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2021年09月17日
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1――引き続き買われている米国株式
2――米株高を支えた2つの要因が消失?
これまで米国株式は米国の金融政策・低金利と企業業績の急激な回復・拡大の2つの要因によって、割安感に乏しいのにも関わらず、株価は上昇し続けてきた。しかし、今後は米株高を支えてきた2つの要因がともに消失し、米国株式は高バリュエーションを維持できない可能性が出てきている。
ただ、1つ目の米国の金融政策・金利の動向は多くの投資家が注目しているが、米国株式に与える影響は意外に小さいのではないかと筆者は考えている。金利上昇自体は米国株式にとってマイナスに働くと思われるが、ある程度は企業業績の拡大によって相殺されると思われるためである。つまり、金利上昇によって予想PERが低下することがあるかもしれないが、緩やかな金利上昇であれば、予想EPSの上昇が株価を下支えし、株価は堅調に推移することが期待できる。
特に米金融当局がバーナンキ・ショックからの反省からか、かなり慎重に対応している。米金融当局と市場とのコミュニケーションがうまくいかず一時的に混乱する可能性があるので注意は必要であるが、そこまで米国株式の重しにはならないのではないだろうか。
ただ、1つ目の米国の金融政策・金利の動向は多くの投資家が注目しているが、米国株式に与える影響は意外に小さいのではないかと筆者は考えている。金利上昇自体は米国株式にとってマイナスに働くと思われるが、ある程度は企業業績の拡大によって相殺されると思われるためである。つまり、金利上昇によって予想PERが低下することがあるかもしれないが、緩やかな金利上昇であれば、予想EPSの上昇が株価を下支えし、株価は堅調に推移することが期待できる。
特に米金融当局がバーナンキ・ショックからの反省からか、かなり慎重に対応している。米金融当局と市場とのコミュニケーションがうまくいかず一時的に混乱する可能性があるので注意は必要であるが、そこまで米国株式の重しにはならないのではないだろうか。
3――金融政策以上に業績急拡大の一服が怖い
筆者は、1つ目の米国の金融政策・金利の動向以上に、実は2つ目の米国企業の業績動向が今後の米国株式の鍵になると考えている。
そもそも米国株価の継続的上昇は金融政策や低金利だけでなく、業績の急拡大自体が米国株式の高PERの要因となっている。業績急拡大期は期待先行で楽観的に購入してくる投資家も多いためである。S&P500種株価指数の予想益回り(PERの逆数)から米国10年国債利回り引いて金利の影響を取り除いた米国株式のリスク・プレミアム(青線)をみると、そのことが明確に分かる【図表3】。株式リスク・プレミアムは3%程度で推移しており、2017年から2018年にかけての業績拡大期と同様に低水準にある。
そもそも米国株価の継続的上昇は金融政策や低金利だけでなく、業績の急拡大自体が米国株式の高PERの要因となっている。業績急拡大期は期待先行で楽観的に購入してくる投資家も多いためである。S&P500種株価指数の予想益回り(PERの逆数)から米国10年国債利回り引いて金利の影響を取り除いた米国株式のリスク・プレミアム(青線)をみると、そのことが明確に分かる【図表3】。株式リスク・プレミアムは3%程度で推移しており、2017年から2018年にかけての業績拡大期と同様に低水準にある。
この米国企業の業績急拡大は、新型コロナウイルスの効果的な治療法や治療薬の普及などがさらに進めば話は変わるかもしれないが、この先1、2年のうちに一服すると思われる。過去の予想EPS(赤線)の推移をみると年末年始前後に基調が変わることがよくある。そのため、早ければこの秋以降に業績拡大の鈍化が市場で意識され始めると、株式リスク・プレミアムの上昇に伴って株価(PER)が低下する展開も考えられる。
実際に2018年は秋頃に予想EPSの上昇が鈍化するとともに、米国株式のリスク・プレミアムがその後1年間(マーカー部分)、上昇基調に転じている。なお、2018年は10月に米金利の急上昇とともに米国株式は急落した。その後、米金利はすぐに低下に転じたが、米中問題の深刻化も影響したたこともあり、米国株式が元の水準に戻るまで約半年かかった。
実際に2018年は秋頃に予想EPSの上昇が鈍化するとともに、米国株式のリスク・プレミアムがその後1年間(マーカー部分)、上昇基調に転じている。なお、2018年は10月に米金利の急上昇とともに米国株式は急落した。その後、米金利はすぐに低下に転じたが、米中問題の深刻化も影響したたこともあり、米国株式が元の水準に戻るまで約半年かかった。
4――余裕を持った投資を
米国株式は9月に入ってから方向感が乏しい展開が続いている。新年に向かって米国企業の業績急拡大の収束を見越した株価の動きが既に始まっているのであれば、再び上昇基調に転じるのに思っている以上に時間がかかるかもしれない。米国株式を投資する際には、これまで好調だったからと過度に楽観視をせずに、ご自身で下落リスクを許容できる範囲内で投資することを心がけたい。
(ご注意)当資料のデータは信頼ある情報源から入手、加工したものですが、その正確性と完全性を保証するものではありません。当資料の内容について、将来見解を変更することもあります。当資料は情報提供が目的であり、投資信託の勧誘するものではありません。
(2021年09月17日「基礎研レター」)

03-3512-1785
経歴
- 【職歴】
2008年 大和総研入社
2009年 大和証券キャピタル・マーケッツ(現大和証券)
2012年 イボットソン・アソシエイツ・ジャパン
2014年 ニッセイ基礎研究所 金融研究部
2022年7月より現職
【加入団体等】
・日本証券アナリスト協会検定会員
・投資信託協会「すべての人に世界の成長を届ける研究会」 客員研究員(2020・2021年度)
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