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2020年のマンション市場と今後の動向-今マンションは買うべきなのか
金融研究部 准主任研究員 渡邊 布味子
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5――マンションの面積・単価の動向と、住宅ローン減税制度の変更
長谷工総合研究所の調査によると、改正前の2020年までの首都圏の平均総額と平均単価を見てみると、どちらも年々高くなっている(図表9、10)。一方で1戸当たりの平均面積は小さくなっている(図表11)。つまり、今のマンションの購入価格は、単価の上昇がプラスに、面積の縮小がマイナスに作用しているが、単価上昇がより大きいため総額も上昇している。
マンションの価格は、「面積」だけではなく、「立地」、「設備」、「間取り」など、様々な条件に応じて価格が決まる。例えば、多少面積が狭くても、より良い設備が付属していれば、その物件を選択する人も多いのではないだろうか。つまり、「縮小した面積」というマイナス条件を、他のプラス条件で拡充して競争力を保ったことで、「平均総額」と「平均単価」が高まっていると見ることができる。
6――マンション市場にマイナスの影響を与える要素は
まず、供給者は資金調達が容易にできる状況であり、投げ売りが生じるような事態は想像できない。また、コロナ禍によっても住宅ローンの審査は厳格化しない2と見られ、購入希望者の資金調達が困難となり、需要全体が大幅に減少して、価格が崩れるということも想定しづらい。
しかし、コロナ禍により実体経済が痛んでいるのは確かであり、一部企業の業績悪化や働く人々の所得にまで影響が及んできている。なかでもボーナスや時間外手当は企業業績悪化の影響を受けやすい。リーマン・ショック前後とコロナ禍前後の賃金の推移を比べてみると、コロナ前後の方が時間外手当がより急速に減少している(図表13,14)。ボーナスカットや時間外勤務が減少すれば、所得減少の割合とほぼ同じ割合で住宅ローンの借入可能額が減少し、需要者の予算も減少する。このため、マンション市場の一部では需要が減退する可能性がある。
ただし、マンション供給量が少ない現在の市場では、ある需要者が購入できないとしても、別の需要者が購入する可能性が高い。潜在的なマンションの購入者層には今回のコロナ禍でも収入にあまり影響のない人も数多く存在すると考えられるため、現在のマンション市場においては、一部の需要者の年収低下が全体のマンション価格の下落に及ぼす影響はあまり大きくないのではないだろうか。
7――数年以内にマンションが欲しいのであれば買ってもよい
今マンションを買うとしたら、人気のある物件は早い者勝ちとなり、価格も下がりにくい可能性が高い。数年のうちにマンションを買いたい、と考えているのであれば、気に入った物件があれば買ってしまうのも一つの考えであろう。
なお、中古マンションの価格には、建物価格に設備更新による工事費が加算されている場合がある。相対的に価格の高いマンションほど、築年とのバランスを考える必要があるように思う。
8――終わりに
住宅の需要者は、ライフステージの変化や、生活環境の向上を動機に住宅を購入することが多く、需要者数は市況や制度の変化の影響を受けにくい。これに加えてコロナ禍により今の住宅へ不満が増し、住宅の購入を検討する人も増加するとみられる。
住宅は高額の買い物であるため、一時の勢いで決めずに、何度か見に行くなどの慎重さは当然に求められる。しかし、現在新築マンションの供給は限られ、中古マンションの供給が弾力的に増加する可能性も低い。気に入った物件があれば、購入を検討してもよいのではないかと思う。
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03-3512-1853
(2021年07月12日「ニッセイ基礎研所報」)
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