2021年09月09日

ASEANの貿易統計(9月号)~7月の輸出は二桁増を維持したが、8月は感染再拡大に伴う制限措置の影響で増勢鈍化へ

経済研究部 准主任研究員   斉藤 誠

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21年7月のASEAN主要6カ国の輸出(ドル建て、通関ベース)は前年同月比15.2%増(前月同32.1%増)と、二桁増を維持した(図表1)。輸出は昨年4月に新型コロナウイルスの世界的な感染拡大と国内外で実施された活動制限措置の影響が本格化して急減した後、感染防止と経済活動の両立やテレワーク需要の増加に伴う電気・電子製品の出荷増、商品市況の改善を受けて増加傾向が続いている。また4~6月の輸出は前年同月の大幅な落ち込みからの反動増により伸び率(前年同月比)が押し上げられたが、7月は反動増の影響が剥落した。8月は各国の感染再拡大に伴う制限措置の影響で輸出の増勢は鈍化しそうだ。

ASEAN6カ国の仕向け地別の輸出動向を見ると、7月は前年の落ち込みの大きい東南アジア向け(同18.5%増)とEU向け(同26.4%増)が反動増によって大幅な増加となった(図表2)。またコロナ禍からの経済回復が進む北米向け(同3.5%増)と東アジア向け(同18.0%増)も増加傾向を維持した。
(図表1)アセアン主要6カ国の輸出額/(図表2)アセアン主要6カ国仕向け地別の輸出動向
ベトナムの21年7月の輸出額(ドル建て、通関ベース)は前年同月比11.9%増となり、前月の同20.4%増から鈍化したものの、5カ月連続の二桁増となった。輸出は昨年4~5月に新型コロナ感染対策として国内外で実施された活動制限措置の影響を受けて落ち込んだ後、経済活動の再開と世界的な電子機器の需要増加を受けて増加傾向が続いているが、足もとでは昨年の活動制限措置に伴う落ち込みからの反動増の影響が剥落して伸び率は下がりつつある。また輸入額が前年同月比31.8%増(前月:同34.3%増)と高水準で推移した結果、貿易収支は▲12.5億ドルの赤字となり、前月から7.9億ドル悪化した(図表3)。

輸出を品目別に見ると、まず輸出全体の約2割を占める電話・部品が前年同月比10.3%増(前月:同0.6%減)と再びプラスとなったが、これまで輸出全体を押し上げてきた電気製品・同部品が同9.1%減(前月:同5.4%増)と減少した(図表4)。またアパレル関連では、織物・衣類が同1.8%増(前月:同16.2%増)、履物が同2.3%増(前月:同37.8%増)と鈍化した。農林水産物を見ると、コメ(同3.6%増)や水産物(同7.9%増)が鈍化したものの、コーヒー(同14.2%増)や野菜(同19.1%増)、カシューナッツ(同44.3%増)、天然ゴム(同38.1%増)などが好調だった。

輸出を資本別に見ると、全体の7割を占める外資系企業が同14.4%増(前月:同22.2%増)が大幅な伸びを続けたが、地場企業が同6.0%増(前月:同16.3%増)が鈍化した。
(図表3)ベトナムの貿易収支/(図表4)ベトナム輸出の伸び率(品目別)
タイの21年7月の輸出額(ドル建て、通関ベース)は前年同月比20.3%増(前月:同43.8%増)と低下した。輸出は新型コロナ感染拡大の影響が直撃した昨年4~6月に大きく減少した後、経済活動の再開と世界的な電子機器の需要増加を受けて増加傾向が続いたが、足もとでは昨年の活動制限措置に伴う落ち込みからの反動増の影響が剥落して伸び率が低下してきている。また輸入額が前年同月比45.9%増(前月:同53.8%増)と高水準が続いた結果、貿易収支は+1.8億ドルとなり、前月から7.6億ドル縮小した(図表5)。

輸出を品目別に見ると、全体の約7割を占める工業製品が同27.7%増(前月:同44.7%増)と5カ月連続の二桁増となった(図表6)。製造品の内訳を見ると、在宅時間が増加した影響で電子機器(同28.0%増)や家電製品(同12.4%増)が好調だったほか、機械・装置(同20.5%増)や石油化学製品(同44.2%増)、自動車・部品(同39.0%増)などの主要輸出品も引き続き増加した。また鉱業・燃料は同69.8%増(前月:同81.5%増)と高水準を維持し、石油製品(同71.2%増)を中心に5ヵ月連続のプラスとなった。このほか、農産物・同加工品は同26.5%増(前月:同36.1%増)と9ヵ月連続で増加した。コメ(同8.0%減)が低迷し、加工食品(同0.6%増)が鈍化したものの、天然ゴム(同121.2%増)やゴム製品(同22.6%増)、果物(同130.2%増)など総じて増加した品目が多かった。
(図表5)タイの貿易収支/(図表6)タイ輸出の伸び率(品目別)
マレーシアの21年7月の輸出額(ドル建て換算、通関ベース)の伸び率は前年同月比6.5%増(前月:同31.5%増)と鈍化した。輸出は昨年4~5月に新型コロナ感染拡大と国内外の活動制限措置の影響が本格化して約3割の減少を記録した後、世界経済の回復を追い風に増加傾向が続いている。また輸入額が前年同月比25.8%増(前月:同36.6%増)と高水準が続いた結果、貿易収支は+32.6億ドルとなり、前月から21.3億ドル縮小した(図表7)。

輸出を品目別に見ると、全体の約4割を占める機械・輸送用機器は同11.0%減(前月:同14.8%増)となり、主力の電気・電子製品(同10.9%減)を中心に9カ月ぶりに減少した(図表8)。一方、鉱物性燃料は同58.8%増(前月:同91.8%増)と好調だった。原油(同5.5%減)は4カ月ぶりに減少したものの、石油製品(同99.0%増)、天然ガス(同72.2%増)が揃って大幅に増加した。このほか、ゴム手袋(同23.8%増)と化学製品(同63.2%増)、動植物性油脂(同56.0%増)も二桁増となった。
(図表7)マレーシア貿易収支/(図表8)マレーシア輸出の伸び率(品目別)
インドネシアの21年7月の輸出額(ドル建て、通関ベース)は前年同月比29.3%増(前月:同54.4%増)と低下した。輸出は昨年3~5月にかけて新型コロナの感染拡大と国内外で実施された活動制限措置の影響を受けて最大約3割減まで落ち込んだが、その後は経済活動の再開や商品市況の改善を受けて持ち直し、足もとでは前年同月が大規模社会制限の影響により大幅に落ち込んでいたことによる反動増で伸び率が押し上げられている。また輸入額も前年同月比44.4%増(前月:同60.0%増)と低下した結果、貿易収支は+25.9億ドルとなり、前月から12.6億ドル黒字が拡大した(図表9)。

全体の9割を占める非石油ガス輸出が同28.3%増(前月:同51.3%増)、石油ガス輸出が同50.1%増(前月:同117.2%増)と好調だった(図表10)。品目別にみると、自動車・同部品(同21.0%増)や鉄・鉄鋼(同87.5%増)、鉱産物(同81.9%増)、ゴム製品(同23.3%増)、電気機械(同14.9%増)、動植物性油脂(同49.5%増)などが大幅に増加した。一方、天然又は養殖真珠、貴石、半貴石(同53.1%減)が低迷すると共に、機械類(同7.9%減)がマイナスに転じた。
(図表9)インドネシア貿易収支/(図表10)インドネシア輸出の伸び率(品目別)
シンガポールの21年7月の輸出額(石油と再輸出除く、ドル建て換算、通関ベース)は前年同月比15.3%増(前月:同21.1%増)と低下した。輸出は昨年コロナ禍でも増加傾向で推移し、今年は世界的な電子製品の需要拡大や石油化学製品の出荷の持ち直しを受けて好調が続いている。なお、総輸出額が同19.0%増(前月:同27.8%増)、総輸入額が同24.8%増(前月:同34.0%増)と、それぞれ鈍化した結果、貿易収支は+27.6億ドルとなり、前月から7.2億ドル縮小した(図表11)。

輸出(石油と再輸出除く)を品目別に見ると、まず全体の約2割を占める電子製品は同17.7%増(前月:同31.2%増)と鈍化したものの、8カ月連続の二桁増となった(図表12)。電子製品の内訳を見ると、主力のIC(同13.7%増)やPC(同87.4%増)、ダイオード・トランジスタ(同32.7%増)の好調が続いた一方、ディスクメディア(同9.8%減)が2カ月ぶりに減少した。また全体の約3割を占める化学品は同45.8%増(前月:同31.2%増)と好調を維持した。化学品の内訳を見ると、石油化学製品(同52.8%増)と医薬品(同51.7%増)が揃って大きく増加した。
(図表11)シンガポール貿易収支/(図表12)シンガポール輸出の伸び率(品目別)
フィリピンの21年7月の輸出額(ドル建て、通関ベース)は前年同月比12.7%増(前月:同18.8%増)と上昇幅が縮小したものの、5カ月連続の二桁増となった。輸出は昨年3月に新型コロナ感染拡大と国内外で実施された活動制限措置の影響が現れて急減した後、世界経済の回復を追い風に増加傾向にあるが、足もとでは昨年の活動制限措置に伴う落ち込みからの反動増の影響が剥落して伸び率は低下しつつある。また輸入額も前年同月比24.0%増(前月:同43.4%増)と上昇幅が縮小した結果、貿易収支は▲32.9億ドルの赤字となり、前月から1.1億ドル改善した(図表13)。

輸出シェア上位10品目を見ると、まず輸出全体の6割弱を占める電子製品が同10.1%増(前月:同12.3%増)と二桁増を続けた(図表14)。電子製品の内訳を見ると、主力の半導体デバイス(同4.9%増)は鈍化したが、電子データ処理機(同34.9%増)や消費者向け電子製品(同21.8%増)などが好調だった。その他9品目は増加した品目が多かった。ココナッツオイル(同207.7%増)や製錬銅(同84.6%増)、イグニッションワイヤーセット(同28.6%増)、その他製造品(同27.5%増)、電子機器・部品(同21.6%増)、金属部品(同18.5%増)、化学品(同12.4%増)、その他鉱物製品(同6.2%増)が増加した一方、機械・輸送用機器(同5.4%減)が減少した。
(図表13)フィリピンの貿易収支/(図表14)フィリピン 輸出の伸び率(品目別)
 
 

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経済研究部   准主任研究員

斉藤 誠 (さいとう まこと)

研究・専門分野
東南アジア経済、インド経済

(2021年09月09日「経済・金融フラッシュ」)

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