2021年07月07日

人口動態データ解説-東京一極集中の「本当の姿」

生活研究部 人口動態シニアリサーチャー   天野 馨南子

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4―― 「転出・転入の差」は何歳で起こっているのか

「東京で地方移住フェアを見てきたら、小さなお子さんを連れた家族が多く見に来ていた。だからやっぱり移住は子育て世帯向けに考えるべき」
 
地方創生に関して地方の方から出てきた意見である。

しかし、統計的な実態をふまえて一極集中を解消したいと考えるならば、この意見は不正解である。その理由のデータ説明は後述するが、こういった統計的に見た誤解がなぜ生じるのか、少し触れてみたい。
 
このケースでは、「東京のフェアにきたときに実際に見た光景」という意見形成の前提(根拠)はある。
 
しかし、この「前提」の確からしさ(妥当性)を考えると、
 
「そもそも子育て世帯が関心をもつ話題しかその移住フェアで取り扱っていなかった(子育て世帯誘致色の強いイベントだった)可能性」
 
が指摘できなくもない。
 
つまり、「移住フェアに来てくれる人々には子育て世帯が多い」というよりも、「あえて子育て世帯しかアクセスしないようなフェアの設計である」という前提条件(根拠)をもとにした意見かもしれないともいえるのである。
 
このように東京一極集中問題に関しては、よく聞いてみると「本当にそうだろうか」「根拠の妥当性はあるのだろうか」と思わざるをえない意見を耳にすることが少なくない。
 
前述のとおり、本レポートは国の統計データをもとに解説を行い、東京一極集中問題を読者が考える際の「正確な前提条件」を提示することを目的としている。
 
コロナ禍1年目となる2020年においても東京への人口集中(転入超過)が止まらなかった中で、人口誘致において正確な前提条件を上流思考とし、中流思考である「誰を集めるのか」、そして下流思考である「どうやって集めるのか」を見直す重要性がより一層明確化したともいえる。
 
正確なエビデンスに基づく人口誘致がそれぞれのエリアで議論されることを願い、2019年の人口動態結果を年齢層別に示してみたい(図表4)。
【図表4】2019年 東京都における転入超過人口の年齢ゾーン分布(男女別)
2019年に東京都に転入超過した人口は8万2982人であるが、そのうち57.4%が女性である。男性の転入超過人口の1.35倍の女性が1年間で東京都に増えたことになる。
 
これを年齢ゾーン別の内訳でみると、男女とも20代前半が圧倒的な割合を占めていることが見てとれる。男性では転入超過人口の72%、女性では67%と、双方ともに約7割が20代前半となっている。2番目に多いのは20代後半で、男性の31%、女性の22%を占める。

つまり20代だけで、実に男性転入超過人口の103%(他の年齢ゾーンでマイナスとなる分があるので100%超過となる)、女性転入増加人口の89%を占めている。
 

POINT4 東京一極集中の原因は、その7割が20代前半人口の転入超過に起因する
 
POINT5 東京一極集中の原因は、20代人口移動のアンバランスの結果であるといえる

ここで注意したいのは「でも、実際は大学入学で東京へ出ていく子が多いから、10代後半がもっと多く、大学の所在問題ではないか」という反論である。

確かに大学生の段階では親元に住民票を残したままで、住民基本台帳上は地元にいるかに見えつつも東京都に居住する大学生は存在する。しかし、だからこそ筆者は住民基本台帳上の移動結果に注目している。

「住民票を移動させるくらいの覚悟で移動したかどうか」が基本台帳で把握可能だからである。
 
地方の高校生が4年ないし6年くらいの期間、大学生として東京に出ていたとしても、卒業後に地元に戻る、または地元以外の地方に就職で移動するのであれば、それは「一極集中を解消する」という目的からすれば、問題はない。そればかりか、東京で得た知見を地方に活かす、という意味で歓迎される側面もある。
 
逆に言えば、ある地方エリアに大学在学中だけ学生がいたとしても、「一極集中の解消はできない」のである。

大学生が集まることによって、そのエリアの教育関連の一時的な産業発展にはつながるかもしれない。しかし、大学在学期間だけ人口を集める施策ならば、「短期かつ一過性の人口集め」に終わってしまう。むしろどこの大学をでても、その卒業後の就職地、そして家庭形成地に選ばれてこそ、そのエリアの長期的な発展が経済面、人口面でもたらされるのである。
 
この視点から見ると、東京都の人口集中の7割が20代前半、つまり大学や大学院修士新卒での就職または、高卒や大卒の若い時期の転職時期にあたる20代前半で起こっていることから、一極集中の解消は、「男女とも、若い人口の就職地として選ばれるエリアであるかどうか」にかかっていることが示唆されている。
 
集中人口の年齢ゾーン解説の終わりに、東京都からの転出超過が発生している年齢ゾーンもあわせてみておきたい。

まず、30代後半以降の男性(いわゆるアラフォー男性)が転出超過傾向にあり、女性の転入超過と真逆の特徴的な動きを示している。実数は多くないため、大企業の転勤族の単身赴任などによる住民票の移動が主たる原因ではないかとも考えられる。

また、50代から70代と男女とも東京都からの転出超過が大きく増加しているが、やはり男性の方が圧倒的に転出超過となる。50歳において婚歴のない独身割合(2015年全国 男性24% 女性14%)が、男性は女性を実数でも割合でも大きく上回っているため、老後を見据えた転職といった理由から、何かしらの地方移住が起こっている可能性もあるかもしれない。ただ、高齢者の地方への移住は、次世代人口形成の観点からは影響が小さいということに留意したい。
 
東京都からの転出超過数で最も多いのは0歳から4歳までの乳幼児人口である。地方への人口誘致において、このことから「まずは子育て世代誘致」の発想が出てくるのかもしれない。乳幼児の単独での移動はあり得ないため、保護者となるアラサー(30歳前後)人口(平均出産年齢は男女とも1子から3子まで35歳まで)の移動とあわせてみる必要があるが、アラサー人口は圧倒的に転入超過のため、幼い子どもをもつ男女の誘致がかき消されるほどに、子どもを持たない人口が東京都に増えていることに気が付きたい。
 

5―― 一極集中年齢ゾーン人口のもつ注目すべき特徴

5―― 一極集中年齢ゾーン人口のもつ注目すべき特徴

東京都への転入が超過している人口について、その7割が男女とも20代前半であること、また、20代後半も含めると東京一極集中はほぼ20代人口のみによって形成されていることを解説した。

地方で誤解されがちな「進学先問題」といった大学進学時期ではなく、その後の数年の就業行動によるとみられる移動は、東京と地方の就業先としての人口吸収力の格差が顕著であることを示している。
 
20代後半においては男女の転入超過数がバランシングしているものの、20代前半では女性が男性の1.24倍といった東京都への高い転入超過の性差を示している。新卒就職先、または高卒や大卒後数年での転職先として若い男女、とりわけ女性に選ばれることに対する地方の弱みが示唆される。
 
そして、このように東京都に圧倒的な割合で転入超過している20代前半人口は、将来的な人口動態問題を考えるうえで見逃してはならない、ある特徴を持っている(図表5)。
【図表5】年齢ゾーン別に見た配偶状況(2015年)
20代前半人口は都会、地方に関係なく、ほとんどが未婚者(統計上は婚歴のない独身を表す)である。

最新の国勢調査年である2015年の状況をみると、20代前半の男性の94.8%、女性の90.9%が未婚であることが示されている。東京の転入超過人口の7割を占める20代前半は、独身者がほとんどであることが示されており、さらに、2番目に定着数の多い20代後半においても、男性の7割、女性の6割が独身者である。
 
つまり、統計的に見れば、東京都に増え続ける人口は、そのほとんどが独身者である、ということができる。

もっというと、独身であるからこそ、ライフデザインの変更を伴うような大胆な越境が可能となっていることを示している結果ともみえる。
 

POINT6 東京へ移住によって増加し続けている人口はほぼ「独身者」である

6―― ターゲットの誤解がないか施策の見直しを

6―― ターゲットの誤解がないか施策の見直しを

これまでに述べてきた、東京への人口集中のPOINT1~6を考えれば、その裏返しとなる地方エリアの人口減少問題の解決の鍵は、「20代前半の独身男女、しかも男性より多くの独身女性を引き寄せる」ことにあることは明白であるだろう。
 
しかしながら、縁あって様々な地方へ出向き、人口問題に絡んでお話しをさせていただいてきたものの、地方創生関係の話において「20代前半の独身の男女、しかも男性より多くの女性を引き寄せる」といった基本戦略に立脚した人口誘致策をうかがうことは全くないのが現実である。
 
移住話題で必ずと言っていいほどでてくる「子育て世帯誘致」は、東京に一極集中し続ける20代の若い独身男女が東京都で就業し、カップリングして家族形成を行った後のライフデザインに働きかけるタイプの施策である。

子育て世帯誘致は最低限でも、以下の大きな移住に伴うライフデザインの変更を対象となるカップルに要請せざるを得ない。

1.夫の仕事、2.妻の仕事、3.子どもの育つ環境、の3つのライフデザインに関する大きな変更である。これは、まだ家庭形成していない独身男女へのアプローチよりも、はるかに複雑な意思決定を誘致対象者に対して迫ることになる。
 
第二次世界大戦後76年。

人口構造は大きく変わり、40代人口を100とすると、30代人口は85、20代人口は67となる(2015年 国勢調査)。
 
エリアの持続的未来を支えるのは、この少数派たる若い人口であることを今一度確認したい。

マジョリティ人口である中高年世代がマイノリティ人口となった若い世代の夢や希望に真摯に向き合い、若い世代の求めるライフデザインに寄り添い、若い世代に選ばれるエリアづくりができるかどうかが、そのエリアの持続可能性の未来を決めるであろう。

【参考文献一覧】
 
総務省. 「住民基本台帳移動報告」2019年
 
 天野 馨南子.“強まる東京一極集中(総数編)社会純減2019都道府県ランキング分析-最新純減ランキングにみる新たな動向-” ニッセイ基礎研究所「研究員の眼」2020年4月13日号
 
天野 馨南子.“令和元年2019人口動態データ分析-強まる東京「女性」一極集中(1)~追い上げをみせる大阪府、愛知県は社会減エリアへ” ニッセイ基礎研究所「研究員の眼」2020年2月25日号
 
 天野 馨南子. “強まる「女性」東京一極集中(2)~転出男女アンバランス 都道府県ランキング-高まる地方男性の未婚化環境-”ニッセイ基礎研究所「研究員の眼」2020年3月9日号
 
落合 陽一.「働き方5.0」(小学館新書)2020年
 
天野 馨南子.“データで見る「東京一極集中」東京と地方の人口の動きを探る(上・流入編)-地方の人口流出は阻止されるのか-” ニッセイ基礎研究所「基礎研レポート」2018年8月6日号
 
天野 馨南子.“データで見る「東京一極集中」東京と地方の人口の動きを探る(下・流出編)-人口デッドエンド化する東京の姿-” ニッセイ基礎研究所「基礎研レポート」2018年8月13日号
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生活研究部   人口動態シニアリサーチャー

天野 馨南子 (あまの かなこ)

研究・専門分野
人口動態に関する諸問題-(特に)少子化対策・東京一極集中・女性活躍推進

(2021年07月07日「ニッセイ基礎研所報」)

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