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- ワクチン接種後にやりたいこと-圧倒的に国内旅行、経済的余裕や子育て中など家庭環境で違いも
2021年07月26日
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1――はじめに~ワクチン接種が進む中で、接種後にやりたいことは?
日本国内で新型コロナウイルスのワクチン接種が加速度的に進んでいる。ワクチンを少なくとも1回接種した人数は総人口の3割を、2回接種は2割を超えている(7月13日時点)1。コロナ禍の出口が見え始めた中で、消費者はワクチン接種後に何をしたいと考えているのだろうか。本稿では、ニッセイ基礎研究所が7月上旬に実施した「第5回 新型コロナによる暮らしの変化に関する調査2」のデータを用いて、その状況を捉えていきたい。
1 NHK「日本国内のワクチン接種状況」https://www3.nhk.or.jp/news/special/coronavirus/vaccine/progress/
2 調査時期は2021年7月、調査対象は全国に住む20~74歳の男女、インターネット調査、株式会社マクロミルのモニターを利用、有効回答2,582。
1 NHK「日本国内のワクチン接種状況」https://www3.nhk.or.jp/news/special/coronavirus/vaccine/progress/
2 調査時期は2021年7月、調査対象は全国に住む20~74歳の男女、インターネット調査、株式会社マクロミルのモニターを利用、有効回答2,582。
2――ワクチン接種後にやりたいこと~圧倒的に多いのは国内旅行、次いで外食、友人と会う、ショッピング
全体で圧倒的に多いのは「国内旅行」(53.1%)であり、次いで、「外食」(36.8%)、「友人と会う」(36.6%)、「店舗でのショッピング」(27.5%)、「帰省・離れて暮らす家族と会う」(22.4%)、「映画館など屋内レジャー施設の利用」(22.1%)、「飲み会・会食」(20.1%)と続く(図表1)。
なお、「海外旅行」は16.3%にとどまり、国内旅行とは36.8%ptもの差がある。7月下旬からワクチンパスポートの受付が始まり、国際的な往来が順次再開されていく見込みとはいえ、現在のところ、各国の対応や感染状況は様々であり、まずは現実的に実現可能な身近なところから外出型の消費行動を再開する消費者が多いようだ。
また、「特にない」は12.8%、「ワクチン接種を考えていない」は7.2%を占める。
なお、「海外旅行」は16.3%にとどまり、国内旅行とは36.8%ptもの差がある。7月下旬からワクチンパスポートの受付が始まり、国際的な往来が順次再開されていく見込みとはいえ、現在のところ、各国の対応や感染状況は様々であり、まずは現実的に実現可能な身近なところから外出型の消費行動を再開する消費者が多いようだ。
また、「特にない」は12.8%、「ワクチン接種を考えていない」は7.2%を占める。
3――属性別に見たワクチン接種後にやりたいこと
1|性年代別~女性やシニアで期待感が強い、若者は外食やレジャーが多いが接種しないも多い
性別に見ると、男女とも圧倒的に多いのは全体と同様「国内旅行」であり半数を超える(図表2)。次いで、男性は「外食」(32.7%)、「友人と会う」(27.5%)、「飲み会・会食」(23.9%)、女性は「友人と会う」(45.6%)、「外食」(40.8%)、「店舗でのショッピング」(35.2%)と続く。
男女を比べると「飲み会・会食」や「スポーツ観戦」を除く全ての消費行動で女性が男性を上回り、特に「友人と会う」(女性が男性より+18.1%pt)や「店舗でのショッピング」(+15.4%pt)、「帰省・離れて暮らす家族と会う」(+12.8%pt)、「舞台やコンサート、ライブ鑑賞」(+11.0%pt)で高い。なお、これらは女性では全体と比べても高い一方、男性では低い。
年代別に見ても、いずれも圧倒的に多いのは「国内旅行」であり、5~6割を占める。また、20歳代で「外食」(全体より+5.0%pt)、若い年代ほど「遊園地など屋外レジャー施設の利用」(20歳代で+10.4%pt、30歳代で+6.3%pt)、70歳代で「店舗でのショッピング」(+12.5%pt)や「国内旅行」(+12.2%pt)、「帰省・離れて暮らす家族と会う」(+8.1%pt)、「友人と会う」(+7.6%pt)が高い。
なお、70歳代では「遊園地など屋外レジャー施設の利用」や「舞台やコンサート、ライブ鑑賞」を除く消費行動で全体を上回り、ワクチン接種後の期待感が強い様子がうかがえる。また、60歳代でも全体を上回る項目が多い。感染による重篤化リスクの高い高齢層では、コロナ禍で外出自粛傾向が強いために、ワクチン接種後の期待感が強いようだ。
一方、重篤化リスクの低い20歳代では「ワクチン接種を考えていない」(12.7%、全体より+5.5%pt)が高い。
性別に見ると、男女とも圧倒的に多いのは全体と同様「国内旅行」であり半数を超える(図表2)。次いで、男性は「外食」(32.7%)、「友人と会う」(27.5%)、「飲み会・会食」(23.9%)、女性は「友人と会う」(45.6%)、「外食」(40.8%)、「店舗でのショッピング」(35.2%)と続く。
男女を比べると「飲み会・会食」や「スポーツ観戦」を除く全ての消費行動で女性が男性を上回り、特に「友人と会う」(女性が男性より+18.1%pt)や「店舗でのショッピング」(+15.4%pt)、「帰省・離れて暮らす家族と会う」(+12.8%pt)、「舞台やコンサート、ライブ鑑賞」(+11.0%pt)で高い。なお、これらは女性では全体と比べても高い一方、男性では低い。
年代別に見ても、いずれも圧倒的に多いのは「国内旅行」であり、5~6割を占める。また、20歳代で「外食」(全体より+5.0%pt)、若い年代ほど「遊園地など屋外レジャー施設の利用」(20歳代で+10.4%pt、30歳代で+6.3%pt)、70歳代で「店舗でのショッピング」(+12.5%pt)や「国内旅行」(+12.2%pt)、「帰省・離れて暮らす家族と会う」(+8.1%pt)、「友人と会う」(+7.6%pt)が高い。
なお、70歳代では「遊園地など屋外レジャー施設の利用」や「舞台やコンサート、ライブ鑑賞」を除く消費行動で全体を上回り、ワクチン接種後の期待感が強い様子がうかがえる。また、60歳代でも全体を上回る項目が多い。感染による重篤化リスクの高い高齢層では、コロナ禍で外出自粛傾向が強いために、ワクチン接種後の期待感が強いようだ。
一方、重篤化リスクの低い20歳代では「ワクチン接種を考えていない」(12.7%、全体より+5.5%pt)が高い。
2|ライフステージ別~子育て世帯で旅行やレジャー、第一子誕生や大学生のいる世帯で帰省が多い
ライフステージ別に見ても、いずれも圧倒的に多いのは「国内旅行」であり、4~6割を占める(図表3)。なお「国内旅行」は第一子誕生以降の子育て世帯で高い傾向がある。また、「遊園地などの屋外レジャー施設の利用」も子育て世帯で高く、子どもの年齢が低いほど高い。
昨年の夏休みはコロナ禍による休校期間が長引いたために短縮され、感染再拡大によって帰省自粛が呼びかけられた。子ども達にも我慢を強いる生活が続く中で、ワクチン接種後には旅行やレジャーで楽しませてあげたいという親の気持ちが透けて見えるようだ。
また、第一子誕生や孫誕生、第一子大学入学で「帰省・離れて暮らす家族と会う」が高い。コロナ禍で帰省が自粛されてきた中で、生まれたばかりの子どもと祖父母の対面も控えられ、大学生の実家への帰省もままならない状況があったが、ワクチン接種によって希望の光が見えてきたようだ。
ライフステージ別に見ても、いずれも圧倒的に多いのは「国内旅行」であり、4~6割を占める(図表3)。なお「国内旅行」は第一子誕生以降の子育て世帯で高い傾向がある。また、「遊園地などの屋外レジャー施設の利用」も子育て世帯で高く、子どもの年齢が低いほど高い。
昨年の夏休みはコロナ禍による休校期間が長引いたために短縮され、感染再拡大によって帰省自粛が呼びかけられた。子ども達にも我慢を強いる生活が続く中で、ワクチン接種後には旅行やレジャーで楽しませてあげたいという親の気持ちが透けて見えるようだ。
また、第一子誕生や孫誕生、第一子大学入学で「帰省・離れて暮らす家族と会う」が高い。コロナ禍で帰省が自粛されてきた中で、生まれたばかりの子どもと祖父母の対面も控えられ、大学生の実家への帰省もままならない状況があったが、ワクチン接種によって希望の光が見えてきたようだ。
3|世帯年収別~世帯年収1,000万円付近を中心に消費意欲旺盛、海外旅行も全体の2倍
世帯年収別に見ると、世帯年収によらず最も多いのは「国内旅行」だが、低所得世帯ではその割合は低く、世帯年収200万円未満では3割台であり、「外食」と大きくは変わらない(図表4)。なお、世帯年収200万円未満では全体を下回る項目が多く、「特にない」(20.1%)も高い。
一方、世帯年収600万円~1,500万円未満では「国内旅行」が6割程度を占めて高い。また、世帯年収1,000万円付近を中心に全体を上回る項目が目立ち、消費意欲が旺盛な様子がうかがえる。特に「海外旅行」は全体では16.3%にとどまるが、世帯年収1,000万円付近では約2倍を占めて高いことも特徴的だ。
世帯年収別に見ると、世帯年収によらず最も多いのは「国内旅行」だが、低所得世帯ではその割合は低く、世帯年収200万円未満では3割台であり、「外食」と大きくは変わらない(図表4)。なお、世帯年収200万円未満では全体を下回る項目が多く、「特にない」(20.1%)も高い。
一方、世帯年収600万円~1,500万円未満では「国内旅行」が6割程度を占めて高い。また、世帯年収1,000万円付近を中心に全体を上回る項目が目立ち、消費意欲が旺盛な様子がうかがえる。特に「海外旅行」は全体では16.3%にとどまるが、世帯年収1,000万円付近では約2倍を占めて高いことも特徴的だ。
4|ワクチン接種状況・意向別~接種完了や間近な層、積極層で国内旅行が高い
ワクチン接種状況・意向別に見ると、「絶対に接種したくない」を除く全てで「国内旅行」が圧倒的に多い(図表5)。特に、接種完了および完了間近な層、接種に積極的な層では約6割を占めて高い。また、これらの層では多くの項目で全体を少しずつ上回る。ただし、世帯年収別やライフステージ別に見た結果ほど顕著ではないため、ワクチン接種後の消費行動は、経済的な余裕や子どもがいるなど家庭の環境による影響が大きいと見られる。なお、二回目接種完了では「遊園地などの屋外レジャー施設の利用」が低いが、60歳以上が多くを占めるためと考えられる(63.8%)。
一方、接種に消極的な層では全体を下回る項目が多い。
ワクチン接種状況・意向別に見ると、「絶対に接種したくない」を除く全てで「国内旅行」が圧倒的に多い(図表5)。特に、接種完了および完了間近な層、接種に積極的な層では約6割を占めて高い。また、これらの層では多くの項目で全体を少しずつ上回る。ただし、世帯年収別やライフステージ別に見た結果ほど顕著ではないため、ワクチン接種後の消費行動は、経済的な余裕や子どもがいるなど家庭の環境による影響が大きいと見られる。なお、二回目接種完了では「遊園地などの屋外レジャー施設の利用」が低いが、60歳以上が多くを占めるためと考えられる(63.8%)。
一方、接種に消極的な層では全体を下回る項目が多い。
4――おわりに~自粛している外出行動再開の一方、変異種の懸念で様子見も。引き続き調査で注目。
調査では「その他」の選択肢にて自由記述の回答も得ている。その中には「カラオケ」や「ボランティア」、「自由に行動する」など、コロナ禍で自粛している選択肢以外の外出行動の再開のほか、「変異株の懸念があるために様子見」との慎重な見方もあった。現在のワクチン接種が進むことで、感染不安が緩和され、消費行動は活発化していくと見られるが、それはどの程度の水準で、いつまで続くものなのか。また、消費者層によって、意識や行動においてどのような違いが生じるのか。ニッセイ基礎研究所では3ヶ月置きに調査を実施しており、引き続き注目していく予定だ。
(2021年07月26日「基礎研レター」)
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03-3512-1878
経歴
- プロフィール
【職歴】
2001年 株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ入社
2007年 独立行政法人日本学術振興会特別研究員(統計科学)採用
2010年 ニッセイ基礎研究所 生活研究部門
2021年7月より現職
・神奈川県「神奈川なでしこブランドアドバイザリー委員会」委員(2013年~2019年)
・内閣府「統計委員会」専門委員(2013年~2015年)
・総務省「速報性のある包括的な消費関連指標の在り方に関する研究会」委員(2016~2017年)
・東京都「東京都監理団体経営目標評価制度に係る評価委員会」委員(2017年~2021年)
・東京都「東京都立図書館協議会」委員(2019年~2023年)
・総務省「統計委員会」臨時委員(2019年~2023年)
・経済産業省「産業構造審議会」臨時委員(2022年~)
・総務省「統計委員会」委員(2023年~)
【加入団体等】
日本マーケティング・サイエンス学会、日本消費者行動研究学会、
生命保険経営学会、日本行動計量学会、Psychometric Society
久我 尚子のレポート
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