コラム
2021年07月16日

ワクチン普及で行動制限の撤廃なるか

経済研究部 准主任研究員   高山 武士

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(図表1)主要国のワクチン接種状況 コロナ禍2年目となる2021年もすでに半年以上が経過した。

昨年末に複数の有望なワクチンが開発・承認されてから、各国で接種を進め、経済活動の再開が模索されてきた。そこで本稿ではワクチン普及が早かったイスラエルおよびイングランド(英国)の経済正常化に向けた今年の動きを振り返っておきたい(図表1)。

 

イスラエルの正常化

(図表2)イスラエルのワクチン接種とコロナ禍の状況 主要国で最もワクチン接種ペースが速かったイスラエルでは、冬の感染拡大を受けて年末以降3回目のロックダウンをしていた。外出制限の一部緩和を実施したのは2月7日からで(第一フェーズ)、2月21日にはイベント会場など人との接触が多い場所ででもワクチン接種証明書(グリーンパス)の提示をすることで活動ができるようになった(第二フェーズ)。つまり、感染対策と経済活動を両立させるための政策として、政府はワクチン接種者を優先的に制限緩和させるという方針を打ち出した。その後、3月7日の更なる緩和(第三フェーズ)や4月18日の屋外マスク着用義務の解除を経て、6月1日からはほとんどの規制が解除され、一方でワクチン接種者への優先的な取扱いもなくなった。必要な感染予防策は屋内のマスク着用程度となり、コロナ禍前と同様の活動ができるようになった。屋内でのマスク着用義務も6月15日に解除されている(図表2)。

イングランドの正常化

(図表3)英国のワクチン接種とコロナ禍の状況 イングランド(英国)でも冬場からロックダウンを実施していたが、イスラエルと同様に年明け以降はワクチン接種を加速させ、活動制限の緩和を進めてきた。3月8日に学校の対面授業、3月29日に屋外スポーツ、4月12日に飲食店の屋外営業、5月17日に飲食店の屋内営業が再開された(なお、イングランドでは経済再開にあたってワクチン接種者から優先的に緩和する政策は講じていないため、この点はイスラエルとは異なる)。

イングランドの全面的な制限解除は当初は6月21日に実施する予定であったが、デルタ株の流行を受けて完全緩和を7月19日まで延期していた。ワクチン接種のための時間を稼ぎ、7月19日以降は規制がほぼ全面解除され、イングランドでもマスク着用義務制限はなくなる(人混みでの着用「推奨」となる、図表3)。
 
このようにイスラエルもイングランドも、ワクチンの恩恵を受けてこの半年でほぼ全面的な制限解除までたどり着いている(なお、現時点では英国でもイングランド以外の地域は全面解除に慎重姿勢である)。しかし、まだ経済再開のスタート地点である。今後の課題は、経済への活動制限を講じず、発生しうる入院者や重症者に医療を提供し続け、医療崩壊を避けられるかという点になる。

イスラエルでは足もとでは感染者数には再び増加の兆しが見られる。重症者や死亡者が低水準にあるため、行動制限の強化などは講じられていないが、6月25日からは再び屋内のマスク着用が義務化された。イスラエル保健省は同国で接種されているファイザー製の感染予防効果が94%から64%に低下したと公表しており、ワクチンが普及しても、感染力が高いとされるデルタ株の流行や感染予防策を講じないままの接触増加は、感染者を大きく増やしてしまう恐れがあると言えそうだ。イングランドでは入院者にも増加の兆しが見られる。

オランダではイスラエルや英国よりワクチン接種は遅かったものの(前掲図表1参照)、6月26日からソーシャルディスタンスの確保を除く行動制限のほぼ全面解除に踏み切り、その後に感染急拡大を受けて7月10日から飲食店の営業時間制限が再導入されることになった。

ワクチン接種が進む国ではコロナ禍克服への大きな前進が見られるが、今後医療崩壊リスクを高めずに、経済活動が続けられるかにはまだ不透明な部分も残る。道のりはまだ半ばと言える。
 
 

(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
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経済研究部   准主任研究員

高山 武士 (たかやま たけし)

研究・専門分野
欧州経済、世界経済

(2021年07月16日「研究員の眼」)

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