であることは変わらないが、リスク分散と収益安定化を図る目的から今後も地方都市への投資が拡大することが予想される。

そこで、本稿では、オフィスと住宅について、( 1)投資適格不動産の「市場規模」と、(2)不動産売買市場の「市場流動性*3」に着目し、地方中核10都市*4を対象に、その特性を評価したい。
 
*1 吉田資・室 剛朗『わが国の不動産投資市場規模(2)』(ニッセイ基礎研究所、不動産投資レポート、2021年4月19日)
*2 機関投資家の投資意欲が特に強いスペックや立地要件を満たす収益不動産
*3 投資適格不動産の「市場規模」に対する「平均年
間取引額(07年~20年)」。「市場流動性」=「平均年間取引額」÷「市場規模」
*4 札幌市、仙台市、川崎市、横浜市、名古屋市、京都 市、大阪市、神戸市、広島市、福岡市の10都市

2―不動産投資の観点でみる 地方都市の特性評価

1|地方中核10都市の「市場規模」
まず、「オフィス市場規模」は、「大阪市」(6.4 兆円)が最も大きく、次いで、「名古屋 市(」2.2兆 円 )「、横 浜 市(」2.1兆 円 )、「福岡市(」1.6兆円)「、札幌市(」1.1兆円)の順となっている。「大阪市」は、第2位「名古屋市」の約3倍の規模に達している。

次に「、住宅市場規模」は「、大阪市(」3.2兆円)が最も大きく、次いで「名古屋市(」1.5兆円)「、横浜市(」1.5兆円)「、福岡市」(1.5兆円)、「川崎市」(1.1兆円)の順と1|地方中核10都市の「市場規模」なっている。

ところで、収益不動産の「市場規模」は人口動態と密接な関係を有している。図表1は「オフィス市場規模」と「生産年齢人口(15~64歳)」の関係を、図表2は「住宅市場規模」と「世帯数」の関係を示している。ともに相関が強く、直線に近い累乗近似曲線に従うことがわかる。具体的には、「生産年齢人口」が1%増加すると「オフィス市場規模」は約1.6%拡大、「世帯数」が1%増加すると「住宅市場規模」は約1.4%拡大する関係がみてとれる。

なお、「横浜市」はオフィスの回帰線より下方に、「大阪市」は上方に大きく乖離している。「横浜市」は東京の衛星都市としての機能があり居住地ではない東京で就業する人の割合が高く、「オフィス市場規模」が小さい。これに対して、「大阪市」は市内に居住する就業者に加え、周辺の都道府県から通勤する就業者も多く、「オフィス市場規模」が大きいと考えられる。

また、「横浜市」は、住宅についても回帰線より下方に乖離している。総務省「住宅・土地統計調査」によれば、「横浜市」の持ち家率は59%と10都市のなかで最も高く、相対的に賃貸比率が小さい。住居の所有形態が「住宅市場規模」に影響を及ぼしていると推察される。
[図表1]「オフィス市場規模」と「生産年齢人口」/[図表2]「住宅市場規模」と「世帯数」
2|地方中核10都市の「市場流動性」
続いて、「市場流動性」を確認する。オフィスの「市場流動性」は、「横浜市」(5.8%)が最も高く、次いで「川崎市」(3.2%)「、大阪市(」2.9%)の順となった。

また、住宅の「市場流動性」は、「仙台市」(2.3%)が最も高く、次いで「大阪市」(2.0%)「、名古屋市(」1.6%)の順となった。

ところで、「市場流動性」は「不動産証券化」の進展と密接な関係を有している。図表3(オフィス)と図表4(住宅)はそれぞれ、「市場流動性」と投資適格不動産に占める「J-REIT保有比率」の関係を示している。ともに相関が強く、線形関数に従うことがわかる。具体的には、「J-REIT保有比率」が1%上昇するとオフィスの「市場流動性」は約0.16%上昇、住宅の「市場流動性」は約0.11%上昇する関係がみてとれる。

なお、回帰線の傾きは住宅の方がオフィスより緩やかで、「J-REIT保有比率」に対する「市場流動性」の変化率が小さい。住宅では、近年、取引額に占めるクロスボーダー取引の割合が高まっており、海外資金の動向が「市場流動性」に影響を及ぼしていると考えられる。
[図表3]オフィスの「市場流動性」と「J-REIT保有比率」/[図表4]住宅の「市場流動性」と「J-REIT保有比率」
3|「市場規模」と「市場流動性」に着目した地方中核10都市の特性評価
最後に、上記で確認した「市場規模」と「市場流動性」をもとに、地方中核10都市の特性を分類する。具体的には、横軸に「市場規模」、縦軸に「市場流動性」をプロットし、平均値を基準にして、「A群」・「B群」・「C群」・「D群」の4つのカテゴリーに分類した(図表5、図表6)。右上に位置する「A群」に位置する都市は、「市場規模」と「市場流動性」がともに高く、相対的に投資しやすい都市であり、オフィスでは「大阪市」と「横浜市」、住宅では「大阪市」と「名古屋市」と「福岡市」が該当する。
[図表5]市場規模と「市場流動性 /[図表6]市場規模と「市場流動性

3―おわりに

本稿では、投資適格不動産の「市場規模」と「市場流動性」に着目し、地方中核10都市を対象に、その特性を評価した。上記の特性はあくまで現時点のものであり、今後の人口動態の影響を受けて変化することが予想される。国立社会保障・人口問題研究所「日本の地域別将来推計人口」によると、生産年齢人口(2015年~2025年)は、多くの都市で減少するなか、「川崎市(+2.8%)」と「福岡市(+2.0%)」は増加する見通しである。また、国立社会保障・人口問題研究所「日本の世帯数将来推計(都道府県別)」によると、世帯数(2015年~2025年)は「愛知県(4.5%)」と「神奈川県(4.0%)」の伸び率が大きくなる見通しである。

また、今回のコロナ禍を経て、在宅勤務が浸透したことで、ワークプレイスや居住地に対する意識変化が生じており、それに呼応した人口動態の構造変化にも十分留意したい。
[まとめ]地方中核10都市の特性分類
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金融研究部   主任研究員

吉田 資 (よしだ たすく)

研究・専門分野
不動産市場、投資分析

(2021年10月07日「基礎研マンスリー」)

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